いまの時代のモノづくりの現場を見直す! 『品質』『効率』『環境』はどうあるべきか?
長らく日本経済をけん引してきた製造業。
IoT(モノのインターネット)やビッグデータといった新たなテクノロジーが登場し、モノづくりの現場にも変革の波が押し寄せています。
製造業のかなめである「品質」「効率」「環境」という3つの側面から、今後の製造業の姿を探ってみます。
「ビッグデータ」以前から、情報活用してきた製造業
製造業の柱である「品質 (Quality)、コスト (Cost)、納期 (Delivery)」の品質は、日本のモノづくりの命ともいえます。
近年、IT業界で注目を集めるバズワードといえば、「ビッグデータ」です。
製造業では20世紀後半から、製造工程からのデータ収集を実施している現場がほとんどです。
もちろん、今のようなIT技術はありませんでしたから、手作業で計測したデータを記録し、キャビネットに保管するという形式だったはずです。
そうして手間をかけて収集したデータをもとに、製造業は品質管理や作業の効率化を進め、技術革新とともにオートメーション化も進めてきたのです。
その後、デジタル通信を用いて行うフィールドバス技術の登場で、製造装置と制御機器の信号のやり取りをよりリアルタイムに収集し、データ分析ができるようになりました。
昨今では、温度センサーや圧力センサー、電力センサーなどのさまざまなセンサの情報なども秒単位で計測・活用できるようになっています。
「ビッグデータ」などという言葉が登場するはるか以前から、製造業では品質管理や業務向上に膨大なデータの活用が行われてきたのです。
ビッグデータが重要視される3つの要因
近年、ビッグデータに代表されるデータ分析がますます重要視されるようになった背景には、いくつかの要因があります。
1.正確な現状把握と将来予測の重要性が高まった
世の中の情報スピードが急激に早くなったことで、ほんの数年先の未来でも予測することが難しくなっています。
そうした状況下で迅速かつ正確な意思決定や経営判断を行うには、正確に現状を分析し、未来まで見通す力が必要です。
膨大なデータを分析することで、判断の確度が上がります。
2.情報流通量の爆発的増加
総務省が平成23年に発表した最新の「情報流通インデックス」(国内の情報流通の規模、構造等の現状や変化を定量的に把握する総合指標)では、平成21年度の流通情報量は7.61×1021ビット(一日あたりDVD約2.9億枚相当)に上り、インターネットの普及が一般化した平成16年ごろから、その伸び率は飛躍的となっています。
ソーシャルメディア(SNS)が普及し、日々インターネット上で膨大なデータがやり取りされている近年、情報流通量はますます増加していると考えられます。
3.情報処理コストの低下
技術革新により、高性能なコンピューターが安価に提供されるようになり、情報処理コストはぐっと下がりました。
こうした背景から、大量の情報を処理することが必要となるビッグデータを活用する時代になったのです。
とくに、少子高齢化や産業の空洞化で熟練した技術者が減っている中、データを活用した品質管理はますます重要となるでしょう。
徹底した効率化とコストカットが裏目に、IT化が技術サポート
日本の製造業はこの数十年、徹底的に効率化を進めてきました。
その結果、日本製品の質が低下しているという声もあります。
「人員削減」「熟練技術者の減少」などの雇用環境の変化や、組み立て加工業を始めとする海外への生産拠点の移転で、終身雇用制を前提に技術継承が図られてきた日本のモノづくりと、高品質が担保できなくなったためだと考えられます。
派遣労働者、パート、業務委託などの非正規雇用者や外国人などを雇って人件費の削減を図る一方、認識や知識を十分に持っていない人たちが現場の大多数を占めるようになり、品質や安全性に対する認識が低下しているのです。
こうした流れに一石を投じる可能性があるのは、やはりテクノロジーの進展です。
欧州の技術大国ドイツでは、「インダストリー4.0」が提唱され、インターネットを活用したデータの収集や、個別大量生産を可能にする柔軟な生産ライン、遠隔地や複数作業員を一括で管理する監視システム、故障予知サービスなどの実現を目指しています。
こうしたIT技術により、熟練の技術者の減少をサポートすることは可能だと考えられます。
環境経営度ランキングで2年連続トップのコニカミノルタ
環境に配慮した経営を行うことは、CSR(企業の社会的責任)の観点からも重要です。
日本経済新聞社が実施した第19回「環境経営度調査」では、2015年に引き続きコニカミノルタが2年連続で製造業総合ランキング1位を獲得しました。
同調査は、企業の環境経営度を「環境経営推進体制」「汚染対策・生物多様性対応」「資源循環」「製品対策」「温暖化対策」の5つの側面から分析し、環境対策と事業成長を両立させる取り組みを評価するものです。
環境負荷低減と企業価値向上を一体化した環境経営方針・施策の推進に加えて、社外に向けてコニカミノルタの環境経営の考え方を共有することで、広く社会に貢献し高評価を得ました。
こうした活動への取り組みも、これからの時代、新たな企業価値となることは間違いありません。
出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング