【地方ICTの取組】北九州から新ビジネス創出 北九州e-PORT2.0

【地方ICTの取組】北九州から新ビジネス創出 北九州e-PORT2.0

地方のICTやデジタル技術の活用に向けた取り組みが賑やかだ。多くの地方で少子化や都市部への人口集中によって人手不足が深刻化しているが、一方で地元が好き、盛り上げたいという気持ちの強い人々が集まり、それが新たなエネルギーとなって地場産業や地域の活性化に一役買っている。北九州市が進めている「e-PORT」もその一つで、地域の産官学民金が一体となって地域の課題解決やスタートアップの育成など新たなビジネスの創出に取り組んでいる。

ICTインフラ整備から始まった北九州e-PORT

 2000年代初頭、インターネットの普及によって各方面でのICT活用が叫ばれるなか、北九州市に大規模なデータセンターを誘致してICTインフラを整備することで地域での産業創出につなげようとして策定されたのが「北九州e-PORT構想」(e-PORT1.0)だ。
 e-PORTとは造語であり、「北九州地域における海の港(seaport)、空の港(airport)に続く第3の情報の港(e-port)としてICTサービスを電気や水のように、いつでも簡単・便利に使える社会づくり」を支える基盤である。

当時、ICTサービスの担い手が東京に一極集中し、そのインフラとなるデータセンターも都内近郊に集まっていたものを、自然災害の少なさや東名阪からの交通アクセスの良さ、アジアなど海外展開への親和性の高さといったメリットを武器に、複数のデータセンターを誘致してe-PORTセンターを市内に設立。


<北九州市およびデータセンターへの交通アクセス>


<北九州市からアジアへのアクセス>

立地した各データセンターは相互に協力し合いながらユーザーニーズに対応し、e-PORTという共通ブランドでのプロモーションを実施してきた。
こうした取り組みにより、国内のデータセンターの一大拠点となると同時に、充実したインフラによって地場の中小企業やベンチャー企業のICT利活用の推進に大きな役割を担った。

 それから10年以上の時が経ち、人口減少問題の顕在化や地方創生の動きなど、社会環境は変化している。一方でセンサーやウェアラブルデバイスの登場、IoT/IoEといった概念の確立といったICT環境の変化も発生している。こういった動きに対応すべく、2015年に新たに「北九州e-PORT構想2.0」(e-PORT2.0)を策定。事業者向けのICT利活用支援の具体的な仕組みを提供する新構想で再スタートを切った。


<e-PORT1.0からe-PORT2.0へ>

産官学民金の共創で産業創出を支援するe-PORT2.0

 e-PORT2.0は、「新ビジネスの創出」、「地域産業の高度化」、「情報産業の振興」を目的とし、ICTの活用による課題解決を通じた産業振興を目指している。


<e-PORT2.0の目的>

e-PORT2.0を進める中心的組織として「e-PORTパートナー」がある。e-PORTパートナーは、事務局を務める(公財)北九州産業学術推進機構をはじめ、ICTやものづくりなどユニークな特徴を持つ企業(産)と、大学など学術機関(学)、官公庁(官)、NPOなど民間団体(民)、さらには地元の金融機関(金)にいたるまで、18年3月末時点で127社・団体(産87、学9、官19、民6、金6)が参画。さらに増加する見込みだ。


<e-PORT2.0の体制イメージ>

e-PORT2.0では、e-PORT1.0で整備されたICTインフラと、数多くのe-PORTパートナーを背景に、自治体やベンチャー企業、起業家、第二創業フェーズにある中小企業、NPO団体といった事業体から相談を受け、そこに適した技術やサービス、人材を持つパートナーを集め「e-PORTコンソーシアム」として組織化・プロジェクト化し、ビジネスを育てていく。e-PORT2.0では、補助金を使った資金援助のほか、各種の経営相談やアドバイスといったコンサルティング、技術や人材、企業のマッチングの支援等を受けることができ、すでにいくつかの成功事例が生まれている。


<e-PORT2.0による新ビジネス創出の流れ>

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1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。