研究開発現場マネジメントの羅針盤「マネジャーは人工管理でなく人材育成を意識すべき」
今回も、受注型の開発部門や事業部から依頼テーマを請けて研究をしている研究所などで見られるマネジメントの問題を取り上げてみます。
マネジャーが気にしていることは何か
仕事を外部から請けて仕事をする構図の職場は、どうしても構造的に仕事量の増減が生じるものです。
高負荷状態を長く放置してはいけないことは前回も述べましたが、もちろん仕事が少ないことも問題です。
受託テーマの量が少なすぎることはそのまま業績悪化を意味します。また、仕事の質が悪いと、品質問題、コスト超過問題、納期遅延問題などを引き起こします。
したがって、マネジャーは仕事の成果や業績を自ずと気にするものです。当然のことです。
仕事量が十分にあるのか、仕事は上手くいっているのかを、定例会や進捗管理の場などで確認することがマネジャーの仕事のひとつになります。
このこと自体はなんら問題ではありません。問題は、仕事量の管理や仕事の状態の確認だけに留まり(偏り)、人・組織の成長に関心をあまり持っていないマネジャーがいるということです。
日常かける言葉が「どう、忙しい?」「仕事はあるの?」「まぁ、タイヘンだと思うけど、がんばってね」といようなことばかりの人は、仕事量にしか関心がないと思われてしまうかもしれません。
人の成長、つまり意欲の向上、能力の向上、改善の促進についても、現場の一人ひとりと話をするべきです。
人工(にんく)でなく人材を見る
上で述べたことは、マネジャーが人工(にんく)管理を主としているのか、人材マネジメントに重きを置いているのかの違いだともいえます(下表)。
部下を「人工」と見るのか、「人材」と見るのか、その違いは日常のさまざまな局面での会話にあらわれるものです。
「人手が足りないから……誰かいない?」ということで、仕事に呼ばれた人はどういう気持ちになるでしょうか。
「やり方を教えるから、君ならできるよ」と言われたところで、「”手”が足りないから呼ばれたんですよね。私の”才”が求められているわけではないんですよね」と、心の中で思ってしまうものです。
人材のマネジメントをする意識があれば、一人ひとりの特性を活かせるように”適材適所”に努めるでしょうし、そのために各人の仕事量だけでなく、人の特性や興味を知ろうとするはずです。そういう姿勢は、必ず現場のメンバーにも感じ取られ、伝わるものです。