情報通信技術は現場を実績入力作業から解放する

情報通信技術は現場を実績入力作業から解放する

実績の入力作業に現場の手が回らず、見える化が進められないことがありますか?

1.IoTやICTの役割

情報通信技術(ICT)を使って生産現場の生産性を向上させる取り組みが、今後、加速されそうです。

少子化に起因する各種問題の解決は、中小現場の喫緊の課題です。

使える道具は使ってみる、まずはやってみるという姿勢も大切になります。

 

IoTやICTの役割は見える化です。

何を見えるようにするかは、人が選択しなければなりません。

経営課題を解決することにつながる項目を選びます。

 

生産管理の論点で考えるのが、ひとつのやり方です。

生産実施以降の進捗管理、現品管理、余力管理の精度を上げます。

 

IoTやICTを生かせば、ものの流れをリアルタイムに把握できます。

原材料や仕掛品、製品を単品毎、ロット毎、あるいはオーダー毎、場所と量を捉えられます。

位置情報による進捗管理です。特に個別生産では効果大です。

個別の位置情報がリアルタイムにわかれば、現品管理もやり易くなります。

対象品を現場で探すこともなくなります。

 

また、生産設備の稼働状況を複数工場間で共有できます。インターネットを利用するので安価です。

さらに、各種製品の品質状況を、それぞれ、リアルタイムに知ることも可能です。

分析を通じて、生産活動の中味が見えてきます。

設定された生産能力や生産性と現状を比べて、余力があるのか、目標を維持しているのか、わかります。

 

このように、IoTやICTを生かせば、経営者は意思決定に使える良質の情報を手にできるのです。

 

2.入力作業はムダ

生産現場をマネジメントするのに欠かせないのは見える化です。数値化、定量化とも言い換えられます。

マネジメントでは、判断基準が必要です。モノづくりの世界では、標準とも表現されます。

現状を標準と比べ、判断するのがマネジメントの本質です。

 

ですから、標準のないところ、つまり判断基準がないところに、マネジメントは存在しません。

現場にとっては、自主性を発揮しようのない状態です。勘と経験による、一方的な指示となっているからです。

判断基準は、蓄積された過去実績を分析して設定される数値です。

蓄積には、実績の入力作業が伴いますしたがって、マネジメントには、実績を入力する作業が必要なのです。

 

この作業抜きに、データが蓄積されることはありません。

ただし、管理者にとっては必要なデータ入力作業も、現場にとっては「ムダ」以外の何ものでもありません。

現場は、モノを生産してなんぼのものですから。

「実績入力作業なんか、忙しくて、やってられない!」

こうした声が現場から上がっていませんか?

データを蓄積して、「使える」データベースの構築を目指すものの、これでは、なかなか進みません。

 

3.IoTやICTは入力作業の負荷を減らしてくれる

自動車部品製造現場の管理者をやっていた頃、設備不稼働要因の見える化を進めたことがあります。

現場リーダーへ、実績入力の作業を強化するよう指示しました。

従来、停止有無のみの入力でした。新たに不稼働要因を選択、記入する形式に変更したのです。

データが増えるので設備の停止状況は把握しやすくなります。当然、現場リーダーが入力すべきデータ量は増えました。

 

ある時、本来、現場にいるはずの現場リーダーが、見当たりませんでした。

その時間帯、現場リーダーは、現場へ出て、やるべき作業あったのです。

見当たらないので、詰所へ足を運びました。現場リーダーは、PCに向かってデータを懸命に入力しているところでした。

 

現場リーダーが処理できる仕事量には、当然、限りがあります。

ですから、新たな仕事を指示したら、従来仕事のどれかを、除いてあげなければなりませんでした。

それを無視して、仕事を一方的に指示していると、現場はアップアップです。

その一方、見える化の精度を向上させるには、質の良い「豊富な」データが不可欠です。

誰が、その「豊富な」データを入力するのか?こうした問題が発生します。

だから、IoTやICTを使うのです。

 

IoTやICTは進化しています。技術動向を知れば、思い込みが間違っていることに気付くかもしれません。

手作業でしかできないと考えていたことが、実は、技術的に解決できたりします。

IoTやICTは、実績入力の作業から現場を開放してくれるのです。

 

過去の実績を蓄積し、ストック情報から有益な情報を引き出す。

こうしたことが、多くの中小現場では、やられていないと感じています。

戦いに勝つためには、振り返りをしっかりやります。中小現場も大手に負けず、ストック情報を生かしたいのです。

リアルタイムに生かすことができます。将来に向けて生かすことができます。生かし方のアイデアはいっぱいです。

 

ただ、従来は、データベースを構築するにも、実績入力の工数が足りませんでした。

しかし、これからは違います。進化したIoTやICTが代わりにやってくれるのです。

経営者と現場は、蓄積されたデータを活用することに、知恵を絞ります。

 

入力作業のことを一旦忘れて、精度を向上させたい見える化の項目を考えてみませんか?

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)