【失敗しない!中国ものづくり|第20回】現地調達部品の正しい理解
これまでの連載記事
- 第1回:『中国での不良品やトラブルの原因は60%日本人にあり』
- 第2回:『中国人の「問題ない」に潜む3つの意味』
- 第3回:『勝手に変更される金型』
- 第4回:『「機能するから問題ない」の品質感覚』
- 第5回:『「専門学校を出ています」「検査するから問題ない」と言い切る中国人』
- 第6回:『市場で突然割れ始めた液晶モニターのリアカバー』
- 第7回:『市場で突然発生したスポット溶接剥離』
- 第8回:『20%は通じていない!?日本語通訳との会話』
- 第9回:『中国メーカーに確実に伝える情報の出し方』
- 第10回:『春節だけで15%の作業者の入れ替わる製造ライン』
- 第11回:『製造ラインで確認を忘れがちな2つのコト』
- 第12回:『QC工程表に無いところで発見される不良原因』
- 第13回:『中国に出回る模倣部品とその対策』
- 第14回:『「どこで」「どのように」作られているかを知る重要性』
- 第15回:『日本人の作成する曖昧な表記の図面』
- 第16回:『中国メーカーの訪問の仕方』
- 第17回:『日本語通訳に分かり易く会話をする方法』
- 第18回:『確実な回答をもらう見積依頼の方法』
- 第19回:『不良の発生源とその原因』
- 第20回:『現地調達部品の正しい理解』
中国で製品を製造している企業は、その製品に使われている部品の中国での現地調達率を上げることを1つの目標としていると思います。現地調達は日本からの輸送費や関税がかからないので、コストダウンを目的とした中国への進出では当たり前のことです。しかし汎用品については、現地調達率にこだわり過ぎるために、気が付いたら逆にコストアップになったりトラブルになったりすることもあるので注意が必要です。これに関して3つの話をお伝えします。
★日本製でも現地法人から購入すれば中国製
基板や線材のホルダー、埋め込みナットなどの汎用品(カタログ品)をコスト削減のために中国で調達する場合には、もちろん中国のローカルメーカーで製造している中国製の部品を、中国の製品の組立工場が購入することが、最も正しい現地調達といえます。しかし日本製の汎用品を購入したい場合、現地調達率を上げるために、その日本のオリジナルメーカーの中国法人や中国にある代理店になっている日系商社から購入する場合があります。購買システムの登録上は中国製となるからです。このような場合は気を付けてほしいことがあります。それは中国法人や日系商社から購入して、本当にコスト削減になっているかということです。自社で独自の貿易ルートを持っている場合は、日本のオリジナルメーカーから直接購入して、他の部品とともに自社の貿易ルートに乗せて輸入した方が安い場合もあります。もちろんこれは中国法人や日系商社がどのくらいの在庫を持っているか、また自社の貿易ルートでどのくらい他の部品(混載部品)があるかなどで部品コストは変わってくるので、コストの比較はとても難しいです。(図1)
図1 日本製の汎用品の購入方法
ここでお伝えしたいことは、現地調達の正しい理解は、中国のローカルメーカー製(中国製)の汎用品を購入することであり、中国にある(日系)企業から日本製を購入することではないということです。さらに日本製の購入の場合、現地調達率にこだわり中国法人や日系商社から購入すると、自社での独自の輸入よりもコスト高になる場合もあるということです。
★最後のカットだけすれば中国製
クッション材は原反(かたまり)を薄くスライスして、最後に必要な長さと幅にカットします。私たちが購入するクッションとはこのカット品になります。
1)原反の製造
2)スライス加工
3)カット加工
図2 クッションの製造工程、どれでも中国製となる
上記の1)~3)が中国で行われれば、もちろんそれは中国製です。しかし日本製の原反を使用しても、2)と3)、もしくは3)だけが中国で行なわれ、それを中国にある企業から購入すれば、中国製になります。コストに関しては、3)だけ中国で行って中国製にするよりも、1)~3)全てを日本で行って輸入した方が安い場合もあります。これに関しては、原反の製造メーカーが2)と3)も自社で行うことができるかという業種の問題や、3)のカット加工するメーカーがどのくらいの量のスライス材を日本から輸入して在庫しているかによって、コストは異なってきます。
よって、ここでも現地調達率を上げることにこだわり過ぎると、返ってコスト高になる場合がありす。
★中国製の汎用品を使用する危険性
前述したとおり、完全に中国のローカルメーカー製(中国製)を使用することが、正しい現地調達といえます。しかし部品購入先を試作と量産で確認しないと、トラブルが発生する場合があるので注意が必要です。その原因は下記の3つです。
1)汎用品には模倣品が多い
2)試作を日本、量産を中国で行うと、違う汎用品が購入される場合がある
3)図面、仕様書の「○○相当品」の表記が1)2)を許容してしまっている
製品の設計は日本で行われる場合が多く、試作の段階は日本にいる設計者が日本製の汎用品を日本で購入して設計・検証を進めています。ところが量産の段階になると、その汎用品は中国の製品の組立工場が購入することになります。中国には汎用品の模倣品がたくさんあり、形状だけを模倣しているならまだしも、メーカー名や型番まで日本のオリジナルメーカーをそのまま使用している場合もあります。中国の購買部は自部門のアロケーションに合わせて購入するため、日本のオリジナルメーカーからは購入せず、模倣品を購入してしまう場合があります。そしてさらにそれを、設計者の描いた図面や仕様書の「○○相当品」の表記が許容している現状もあるのです。(図3)
図3 日本と中国で購入した汎用品は違う部品になる
つまり試作品と量産品で、形状や材質が微妙に違う汎用品が使用されることになってしまいます。これが製品の品質に悪い方向に影響を及ぼすと、それは不良品となってしまいます。量産品の購入先に関しては、設計者は事前に確認しておくことが必要となります。
試作の段階から、中国製を使用する方法もあります。しかし、中国製を入手することはとても困難です。日本のように設計部門にサンプルが常備してあったり、電話をすればメーカーが送ってくれたりするわけではありません。
★汎用品は現地調達にはこだわらない
以上のことから、私は汎用品の現地調達にはこだわってきませんでした。それは中国製を使用する場合には、試作と量産で違う部品になってしまう心配と、試作の段階で中国製を使用することが難しいことがあります。また日本製を使用する場合には、どのような入手方法が最もコストが安いかのコスト計算が難しいからです。
よって汎用品に関しては、私は日本製を買いやすい方法で買うということにして、現地調達には全くこだわってはいませんでした。
──────────────────────────────────────────────
~リモート会議だけで中国企業とスマートに仕事を進めるテクニック~
研修の開催ご案内
ローカル部品メーカーの日本語通訳が日々行っている
日本人ではなかなか知り得ないテクニックをお伝えします。
日程と時間:ご希望の日程と時間をご連絡ください。
詳細情報URL:https://roji.global/korona-kennshu2/
──────────────────────────────────────────────