【失敗しない!中国ものづくり|第21回】言われたこと以上をするのが日本...

2020/9/11 ロジ

【失敗しない!中国ものづくり|第21回】言われたこと以上をするのが日本人、言われたことだけをするのが中国人

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これまでの連載記事

 
以前にテレビで、次のような場面を見たことがあります。2つともほぼ同じ時期に放映されていました。大谷翔平がアメリカに渡りエンジェルスに入団し、球団からマンションを提供されたときの話でした。マンションの内装に関して特に何も特別なリクエストを出さずマンションに入居したところ、いざ部屋に入ってみるとそこには一切何もなく、とてもびっくりしたという内容でした。後から球団にその話をしたら、「何のブランドのどんな色のソファーを置いて欲しい、などのリクエストが無かったからね」と言われたとのことです。

もう1つは渡辺直美の話です。彼女がアメリカのテレビ番組に出るようになり、用意された自分の控室に入ったら、その部屋の中には何も無かったとのことでした。これも後から尋ねると、大谷翔平と同じく「何もリクエストがないから、何も無いですね」と言われたとのことです。

これらはアメリカの話ではありますが、リクエストがあれば言ってくれないと何もしないという、日本とアメリカの国民性の違いをよく表したものと思いました。逆に言えば、リクエストを出せばちゃんと対応してくれるということになります。ここからの話は中国での話ですが、アメリカと中国の両方で仕事のした経験のある人は、中国もアメリカと同じであると言います。私の経験ではヨーロッパや他のアジア圏の国々もだいたいは同じであって、日本が特殊な国だと思っています。

 

★「あうんの呼吸」で仕事をする日本人

日本人は「あうんの呼吸」で仕事をしています。「あうんの呼吸」以外にも、「以心伝心」や「一を聞いて十を知る」も同じ意味になると思います。新人の社員に対して上司が「言われたことだけやっているようじゃ、ダメなんだよ」と言うのはよくあることですが、日本の会社ではこの「あうんの呼吸」的な仕事の仕方は、美徳とされていると思います。

「その辺は、御社にお任せいたします」と他社との打ち合わせで言うのも、同じと思います。「その辺は、『あうんの呼吸』で理解してやってね」言っているのと同じです。私はこれが日本の典型的な仕事の仕方であって、またこれが最も海外の企業には通用しないところだと思っています。日本にきた外国人が、日本人との付き合いで最も難しいのが「空気を読む」ことと良く言われています。

図1
図1 「あうんの呼吸」で仕事を進める日本人

一方、中国では「あうんの呼吸」はもちろん全くありません。やって欲しいことがあれば口に出して要望する、これが当たり前です。「言われたこと以上をするのが日本人」なら「言われたことだけをするのが中国人」です。ここでこの「言われたことだけをするのが中国人」を、中国人の視点から明らかになったエピソードを紹介したいと思います。

 

★日本製品を中国に販売する仕事を手伝う

私はソニーを退職した当初は、日本の良い技術の製品を中国やその他の海外に販売する仕事をしようと考えていました。路地裏にあるような陽の当たらない製品、しかし素晴らしい技術の製品は日本にたくさんあります。それを発掘して輸出するのです。そこで私は貿易の知識に疎かったので、まずその勉強をしようと考えました。中国人の友人に日本在住の中国人で貿易をしている人を紹介してもらい、その人の手伝いをしながら貿易を勉強することにしました。紹介してもらった人は金さん(仮名)といい、30才代前半の人でした。彼は5年くらい前に日本に来て、今は中国人5人の社員を抱えて、雑貨を中国に販売する仕事をしていました。雑貨とは主にドラッグストアに売っているような、肌クリームや美容器具のようなものです。

金さんと仕事を始める前に3回一緒に飲みながらお食事をして、貿易の話はもちろんのこと、日本人と中国人のビジネスの仕方の違いなど、かなり多くのことを語り合いました。

 

★金さんの依頼内容

金さんが私に最初に依頼した仕事は次のようなものでした。仕入れの仕方などを勉強する手始めに、ドラッグストアに行って指定の商品の価格を調べて、その価格が金さんの持っているリストに記載されている価格より安かったら、それを金さん連絡するというものです。金さんのリストには、現在日本で購入し貿易している雑貨の商品名、メーカー名、型番、価格が記載されていました。そしてその価格は現在の調査においては最安値だということでした。しかしまれにドラッグストアでは、そのリストに記載されている価格より安い商品があるということなのです。もし安い商品が見つかったら、その店から大量に購入したいということなのでした。

 

★ドラッグストアで価格の調査を始める

私は早速リストを手にしてドラッグストアに出向き、価格を調べることにしました。しかしこれがとても大変な作業だったのです。肌クリームなどは、見た目の同じ商品がとてもたくさんあるのです。その中からメーカー名、型番を頼りにリスト内の商品と同じものを見つけ出すのは厄介な仕事です。またドライヤーなどは、ちょっとした機能違いや色違い、また新旧商品で型番の末尾だけ微妙に異なっているものもあります。そこからリスト内の商品と同じ型番の商品を見つけ出すのは、予想以上に大変なものでした。リストとペンを両手に持ち、型番を調べるため製品の裏を見たり、また価格を見るために棚に顔を近づけたりと、とても普通のお客とは違う行動をするので、お店側に変に思われるのも嫌でした。

