【失敗しない!中国ものづくり|第16回】中国メーカーの訪問の仕方
これまでの連載記事
- 第1回:『中国での不良品やトラブルの原因は60%日本人にあり』
- 第2回:『中国人の「問題ない」に潜む3つの意味』
- 第3回:『勝手に変更される金型』
- 第4回:『「機能するから問題ない」の品質感覚』
- 第5回:『「専門学校を出ています」「検査するから問題ない」と言い切る中国人』
- 第6回:『市場で突然割れ始めた液晶モニターのリアカバー』
- 第7回:『市場で突然発生したスポット溶接剥離』
- 第8回:『20%は通じていない!?日本語通訳との会話』
- 第9回:『中国メーカーに確実に伝える情報の出し方』
- 第10回:『春節だけで15%の作業者の入れ替わる製造ライン』
- 第11回:『製造ラインで確認を忘れがちな2つのコト』
- 第12回:『QC工程表に無いところで発見される不良原因』
- 第13回:『中国に出回る模倣部品とその対策』
- 第14回:『「どこで」「どのように」作られているかを知る重要性』
- 第15回:『日本人の作成する曖昧な表記の図面』
- 第16回:『中国メーカーの訪問の仕方』
中国でモノづくりをすると、中国の部品メーカーを訪問する機会が多いと思います。初めての部品メーカーを訪問し会議が始まると、最初に名刺交換をします。そしてお互いの簡単な挨拶の後に、部品メーカー紹介のパワーポイントの資料を日本語に通訳をしてもらいながら見ることになるでしょう。それが終わると「では、工場を見て回りましょうか」と促されて、皆で工場内を見て回ることになると思います。1時間程見て周り、その後の元の会議室に戻り、「何か質問はありませんか」という感じで質疑応答があり、今後の日程などを話し合って終わりになると思います。
しかしこのような初めての部品メーカーの訪問では、なんとなく部品メーカーの人を知って工場を見た程度で終わってしまった経験はないでしょうか。それではせっかく日本から高い費用を使って中国の部品メーカーの訪問した意味がありません。今回は、初めての部品メーカー訪問で注意すべきことの中でも基本的なものを6つお伝えします。そして次回以降に部品メーカーを選定するときの詳細な確認ポイントをお伝えしたく思います。
1) 情報ルートの確認
2) 社長が参加するかの確認
3) 日本語通訳が社員であるかの確認
4) 部品メーカーが納品先に近いかの確認
5) 取引メーカーが1~2社でないかの確認
6) 中国以外のメーカーと取引があるかの確認
情報ルートの確認
会議が始まるとまず名刺交換が始まります。日本語通訳をはじめとして、董事長(社長)、品質担当の人、金型担当の人、成形やプレス担当の人など、とにかくたくさんの人が参加して来ます。名刺の肩書を見て何の担当者かを確認しましょう。たまに金型作製が外注の場合は社外の人であったりするので、それも確認しておきましょう。その後、各担当のリーダーを確認します。部長や課長であったり、技術リーダーであったりします。これは仕事が始まったときの打ち合わせで招集する人や、メールでのCCに入れる人を確認しておくためです。部品作製が始まると部品メーカーとは小まめに打ち合わせが行われます。そのときに日本語通訳だけと話すのでは、情報は確実に伝わって行かない場合が多いです。打ち合わせでは必ずその分野のリーダーや担当も呼ぶ必要があります。品質関係の打ち合わせであれば、品質リーダーと担当者を交えて打ち合わせをする必要があるのです。(図1)そのために各分野のリーダーは確実に把握しておきます。メールを送るときも同じです。CCに各リーダーを入れておきます。中国では情報の伝達が苦手な人が多いので、このような計らいが必要です。
図1 打ち合わせでは日本語通訳だけでなく、リーダーと担当者も参加
社長が参加するかの確認
初めて訪問したときの打ち合わせでは董事長が参加していることが大切です。訪問した部品メーカーのやる気を伺い知ることができます。もしいなかったら、何故いないかを聞いてみるのも良いかもしれません。董事長のいる前での約束は、その部下にとってはやはり重要なものとなります。なるべく出席してもらいましょう。
日本語通訳が社員であるかの確認
会議が行われるときには、既に分かっていることとも思いますが、日本語通訳は社員である必要があります。ごく稀にですが、臨時の通訳を雇っている場合があります。金型作製を伴う部品作製は、一般的に3ヶ月以上にわたって一緒に仕事をすることになります。量産までは金型完成からさらに1~2ヶ月はかかります。その長期間において日本語通訳が臨時採用であったら、ある事例に対して毎回最初からの説明が必要になり、やりとりにとても多くの時間と手間がかかってしまいます。よって日本語通訳は社員であり、一つの部品作製期間においてずっと同じ日本語通訳であることが大切です。実際は営業兼通訳の場合が多いのであまり問題になることはないと思いますが、気にしてはおきましょう。
部品メーカーが納品先に近いかの確認
部品メーカーの納品先は、ほとんどの場合は製品の組立工場になると思います。部品メーカーが納品先に近いと部品の輸送コストが安くなります。しかしそれ以外に大きなメリットがあります。その組立工場が中国にある場合は、その部品の設計者はその組立工場を拠点にして活動をする場合が多いと考えます。その拠点に近い部品メーカーであれば、訪問がし易いということです。その拠点から飛行機を使わないと行けないとか、車で4~5時間かかるとなってしまうと、部品メーカーへの訪問が疎かになりがちになり、それが品質に影響を及ぼすことになるかもしれません。また、量産でトラブルがあったときの対応に多くの時間を費やすこととなります。出張期間が長くなり費用がかさんでしまいます。(図2)
取引メーカーが1~2社でないかの確認
その部品メーカーの取引先が1~2社に限定されていると、新規の顧客の依頼が疎かになりがちです。なかなかお願いしたことを聞いてくれなく、なんでも後回しにされてしまうということです。そうなってしまうと、場所的にも遠く離れていてあまり思ったことをきつく言うことのできない日本人には、ましてや日本語通訳を介していることもあり強くクレームを言うことができません。よってそれは事前に避けたいと思います。
中国以外のメーカーと取引があるかの確認
ローカルの部品メーカーであっても、欧米などのメーカーと取引のある部品メーカーは品質や仕事の対応がしっかりしている場合が多いです。中国メーカーしか取引先の無い部品メーカーは部品コストは最安と思いますが、やはり日本人にはハードルが高いと思います。また仕事の仕方に関しても中国人としか対応したことのないローカルの部品メーカーはなかなか思うようには行かないところが多いと思います。これもなるべく避けた方が良いと考えます。
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