5Gが広げる生産ラインの未来、デジタルジョブショップへ「柔軟な方式」

5Gが広げる生産ラインの未来、デジタルジョブショップへ「柔軟な方式」

スマートファクトリーは「最適な生産を行う工場」といわれる。「早い・安い(低コスト)・うまい(品質良い)」は、どの生産現場も目指すべき「最適」。それを実現するための要素として欠かせないのが高速無線通信インフラ「5G」だ。5Gは製造現場によりフレキシブルさをもたらすと期待されている。

自動車や電子機器といったこれまでの組立製造業は、コンベヤに部品を流し、順番に組み立てていく生産ライン方式が主流。近年はライン工に代わってロボットや自動機が組み立てを担当するケースも増えている。

製造方法は、基本的には順送りのみの1パターン。平時はスムーズに流れて効率は良いが、時間がかかる作業の前後でワークが遅滞したり、トラブル時には後工程が全部止まってしまうという難点があった。

 

それに対し、インダストリー4.0時代の生産方式として検討・採用が進んでいるのが、「デジタルジョブショップ型」といわれる方法だ。

各作業工程がジョブショップとして独立し、コンベヤの代わりにAGVが搬送を担当してワークを届ける。作業進捗や混み具合に応じて作業の順番を柔軟に入れ替え、作業待ちのムダを極力削減する。

これにより複雑さが増す作業工程はデジタル技術でサポートし、スピードの低下やミスも低減するという仕組みだ。

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▲ハノーバーメッセでのデモライン。AGVで車体を搬送する

 

ここで重要な役割を果たすのが、高速性、低遅延、多数同時接続という特長を持つ5Gだ。工場内を何台も動き回るAGVと各ジョブショップとリアルタイムで情報をやりとりし、フレキシブルに工程を変化させながら作業を進めていくことが可能になる。

また多品種少量生産が進み、製品のライフサイクルも短くなる中で、生産工程の変更や機器の入れ替えの機会が増える。5Gをベースとしたデジタルジョブショップ型にすることで、配線を極力減らし、変更作業も容易に進めることができるようになる。

5Gは、これまでセンサデータなど情報信号の送受信にとどまっていた無線活用を、制御信号の送受信まで可能にする。それにより工程はより柔軟になり、自律性が高まっていくと期待されている。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。