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今さら聞けない5G入門、要件実現に向けた新技術 (中村浩士(ローデ・シ...

2016/11/1 IT media

今さら聞けない5G入門、要件実現に向けた新技術 (中村浩士(ローデ・シュワルツ・ジャパン),[EDN Japan])

5Gの実現に向けて

 2020年の一部商用化に向け、2017年より実証実験が日本でも開始される見通しの5G(第5世代移動通信)。超高速通信速度、大容量、低遅延などの要件実現に向け、世界各地で5Gの推進団体が誕生し、研究開発、標準化の議論が活発に進められている。

 5Gは、超高速通信速度、低遅延などの要件を満たすために今までの移動体通信では利用されていなかった新たな周波数帯を広帯域での利用、新しいエアインタフェースの選択、Massive MIMO(大規模MIMO)やビームフォーミングなどの技術利用が検討されている。通信事業者や通信機器メーカー、大学、研究機関、そして、計測器メーカーが要件の実現に向けて精力的に研究開発に取り組んでいる真っただ中だ。

 本連載では、5Gの要件実現に向けた技術動向に焦点を当て、計測器メーカーであるRohde & Schwarz(ローデ・シュワルツ)の視点から5Gの動向をお届けする。第1回となる今回は、「5G」の要件実現に向けた新たな技術を取り上げる。

「LTE」から「5G」

 スマートフォンの利用者数の増加や、動画をはじめとする大容量コンテンツの利用増加、サービスの高度化などにより近年の移動体通信トラフィックは急増し、2020年には2010年と比較してデータ通信量が30倍以上になることが予想されている。また、IoT/M2M機器の普及も見込まれるため、ネットワークに接続する新たな端末の急激な増加が予想されている。こうした状況を解決するために、5Gでは「超高速伝送」「大容量化」「低遅延」「同時接続数の増加」などの要件が盛り込まれている。

 具体的には、10Gビット/秒の通信速度や1ミリ秒以下の低遅延などの要件があげられている。このような要件を実現することで、3.6Gバイトの2時間映画を約3秒でダウンロード可能になる(4Gの場合は約30秒)。また、同時接続数が増えることで災害時など接続しづらい環境を改善できるようになると考えられている。

 5Gでは「4G」にはない通信容量や低遅延が可能になることで、自動車、産業機器、IoT分野など、これまでの産業領域とは異なる幅広い分野に渡った複合的な利用が期待され、これまでにない新たなサービスやアプリケーションの誕生が予想されている。

 例えば、自動運転がまさにそうだ。自動運転では、リアルタイムに位置情報や周囲の歩行者、障害物、併走する他車などの周囲の情報を取得することが重要である。こうした多くの情報をリアルタイムに処理し続けるためには、低遅延で信頼性の高い高速伝送がダウンリンクのみでなく、アップリンクにも求められる。5Gを活用することで、リアルタイムに自動運転に必要な情報を処理できるようになるかもしれない。

 実際に、韓国では2018年の冬季オリンピック、日本では2020年の夏季オリンピックでの一部商用化に向けた研究開発が盛んに進められ、標準化に向けた動きだけでなく、要件実現のための新たな技術やサービスの提案が、展示会などを通して行われている。

5Gの技術課題

 5Gにおいて、「超高速伝送」「大容量化」「低遅延」「同時接続数の増加」といった要件は、今後の5G時代に向け満たすべき重要な技術課題である。これらの要件を満たすためには、従来利用されている周波数帯の効率的な利用だけでは難しい。

 そこで、移動体通信には不向きであると考えられていた6GHz以上のセンチ波/ミリ波と、従来利用されている6GHz以下の周波数帯との併用、そして、1GHz以上とも言われている帯域幅を活用した通信が検討されている。

 しかし、センチ波/ミリ波帯では、電波の波長は短くなり遠距離まで信号を送信しにくいだけでなく、直線性が高いためビルの影などで通信が難しいといった問題点を抱えている。これまで利用されてこなかった周波数帯での、伝搬環境が電波伝搬に与える影響(マルチパスなど)には不明瞭な点が多い。この高い周波数を効率的に伝送する1つの方法としてMassive MIMOがあげられている。

 Massive MIMOは、干渉を低減させ、高速通信、さらには、伝搬ロスを補うことができる技術である。しかし、多くのデジタル/アナログ部品を必要とするためコストと消費電力が高くなる。そのため、Massive MIMO技術にビームフォーミングを組み合わせた技術が効果的であり、現在広く研究が行われている。

新しい変調方式も検討

 また、LTEで利用されているOFDM(直交周波数分割多重方式)はスペクトラムが広く、Cyclic Prefix(サイクリックプレフィックス)とオーバーヘッドしてしまう課題があるため、UFMC/FBMC/GFDM/F-OFDMなどの新しい変調方式が検討されている。

 周波数、変調方式、ビームフォーミング、移動速度などの各種条件を変えて、都市部や郊外などさまざまな環境下で送受信のテストを実施し、モデル化するための研究が始まっている。伝搬特性の把握とモデル化を行うサウンディングと並んでエアインタフェースの選定が、5Gの要件実現のために必要な課題だ。

 これまで述べてきたように、センチ波/ミリ波の利用、広帯域化、新しい変調方式、Massive MIMO、ビームフォーミングなど新しい技術の導入が検討されている。しかし、これらの技術に対応できるケーブルやフィルター、アンテナなどを検討し、開発することも重要である。さらに、ネットワークへの接続数の増加や他分野との複合的な利用により、ユーザーが最適にネットワークを利用し、さまざまな分野に対応可能にするための新たなネットワーク形成の議論も始まっている。

 ネットワークの最適化を行うSDN(Software Defined Network)や、NFV(Network Function Virtualization)といった仮想化技術の検討も重要である。

計測器メーカーの役割とは

 5Gの研究開発に向けた計測器メーカーの主な役割は、標準化で議論されている技術要件と現時点の技術で測定可能なパラメータを比較検討することで、実際に評価が行える仕様を提案するとともに、新たな測定手法や計測器そのものを開発することである。

 既に、センチ波/ミリ波が既に使用されている航空宇宙分野のレーダーや車載レーダーの評価用途として、デバイスやセンサーなどの測定が可能な計測器が登場している。例えば、85GHzまでワンボックスで測定できるシグナルスペクトラムアナライザー「R&S FSW85」や、ワンボックスで2GHzの変調帯域幅を有するベクトルシグナルジェネレーター「R&S SMW200A」などである。LTEなど3GPPの規格に沿った試験が可能な計測器として、ワイドバンド無線機テスター「R&S CMW500」などもある。

 2020年の商用化に向け、センチ波/ミリ波、広帯域を利用した通信を評価できる計測器を開発することは、計測器メーカーにとって大きなチャレンジと考えている。

まとめ

5Gで求められる要件

  1. 超高速伝送
    4Gと比べ10倍に相当する、10Gビット/秒以上の通信速度
  2. 大容量化
    4Gと比べ1000倍のシステム容量
  3. 低遅延
    4Gと比べ10分の1に相当する、1ミリ秒以下の遅延
  4. 同時接続数
    4Gと比べ100倍に相当する、基地局あたり接続数1万

5G要件解決のための主な技術

  1. センチ波/ミリ波の利用
  2. 広帯域伝送
  3. Massive MIMO
  4. ビームフォーミング

5Gで検討されている新しい変調方式

  1. FBMC(Filter Bank Multi-Carrier)
  2. UFMC(Universal Filtered Multi-Carrier)
  3. GFDM(Generalised Frequency Division Multiplexing)
  4. F-OFDM(Filtered OFDM)

 次回の記事では、5Gで検討されている新しい変調復調方式について解説する。



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