 

★Webで価格を調べる

私はドラッグストアで価格を調べることをやめ、Webで価格調査をすることにしようと考えました。そしてその旨を金さんに伝えたところ、次のような返事がありました。「Webでは既に調べた。その結果が渡したリストです。だからWebでの調査はダメです」私は納得しつつも、何点かWebで調べてみることにしました。するとあっという間に5点、リスト内の価格より安い商品が見つかったのでした。それもリストでは2500円くらいの商品が、Webでは2000円くらいのものもありました。
 リストより価格が安いということは、その差額分がそのまま金さんの会社の利益になるのです。よって500円の差額はとっても大きいことになります。ちなみに私はその差額x販売個数の数%を報酬としてもらうことになっていました。

 

★金さんは突然音信不通

私は、ドラッグストアで調べるより簡単に早く安価の商品を見つけることができたこと、またその差額がけっこう高額であったことで金さんは喜んでくれるだろうと思い、すぐさまWeChat(中国版LINE)で金さんに連絡しました。Webでは商品の仕入れ先の店名と商品の価格が載っています。それをキャプチャーして送ったのでした。

ところがなんとそれを期にして、金さんとは全く連絡が取れなくなってしまったのです。これまで電話をすればすぐ出てくれて、WeChatの返事もすぐありました。それが電話をしても「今、忙しいから後で」と言われ、WeChatは返事もありません。結局、現在に至るまで全く連絡が無いのでした。

 

★音信不通の理由は何か

私はなぜ金さんが全く返事をくれなくなってしまったのか、いろいろと考えてみました。恐らくは、私を使っての仕事で金さんは十分な利益を得たので、報酬を支払う前に私との関係は終わりとしたのだろうと考えていました。この出来事を日本人の友人に話したところ、Webでリストより安い価格を見つけてしまったことが、金さんのプライドを傷つけたのでは、という人もいました。

 

★中国人の友人からの思いもよらぬ意見

音信不通の理由は、今をもっても不明のままです。あれから連絡は取れていないので、仕方ありません。しばらくした後、私は中国に出張に行き、信頼する中国人の友人にこの話をしてみました。中国人から見た意見を聞いてみようと思ったのです。この内容を詳細に説明したところ、すぐさま彼は当たり前でしょうと言わんばかりに意見を言いました。それは私のとても驚くものでした。そして同時にとても納得する意見でもありました。友人の意見は次のようなものです。「ドラッグストアで調べてと言われたのだから、ドラッグストアで調べなきゃダメでしょう」

私はこれまでのモヤモヤがスッと晴れました。金さんとは会っていないので、もちろん本当の理由は分かりません。しかし、友人にこの意見を言われて、すごく納得したのでした。

図2
図2 言われたとおりしないとダメ、と意見する友人

 

★言われたことだけをするのが中国人

ここで私が言いたいことは、金さんと音信不通になった理由、それも友人からの意見でもしかしたら判明したかもしれない理由ではありません。私の言いたいことは、中国人の友人がそのような意見を私に言ったということでした。つまり、中国人の基本的な考え方は、仕事は「言われたことだけをする」という考え方です。確かに冒頭でもお伝えしたとおり、これが日本人と中国人の仕事に対する考え方の最も大きな違いなのだと思ったのでした。

リストとより安い価格を見つけることが目的と理解して、それより良い結果を出すことができたと思っていた私。一方、あくまでこの仕事上の上司である金さんにとっては、自分の指示に従わない部下、ということになってしまったのだと思います。

 

★「あうんの呼吸」は通じない、要望は明確に出す

日本人の仕事の仕方は、関係性を重視するがあまり「そんな感じでお願いします」的な仕事の進め方がとてもたくさんあります。しかし中国人には、なかなかそれが通じないのです。もちろん、中国人でも起業して新しいことにチャレンジしている人は、自分で考え自分で行動を起こしています。しかし、会社という組織に入って、指示を出す上司、それを実行する部下の関係になれば、「やって欲しいことの指示を出す」上司と「指示とおりに仕事をする」部下の関係が当たり前なのだと思います。ここでは上司と部下と書きましたが、会社同士での依頼する側(主に日本人)と依頼される側(主に中国人)にも当てはまります。

私たち日本人は「そんな感じでお願いします」的な指示で依頼をするのではなく、「○○と△△を6月20日までにメール送ってください」というように、明確な指示で依頼する必要があるのでした。また、言った内容を文字化してメールなどで送ることも忘れてはなりません。

図3
図3 中国人には明確に依頼する必要がある。また同時にメールなどで文字化して依頼することも忘れない

 

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ソニー(株)に29年間在籍し、メカ設計者としてモニターやプロジェクター、プリンターの合計15モデルの商品化を行う。ソニー退職直前には駐在を含み7年間わたって中国でのモノづくりに携わり、約30社の中国メーカーで現地部品の立ち上げと、それに伴う製造現場の品質指導を行う。このときに、中国で発生する不良品やトラブルの60%は日本人の設計者に原因があることが分かり、その対応方法を広く伝えるべくソニーを退社し、2017年に「中国不良ゼロ設計相談所」ロジを設立する。 専門領域:CAD設計、商品化技術ノウハウ、冷却技術、防塵技術、部品メーカー品質指導ノウハウ、中国メーカーとのコミュニケーションノウハウ