“見える化”が現場を変える! 人と機械を融合させる工場工程の見える化の取り組み
IoT(モノのインターネット)技術の発展で、エネルギー消費などを可視化して効率的な利用を進める「見える化」というワードが注目されています。
この「見える化」は最近、製造業の現場でも頻繁に取り上げられるようになっています。
製造工程での「見える化」の取り組みについてお伝えします。
「見える化」は手段であり、目的ではない
「見える化」を進める上で、目的を明確にしておくことが大切です。
見える化は単に製造現場を可視化するだけではありません。
可視化することで、問題の解決を図ること目的です。
具体的に言えば、経営改善を行い利益を確保することが最終目的です。
「見える化」は手段であり、目的ではないということを明確にしておきましょう。
「見える化」を進めるための5つのステップ
製造現場の「見える化」は、以下のステップで進めます。
ステップ1:目的の明確化
なぜ「見える化」を進めるのか、作業の目的を明確にします。
誰に、何を、どのように「見える化」するのかを明確にすることで、当事者意識が高まり、解決につながります。
ステップ2:現場の環境を整える(5Sの推進)
不要なもので問題点が隠されてしまうことを防ぐため、製造工程を整理整頓します。
その時に基本となるのが5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)です。
ステップ3:判断基準を明確にする
作業員だれもが判断基準を共有できるようにします。
例えば、モノの置き場や通路を明確にするための「白線表示」、どこに何があるのかを表示する「看板(表示板)」など。
あるべき姿を明確にすることで、異常が起きたときに見通しの良い現場環境が確立できます。
ステップ4:異常発生時のしくみを作る
異常が発生した場合、どのように処理すべきかをルール化し、作業員全員に徹底します。
異常の発生だけでなく、異常が発生した場合どのようにすべきか、即座に対応できるルール作りが必要です。
ステップ5:根本的な原因究明と横展開
異常が発生したら、再発を防止するため、問題の根本的な原因と処置法を記した対応マニュアルを作成し、従業員に共有します。
作業員全員に当事者意識を持たせるために、現場の改善教育を通じて各自のムダや異常を察知できる能力を養います。
あらゆるところで実施されている「見える化」
そもそも見える化の原点はトヨタ自動車の「カンバン方式」、「アンドン方式」などです。
ITやシステム導入時に社内のデータを利用し、グラフ表示などで見える化を実行することで、業務効率化や従業員の柔軟な対応を促すことであり、元々、製造業で古くから慣例として活用されてきた「目で見る管理」というところから派生した言葉です。
「見える化」はいまや製造業だけでなく、あらゆる産業で実施されています。
電気機器大手のオムロン株式会社はIoTを利用した「見える化」を多く実施していることで有名です。
例えば、省エネという観点から同社が京都大学をクライアントとして取り組んだのは、時間帯別電力分析です。
研究室で使われる電気量を「見える化」することにより、「昼休み時間の消灯の徹底」、「機器の電源をオンにしたままの帰宅による無駄遣い」、「日別の待機電力量の高止まり」、「季節単位での待機電力量の増減」、「深夜の研究質の電気量の多さ」などが発見され、結果として京都大学では省エネが行われました。
オムロン以外にも、商品組立作業場別に照明や空調、その他設備などのエネルギー使用量を計測することで、「夜中に無駄な電力が使われている」、「残業時間に多くの電力が使われている」というような発見をし、それに伴ってオペレーション改善を実施したという事例が多くあります。
また、そこからさらに、経営者と社員が同じ目線に立って課題を共有し、トップダウンの構造からボトムアップ方式のマネジメントに切り替わったという事例もあります。
また、オムロンでは、店舗を運営しているクライアントに向けて、単独の拠点はもちろんのこと、他拠点の施設でも遠隔操作できるASP型システムでの省エネなどにも取り組んでいます。
さらに、導入した太陽光パネルなど自然エネルギーを最大限に活かすための方法論などにも、IoTによる見える化の観点から積極的に取り組んでいます。
また、将来的な意味合いも兼ねて、同社では、エネルギーの見える化を積極的にカリキュラムに取り込んだ体験型の環境学習授業を実施しています。
「見える化」が「見せる化」になってはならない
「工場見える化」「工程見える化」「現場見える化」と、製造工程の見える化を進めるにあたり、もっとも大切なのは目標と当事者意識の明確化です。
実際に自分たちが使っている時間やエネルギー、工数などを見ることで、意識が明確に変わっていくということはよくあります。
「見える化」が「見せる化」になってしまってはいけません。
冒頭で述べたように「見える化」はあくまで手段であり、可視化することで、収益の改善や生産効率のアップ、異常の検知といった問題の解決を図ることが目的であることを、周知徹底するべきです。
出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング