IMV 予知保全用の普及型振動ピックアップ「VP-8021A」発表

IMV 予知保全用の普及型振動ピックアップ「VP-8021A」発表

西原弘之 執行役員・MES事業本部長

西原弘之 執行役員・MES事業本部長

 

「しまった、予知保全しておけばよかった…」。

いざ機械が突然壊れてストップすると、そういう声が現場から上がる。

とはいえ、もう起こってしまった話なのであとの後悔先に立たず。それより目の前の現場を何とかしないといけない。そういう機械のトラブルは今日も日本のどこかで、そして世界のどこかで、毎日のように繰り返されている。

 

機械が壊れる。その現象は突然死する機械もあるものの兆候をつかんでいなかったがゆえに突然死と見えるだけであり、そこには必ず物理的な兆候がある。機械が止まる兆候を見逃さない現場のベテランがかつては現場にいた。あの人に任せておけばいいという安心感のあった時代があった。

だが熟練工は徐々に去り、ベテランの勘は定量化され可視化されようとしている。その為にはセンサそしてIoT技術が欠かせない。時代は今そこに移行して行こうとしている。

予知保全は様々な計測器を用いて行われているが、その中でも振動計測は軸受けの現場など限られた用途では最も一般的に採用されている。(下図参照)

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機械によって壊れる原因はさまざまながら、その予兆を示すパラメータは決まっている。

「振動」「加熱」「回転偏心」「電流値」「異音」「異臭」、これらのパラメータである。明らかにそれとわかる異音や異臭はさておき、その他のパラメータは音もなく忍び寄る。放射温度計で過熱をモニターする、テスターを定期的に置いて指示値を管理する、そういった基準を決めて常時監視のメンテをする現場は多いが「振動」だけは全く普及していない。理由は二つ。センサが高すぎる、そして振動波形をもらってもどうしようもない、という事実。MEMS素子という安価なものは世の中にあるものの正確に応答する周波数が限られており実用にはまったく供さない、という現実があった。

【相対値判定】

個々の設備における数回の振動値実績をもとに基準値を算出し、これらと比較することで、通常時と異なることを判断する方法を相対値判定と言い、基準値は10回以上測定して決定することが望ましい。

IMVは振動試験装置パイオニア企業として70年の歴史をもち、自動車、鉄道、電池、ロケット、などの大規模なものから電子産業向けの小さな対象物に至るまであらゆるものに加振装置を提供してきた。

加振装置での国内シェアは約70%にもなり、加振屋として技術と経験値は十分だが、その加振屋が作った初の「IoT対応の振動センサ」、それが2019年夏から発売を開始した「VP8021シリーズ」=写真=である。

 

 

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その新規性とメリットについて、IMVの執行役員・MES事業本部長の西原弘之氏に聞いてみた。

 

「振動センサによる予知保全の試みは、FAの現場では取り残されてきました。センサが高い、出て来た信号をどう処理していいのかわからない、あれこれやったけど結局うまくいかなかった。もう手を出したくない。こういった声がFAの現場で多いのは承知しています」。こう切り出した西原氏はさらに続ける。

「だからこそ弊社のような振動のスペシャリストには、FA用の振動センサがブルーオーシャンなのです。熟練工の不足をAIやIoTで補うにしても、IoTの仕組みには信号を入れてやらないと何もできませんし、15~30万円する圧電式の振動計からでてくる信号は正確だがそんな値段では機械現場が求める多点監視どころか1台つけるにも現場は稟議を上げなければならない。そういった現場に仮に従来価格の半分以下、ともすればゼロが一つとれるような価格で振動センサを提供ができれば面白いだろうと。これは70年間の技術蓄積と莫大な実験データを持つIMVだからできるのですが、このたびVP8021シリーズでそれを実現できました。アナログ・デバイセズ様の素子をベースに、IMV独自の雑振動キャンセル機構(NVC機構)を搭載し、実用に足る安価な普及型振動センサは世界初クラスの出来事と思っています」。

 

従来の振動センサ製品についてIMVがその課題を整理したところ、手作業による調整領域が多く、生産におけるコスト削減が極めて難しいことはもとより、従来のMEMS加速度センサは高周波振動を測定できないため、機械の設備診断には使えなかった。IMVはこの課題を解決するために、アナログ・デバイセズ社の高周波加速度センサADXL1002を採用し、同社の業界トップクラスの高周波振動計測技術との統合によって、高周波計測の問題を解決した。コストに関しては、手作業が必要な圧電式ではない為に量産効果が期待でき、振動による予知保全の今後のスタンダードになりうる製品といえる。また工場のスマート化を進めたい現場に対応するためクラウドサービスの提供にも応じる。

素子をIMVに提供したアナログ・デバイセズの代表取締役社長を務める馬渡修氏は、次のように述べている。「橋梁や建造物、ライフラインなどの社会インフラの老朽化や、FAや製造現場での装置類の事前故障検知の必要性などから、正確な振動計測をIoTで、という要求が高まっていました。そのような環境の中、弊社の加速度センサADXL1002が、IMV社様の業界トップクラスの振動計測ピックアップVP-8021Aに採用され、市場に提供されるようになったことは、意義深いことであり、大変光栄に思います。アナログ・デバイセズは、今後もこのような社会の課題解決に貢献できる技術・製品の提供に尽力していきたいと考えています」

 

今日もどこかで機械は壊れ、止まっている。今後はIMVのVP8021Aが多くの現場の窮地を救うかもしれない。

 

【VP-8021Aの主な特長】
1.他のパラメータ並みの超小型寸法の振動ピックアップ(センサ)
2. MEMSでも10kHzまでの測定精度が得られる
3. 業界初クラスの安価での提供が可能
4. 精度を確保する為IMV独自の雑振動抑制構造「NVC構造」(特許取得済)
6. IEPE駆動への対応

 

 

■会社紹介■

〈アナログ・デバイセズ株式会社〉
アナログ・デバイセズは1965年の創業以来、高性能アナログで世界をリードし、さまざまな技術的課題を解決してきました。世界にインパクトを与えるイノベーションを実現するために、私たちは最先端のセンシング、計測、パワーマネジメント、通信、信号処理技術で、アナログとデジタルとの懸け橋となり、世界の動きをありのままに描き出します。想像を超える可能性を-

アナログ・デバイセズ
http://www.analog.com/jp

 

〈IMV株式会社〉
(英文名)IMV CORPORATION

会社設立 : 1957年(昭和32年)4月17日
資本金 : 4億6481万円
代表取締役社長 : 小嶋淳平
従業員数 : 399名(2019年9月30日現在 連結)
年商 : 123億4,800万円(2019年9月期連結)
上場証券取引所東京証券取引所JASDAQ市場
(証券コード:7760)

小嶋淳平 代表取締役社長

小嶋淳平 代表取締役社長

 

事業内容
●振動試験装置
振動試験装置、複合環境試験装置、信号処理・機械制御システムに関するソフトウェア及び同関連機器の開発、製造、販売、修理・保守サービス
●テスト&ソリューションサービス
振動(環境)試験を中心とした試験の受託、計測解析サービスの提供及びその他のコンサルティング業務
●メジャリングシステム
地震監視装置、振動計測装置、振動監視装置、環境信頼性評価システム及び同関連機器の開発、製造、販売、修理・保守サービス

お問い合わせ先
IMV株式会社営業本部営業マーケティング部(担当品川)
製品お問い合わせ
infomes@imv.co.jp
製品Webページ
http://www.imv.co.jp/cp/vp8021a/


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。