トヨタの現場にはピラニアが泳いでいる|元トヨタマンの目

トヨタの現場にはピラニアが泳いでいる|元トヨタマンの目

トヨタでこんな話を聞いた。

南米から観賞用の魚を船で日本まで輸送するのだが、どんなに水温などを調節していても、赤道を越える長旅のためか多くの魚が死んでしまったとのことだった。

そこで餌を十分に与えたピラニアを同じ水槽に入れて輸送することにした。そうすると観賞用の魚たちはいつ食われるか心配で緊張し続けるため、ほとんど死なずに日本まで来たそうだ。

 

トヨタの現場がまさにこの水槽内と同じ状況だ。

それではトヨタの現場のピラニアとはいったいなんだろうか。

それは「在庫ゼロの状態」だ。

 

トラブルを発生させれば即トヨタの長大なラインを止めてしまうことになり、何千人分のムダな労務費を払うことになってしまう。

この緊張感のため、トヨタマンは「設備が故障しないように常に予防保全をしておこう」「外注部品メーカーがチョンボしないようにフォローをしっかりしておこう」「作業者がミスしないようにポカよけを考えよう」といったように常に前向きに行動するようになる。

この緊張感が現場で最も重視しなければならない「安全」に大きく寄与するのだ。この緊張の糸が緩んだ所に魔の労働災害が襲い掛かるのだ。

 

元トヨタマンの目
トヨタ生産コンサルティング株式会社


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。