三菱電機から学ぶ絞り込みによる目的の明確化
絞り込むことで目的が明確になる。現場の主役はこれからも人であるとの明確なコンセプトを持てばICTを導入する目的もはっきりする、という話です。
1.道具を使いこなすには目的が必要
モノづくりに知恵が求められるている昨今、現場が作業だけに汗をかいているようでは先々が危ないです。
決して現場作業を疎かにしてもイイと言っているわけでなく、主体性の無い作業を無くしたいのです。
ですから、現場の創造性が発揮される機会を与えること、さらに創造性を発揮したくなるような環境を整備することが重要であると考えています。
したがって、情報通信技術(ICT)を活用して創造性を発揮できる環境づくりをすることが、国内製造現場でIoTを導入する目的となります。
「IoTによりAIに負けない現場を作る。」
デンソーの有馬社長のこのコメントは、そのことをズバリ表現しています。
情報通信技術(ICT)によって、今後10年でモノづくりの現場は大きく変わると予想しています。
ただし、現時点で、何が、どうなるとは誰も断言できません。
なぜならば、ICTはあくまで道具だからです。
明確な目的も持たずに道具を導入しても、無用の長物になってしまうのがオチです。
現場をこうしたいのでICTを導入する、というコンセプトが明確になっていることがICTを活用したIoT(もののインターネット)等で成功するためのカギであることを忘れてはなりません。
そして、時間で評価されるような作業から現場を解放し、創造性を発揮する機会を増やすことを目的に掲げるべきです。
国内モノづくり現場では、付加価値の拡大が欠かせません。
そのための技術イノベーションには現場で大いに頭に汗をかく必要があり、作業に相当する業務は極力、人間の手から離れるように仕向けます。
そして、現場では創造性を発揮する業務の割合をふやしていく。
ICTは現場の仕事を奪うわけではなく、作業から解放するための手段と考えます。
今後、10年で製造現場がどれほどに変わろうと技術イノベーションを生み出すのは人であり、現場の主役も人であることは不変です。
2.「隠れた優等生」三菱電機のAI戦略
三菱電機は企業向け製品が多いこともあり、電機大手の中では地味な存在ながら、堅実に稼ぐ「隠れた優等生」と紹介されています。
(出典:日本経済新聞2016年7月23日)
どれほどの隠れた優等生かというと……、
2016年3月期の自己資本利益率(ROE)は12.4%と高く、時価総額は重電最大手の日立製作所を抜いて業界トップ。
報酬1億円以上の役員23人で日本企業最多だ。
強さの秘密はFA機器や空調、エレベーターと言った新規参入が少なく収益が安定した事業を数多く抱える点にある。
(出典:日本経済新聞2016年7月23日)
その三菱電機のAI戦略を日本経済新聞では下記のように説明しています。
さらに三菱電機の人工知能(AI)を実用化するにあたってのAI戦略からにじむのは「AIバブル」ともいえるような最近の過熱ぶりとは一線を画す堅実さ。
着実に収益につなげるのが三菱電機流だ。
(中略)
同社情報技術総合研究所の三嶋英俊部長は「AIはあくまで機器の価値を高めるソフトだ。」と言う。
AIの採用を前面に打ち出す他の電機、通信大手などとは違い、機器の「脇役」と割り切る。
最近は会話機能を売り物にするといった動きも目立つが、十分な水準に達しているとは言い切れない。
実用的な機能に絞って競争力を高める。
(出典:日本経済新聞2016年7月23日)
「AIバブル」に踊らされることなく、AI活用の目的を明確にしています。
AI自体の開発を主業としていれば、当然のようにAIを前面に押し出した事業展開を進めるわけですが、モノづくり現場の多くは、あくまでそれらを活用する立場。
活用する立場である以上、目的がなければ導入してもしょうがない。
三菱電機のようにAIはあくまで脇役と言い切るほどの明確な目的意識を持つことが技術開発を進める上で欠かせません。
技術のトレンドなのでまずは○○を導入してみようという対応では、まず、間違いなくその○○は埃をかぶります。
埃をかぶっている3Dプリンターなぞ現場にありませんか?
三菱電機は競合の少ない領域に「絞り」、収益性の高い事業展開をしています。
競合が多く価格競争に陥いる懸念のある事業、半導体メモリーDRAM、携帯電話端末からは、ITバブル崩壊(02年)以降で早々に撤退しました。
この「絞る」という考え方が、同社の技術開発での目的を明確にするキーワードになっており、その結果、トレンドに流されずに、技術動向を見極めて自社に必要な要素を抽出することができているように感じます。
網羅的ではなく「絞る」ことで、技術開発の目的が明確になることを三菱電機のAI戦略は教えてくれます。
3.「絞る」ことは目的を明確にすること
もともと、経営資源に制約がある中小モノづくり現場ですから、技術イノベーションの対象は絞り込みを図るべきです。
技術イノベーションの取り組み前半戦では、可能性を探る目的で網羅的であることは、必要ですが、最終的に、コア技術として仕上げるならば、焦点を絞ります。
例えば、ICTを活用する目的は人を生かすこと、作業から人を解放し創造性を発揮する機会を増やすことと考える。
目的を明確にしてICTを導入する。
モノづくり現場の主役は人であるとの明確なコンセプトを現場と共有すれば、あらゆる取り組みの目的がはっきりしてきます。
明確な目的を持つことでやるべきことも絞り込めます。
絞り込みにより、目的が明確になります。
絞り込みで、高い収益性を誇る事業を創出したいです。
まとめ。
絞り込むことで目的が明確になる。
現場の主役はこれからも人であるとの明確なコンセプトを持てばICTを導入する目的もはっきりする。
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