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生産プロセスにイノベーションを!最新テクノロジーの技術継承がもたらす日本の未来

現在、製造業が直面する問題として、少子高齢化による技術者不足と技術継承の問題があります。

印刷機も未だ発明されていなかった時代、職人はすべての知識や技を先人から学び、受け継ぐ必要がありました。そのため、師弟関係が尊重され、厳しい修行を通じて伝承されてきました。

しかし、現代ではどうでしょう。AI(人工知能)の研究が進み、これまで人間が担ってきたさまざまな仕事を、ロボットが取って代わろうとしています。

 

また、ビッグデータに代表される膨大な電子データがやりとりされ、高速のマシンでそれらデータを収集・分析することが可能になっています。

3Dプリンタの登場で、匠の技術がなくとも、簡単に製品をコピーし製造することが可能になるかもしれません。

テクノロジーが進歩していく上での、技術継承の問題について考えてみましょう。

職場の高年齢化や年齢層の二極化は日本企業の課題

少し前の調査になりますが、2012年にみずほ情報総研が企業の情報システム部門の技能継承に関する実態について387社を対象にアンケート調査をしたレポートがあります。

情報システム部門というと、企業の中でも最先端の技術や情報が集まってくる場所というイメージがありますが、その情報システム部門でさえ、熟練者(ベテラン)の持つ知識や技能の属人化がみられ、ベテランのみが特定のスキルや能力を保持していることが、今後様々な問題が増加する原因となる可能性が指摘されています。

「スキルや能力には年齢による偏りがあるか」という設問に対し、年齢による偏りはないとの回答が57.3%を占め、もっとも多いという結果でした。

 

一方、年齢が高い層に能力の高い人材が多いとする回答が30.6%、何らかの年齢による偏りがあるとの回答が11.9%と、約4割以上の回答者が業務上のスキルに年齢による偏りがあると感じていることがわかります。

「情報システム部門人材の年齢構成について、バランスが取れているか」との設問には、人員構成が年齢の高い層に偏っているとの回答が39.6%を占めました。

年齢が高い層と若い層に二極化しており、中間層がいないとの回答も21.2%に上っています。

 

もともと日本が、高年齢の人口が多く若年層が少ないという人口動態になっていること、また、バブル崩壊後に、本来であればコア層となって職場を率いるべき現在40代前後の採用を絞ったため、人員構成が年齢の高い層に偏ったり、年齢が高い層と若い層に二極化したりといった事態が発生していると考えられます。

これは、情報システム部門に限った話でなく、多くの日本企業で生じている問題といえます。

長年の蓄積が必要とされる分野でのベテランの存在感大きく

職場を構成するメンバーの年齢層が変わった場合、業務のクオリティーが下がるかという設問には、総じて、どの知識や経験についても、ベテランを除く人員のみでは充足度が下がるとの回答でした。

とくに、「個々の情報システムが、何故今のような形になったのかについての理解」「情報システムの新規導入や、要件定義から行う再構築において、中核メンバーとして参加した経験」といった、長年の蓄積が必要とされる分野での充足度が低い傾向にあります。

一方、「情報技術や情報システムの広範な領域に渡る基本的な知識・常識(広く浅い基礎知識)」「各人が担当している情報システム以外の社内システムを含めた、システム全体像(ネットワーク構成を含む)についての理解」という比較的学習しやすい知識や経験では、充足度の下がり方が小さいという結果でした。

同様の傾向は、製造業の現場でも当てはまるのではないでしょうか。

ものづくりを支えるドイツの教育制度

いくらベテランの知識や経験が技術継承に不可欠とはいえ、人材は一朝一夕で育成できるものではありません。そこで、今後の技術継承を考えていく上でのヒントが、ドイツにあります。

ドイツ政府が主導し、2011年から産官学共同で進めている国家プロジェクト「インダストリー4.0」構想は、世界の製造業に大きな波紋を広げています。

「スマート・ファクトリー」の実現を目指すための第4次産業革命ともいえる「インダストリー4.0」の達成でカギを握るのは、実は人材教育システムだともいわれています。

 

ドイツの教育制度の特徴は、学校教育に職業教育・訓練を組み込んでいる点です。

学校での授業と企業での職業訓練を並行して進める「デュアルシステム」というカリキュラムがあり、大学進学を考えていない生徒や全日制職業教育コースに進学しない生徒は、デュアルシステムに進むことが義務付けられています。

デュアルシステムでは、カリキュラムの多くを企業での職業訓練に費やします。

 

そうすることで、学生の中に職業に対する意識を育て、やりがいを感じられるようにします。

また、早期に自分のやりたいことを明確にする一方で、失敗した場合にやり直しがしやすいようにしています。

こうして、産業界とそのニーズに応えようとする教育界が協力することで、次世代の技術を支える若い世代の育成に取り組んでいるのです。

出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング


20年以上のサポート経験から培ったスキル・ノウハウを基に、富士通マーケティングの先進の製造業サポート推進チームが、日本の製造業の動向や現状の課題を紹介していきます。 基本のQCDや環境、安全など、毎週、旬なトピックスを展開します。