DXに備えて人の心を変えるには

DXに備えて人の心を変えるには

いまさらながら友人にロボット掃除機を勧められた。部屋の隅々まで結構な量のゴミを吸い取ってくれ、毎日の掃除がとても楽になったと大絶賛していた。

インターネットリサーチのマイボイスコムの調査によると、日本でのロボット掃除機の普及率は約5%とのこと。2002年に「ルンバ」が登場してから18年。すでに3割ぐらいの家庭に普及しているのかと思っていたら案外そうでもない。しかし全体的に購入意欲は高く、本格展開はこれからのようだ。

 

友人がロボット掃除機の効果を感じたのは、その便利さだけではない。ロボット掃除機のおかげで断捨離ができたことにとても喜んでいた。それまで何年間も部屋の様子が変わることはなかったが、ロボット掃除機の導入を機に大規模な模様替えを断行。ロボット掃除機が通りやすいレイアウトにし、その際にムダなものを整理して断捨離を実現。部屋がシンプルになって快適になったという。

また普段からものを床に置かなくなったことが家族で習慣化され、ロボット1台でこんなに生活が変わるとはと本人も驚いていた。

 

IoTやロボット等の新しい技術を使ってみようと調査・検討している企業はたくさんある。その際、真っ先に議論になるのが費用対効果で、そこで足踏みしてしまうケースが多い。

大きな投資になるので費用対効果を考えるのは当然だが、早い段階で積極的に使い始めることと、後々になって時代の流れで受動的に導入するのでは、生まれる効果は大きく異なる。前者は新しいツールとそれに伴う新たな現場の形の試行錯誤を通じて社内の文化を変え、ツールの性能以上に現場を成長させる。後者は現場にそのままツールがはめこまれるだけだ。

製造業の変革の時代、最も変えなければいけないものだが、最もそれが難しいのが「人の心」。一度体験してみれば人の考え方は変わる。そういうチャンスを与えるのも経営者の大事な役割だ。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。