[インタビュー]PTCジャパン宍戸社長「IoT+SLM、ALM注力へ」
――2016年を総括して
おかげさまで2016年は全体としてフタ桁成長できました。なかでもIoTは前年比300%増と目覚ましい成長を遂げることができました。
2015年からIoTに取り組みはじめ、製造業の多くの企業を回りました。一言でスマートファクトリーと言っても、業界や製造する製品によって要素は異なります。
例えば複写機はセル生産で組み立て、自動車は一つのラインで異なる車種を製造しています。サプライヤを見れば、ロボットで自動化しようとしています。従来から各社各様であることは理解していたが、昨年はIoTの取り組みを通じてあらためてその認識を強くしました。
――2017年の取り組みに関して
こうした背景をもとに17年はまず組織変更に取り組み、注力する業界に特化した形で「自動車」、「ハイテク・建機・重工・農機」「中堅企業・新規企業」、小規模事業者の「SMB」の4つの営業部隊を設けました。さらに、それらに横串を刺し、IoTを提案する専門チームの「SLM・ALM・IoTソリューションスペシャリスト」を組織。またパートナー企業とオープンにビジネス協業を進めています。
「自動車」と「ハイテク・建機・重工・農機」の領域は大手企業であり、IoTやスマートファクトリーに対する取り組みが進んでいて、さらに加速や進化をさせようとしている企業が多い。中堅企業と新規企業、SMBは、これからIoTに取り組むような企業が中心となります。
それぞれの領域の専門部隊が、すでに当社が持っているアプリケーションであるCADやPLM、SLM、ALMといったアプリケーションを入口として、ユーザー企業と業務改善に対して議論を重ねていきます。そこで気づきを与え、次いでソリューション専門チームが課題解決を図っていきます。
これまではアプリケーション提案が中心で、その業務、工程内を最適化する形になっていました。
いまはコネクテッドファクトリーというように、前後の工程や、MESやBOM、基幹ソフトなどまわりのシステムともつなげることで最適化していかなければなりません。
それを確実に、速やかに実現するために、それぞれの業界の専門知識を持つ部隊、つなげる技術とソリューションに優れた部隊、パートナー企業でカバーしていきます。
――2017年の注力分野、製品は?
2017年は、大手企業、特に「自動車」と「ハイテク・建機・重工・農機」の分野ではSLMとALMに期待しています。中堅企業と新規企業、SLMに関してはCADやPLMが中心となるでしょう。いま価格競争が激しく、製品を売るだけで収益を上げるのは難しい。多くの企業が「製造業のサービス化」と言われる、サービスを中心としたビジネスモデルに取り組んでいます。
例えば、企業は機器や設備を売るのではなく、貸し出して使用期間に応じて課金するレンタルや、またはアメリカの空調設備メーカーのTrane社のように、設備内の温度環境を一定に保つことをサービスとして提供し、結果に対して代金を支払う。このようなサービスが出てきています。
この場合、サービスを提供する企業にとって、設備の稼働率がサービスの肝となります。万が一、設備が故障したり、停止したりすると、レンタルであれば貸し出せなくなります。Trane社のような保証型サービスでは、サービス品質が下がる。ダウンタイムが許されなくなっています。
SLMは、機器や設備に取り付けたセンサから集めたデータにより、リアルタイムに設備の稼働を監視し、一方で異常の予兆を見つけて未然に故障を防ぎます。
製造業のサービス化を実現するために不可欠な「プラットフォーム」です。建機や医療機器、自動車業界ではサービス化が進み、SLMも入り始めています。
今後、工場関連では設備や生産機械でもサービス化は進んでいくでしょう。産業用ロボットではすでに始まっています。そうした企業に向けてSLMの提案をしていこうと考えています。
ALMについては、製品開発でソフトウェアの比率が高くなり、さらに製品がコネクテッドで色々なところとつながって情報を集めるようになったため、ソフトウェア自体の構成やラインナップが複雑さを増しています。
システム開発が難しくなるなかで、きちんと要件を定義して開発していくためにALM(アプリケーションライフサイクルマネジメント)が大事になっています。
例えば自動車のエンジンであれば、これまでに作ったエンジンの情報を参考にして開発を効率化したり、車体やカーナビから得た情報をリアルタイムに取り込んで製品開発に反映するような取り組みが始まろうとしています。ハードウェアを製造する上でPLMによる管理が効果を上げているのと同様に、ソフトウェア開発においてもALMが期待されています。
2017年は新しい体制になり、ジャンプアップして成長したいと考えています。2020年の東京オリンピックに向けて色々とやっていきたいと考えている企業がたくさんあります。それを支えていきます。また激しいグローバル競争のなか、色々なテストアンドランに対し、その支援を行っていきたいと思っています。