IoTは課題解決の道具でしかない。過剰な期待と評価は禁物だ

IoTは課題解決の道具でしかない。過剰な期待と評価は禁物だ

仕事柄、取材でIoTをテーマにした講演を聞く機会が多い。大企業のマネジメント層、スタートアップ企業の社長、大学の研究者など講演者は様々だ。内容で共通しているのは「IoTはあくまで課題解決の道具」「課題を明確にしないと取組む意味が無い」。よく新卒研修やビジネス本で言われる「目的意識」「問題意識」の事で、自分が行う行動は何のためで、結果どうなると良いのかを常に考えて、アウトプットを出しましょうということとだ。

生産現場のカイゼンは歩留まりを上げる、生産効率を上げるといった「課題」を元にカイゼン箇所を発見し、実行している。日本のエンジニアは「目的意識」「問題意識」の塊で、センサーやコントローラといったFA機器から時には自ら旋盤で加工した治具などあらゆるモノを課題解決の道具として活用するのが得意だ。ところが講演者のいうことが本当であれば「IoT」というモノに関してだけ、それがうまくできていないことになる。

「いいからうちもIoTを導入しろ」とトップが部下に指示を出すという笑い話がある。そして実際にエンジニアに聞いてもその様な話が本当にあるらしい。「おかしいと思わないのですか?」と聞くと、トップがいうことなので、一度そのまま話を聞くしかないという。この様なすれ違いが発生するのは。トップの目的意識、問題意識の欠如と、部下が上司に話を言いにくい雰囲気を作っているからではないかと推測している。

日本の設備エンジニアリング力、生産技術力は世界に誇る水準だ、エンジニアのレベルも極めて高い。IoT技術を活用することで、今までできなかったことができるようにもなってきている。トップはIoTという言葉に踊らされず、現場以上に「目的意識」「問題意識」を持ち、現場は課題を発見した時に「IoT」という道具で解決できないかと考えてみる。そこから初めてみるのはどうだろか。日本はIoTを使いこなす素地があるのだから。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。