NEC 120年続くものづくり企業、工程最適化・ロボット導入支援サービ...

NEC 120年続くものづくり企業、工程最適化・ロボット導入支援サービス

現場ノウハウ 人材 テクノロジー
三拍子揃ったものづくり企業

NECは今でこそAIや画像認識といった最先端のIT企業と見られがちだが、もともとはパソコンや携帯電話を筆頭に、全国の工場でたくさんの電子機器を長年作り続けてきている、ものづくりの王道を歩んできた製造業大手である。

そんなNECが今年から、社内に資産として蓄積してきた知見やノウハウ、技術と人材を活かし、製造現場に向けたロボット導入や工場の最適化を支援するサービスをスタートしている。

 

NECの本当の姿=120年続くものづくり企業

NECは今から120年前の1899年に創業。電話交換機やFAXのもととなった写真伝送装置、ラジオやテレビの放送装置、無線通信機、電子計算機・コンピュータ、IC・半導体メモリ、パソコン、携帯電話など、あらゆる電子機器を1世紀以上もの間、開発し作り続けてきた。人工衛星や海底ケーブルなど極限環境で動作するような一品物からサーバ・通信機器のような量産品まで、さらに、国内向けから海外向けまで、幅広いものづくりを行い、その技術とノウハウを大事な資産として社内に蓄積している。

さらに、それを牽引してきた人材は今も健在。傑出した技能や知見を持ち、同社の生産改革を15年以上支えてきた「匠」と呼ばれるベテランたちが40人以上在籍し、同社のものづくりを今も磨いている。

今もなおNEC=製造業企業であり、他社にない技術と知見を持つ稀有な存在だ。

NEC DX Factory共創スペースに設けた先端デモライン

NEC DX Factory共創スペースに設けた先端デモライン

 

門外不出のものづくりノウハウの提供を開始

2012年には、これまで門外不出だった同社の生産革新のノウハウやサプライチェーン改革のノウハウを外部企業に対して提供する「NECものづくり共創プログラム」をスタート。当初は生産管理やSCM、PLMなど企業の上位システム、IT基盤の整備が中心となっていたが、ここ最近のIoTやロボットの普及、ITとOTの融合等の動きに合わせ、より現場に近いレベルでの支援の強化にも範囲を拡大。

そのうちの一つが2019年2月から提供を開始した「ロボット導入トータルサポートパッケージ」だ。

 

現場コンサル+ロボット+見える化システムをトータルで提供

ロボット導入トータルサポートパッケージは、ロボットを使いたいという製造現場に対し、安価で簡単に、短納期でロボット化を実現するサービス。これまでロボット導入のハードルとなっていた①ロボットを扱うスキルや経験値の不足 ②ロボット化できない作業や常設不可などの環境条件 ③異常の原因解明と復旧対応への不安を解決したものとなっている。

具体的には、導入前に現場を確認し、作業改善やロボット導入のためのライン構想などのコンサルにはじまり、それに応じたロボットシステムと見える化・分析システムを構築して納品するまでの一連の流れを一貫して提供する。

ロボットは生産ラインに導入しやすい600㎜サイズで設計し、多関節ロボットと架台、制御部、操作パネル、ティーチングまで、すべて組み上げた状態で提供。オプションでネジ締めや樹脂塗布、圧着、AIを使った外観検査等のアプリケーションも用意している。見える化・分析システムも装置の稼働状況や本体の状態検知まで作り込んで引き渡す。

いわゆる現場レベルが求める現場や工程改善のアドバイスとロボット・自動化装置、IoT・見える化システムがすべて一揃いになり、そのまますぐに使い始められる形で提供されるのが最大の特長。価格は1200万円~となっている。

 

実践してきた知見を盛り込み、短期間でロボット工程を立ち上げ

ロボットシステムの導入に約6カ月かかるケースでも同パッケージでは半分の3カ月に短縮できるほか、省人化や不良率の低減、品質向上も実現できるという。

「単に自動化しようとすると使えなかったり、重厚長大でムダが多くなったりする。しかし当社では、匠や現場に詳しい者が現場を確認し、ムダなところを改善し、管理しやすくした上で自動化やロボット化を提供する。当社が失敗と成功を繰り返してきた知見を活かし、最適な工程を構築する。またロボットだけでなく、見える化・分析システムも一緒に提供し、意識せずに自然な形で自動化と見える化、IoT化を実現する」(スマートインダストリー本部ものづくり戦略グループ北野芳直技術主幹)

当面、力を入れていくのは組立製造業。2月のサービス開始の発表後、多くの引き合いが来ているという。

「まずは着実に当社が得意とする電機・精密機器メーカーから進めていく。ロボットは使い方次第で色々できる可能性があり、マッチする分野があれば広げていきたい」(スマートインダストリー本部ものづくり企画・プロモーショングループ高野智史主任)

スマートインダストリー本部 北野氏(左)と高野氏

スマートインダストリー本部 北野氏(左)と高野氏

 

経営層と現場からのサンドイッチでIoT化を進める

製造業企業の共通する課題はIoTやスマートファクトリーへの対応。どんなシステムを、どこから、どう構築し、何を効果として得るかが難しく、なかなか進んでいないのが実情だ。ITとOTの違い、経営陣と現場の温度差もある。

同社はこれまで「NEC Industrial IoT Platform」という基盤をベースに工場や生産ライン全体のデータ統合を推進し、経営層やIT側からのIoT化を提案してきた。それに対し同パッケージは、現場の工程や作業員レベルが実行し、始められるOT側からのIoT。IT・OTの両面から、IoT化の加速を進めていく。

北野氏は「ものづくり共創プログラムや匠の存在によって、スマートファクトリーに向けた全体設計をしてほしい、将来の工場・生産工程のあり方を一緒に考えてほしいといった相談がとても多い。加えてロボット導入トータルパッケージができたことによって、これまでと違ったアプローチでIoT化に取り組めるようになった。当社の価値は、製造業の現場で鍛えたものを顧客に提供できること。匠による現場コンサルから実際のロボットシステム、さらにはIoT、その先のスマートファクトリーまで提供できる。これを活かし、製造業を元気にするサポートをしていきたい」と話している。

 

参考
■NEC
■NEC「生産ラインのスループット向上を支援する『ロボット導入トータルサポートパッケージ』を販売開始」


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。