CLPA、新規格「CC-Link IE TSN」発表。ITとFAの融合実現
「日本発」 工場のスマート化けん引
スマート工場実現の大きなハードルとなっていた独自規格の産業ネットワークの林立と、上位のITと製造現場のFAとの融合。長い間、統合化や相互接続性が望まれていたが、なかなか実現してこなかった。
CC-Link協会(CLPA)は11月21日、それをクリアする技術としてTSN(タイムセンシティブネットワーキング)をベースとする「CC-Link IE TSN」を発表した。
他のネットワークに先駆けて世界で初めてTSNに対応し、日本発のネットワーク規格として世界の工場のスマート化をリードする。
Ethernetの次世代規格へ期待大
TSNは、リアルタイム性が求められる制御データを伝送するため、標準Ethernet規格をベースとして産業用に拡張した規格。スマート工場向けネットワークの大本命と言われて研究開発が進んでいる。
これまでの産業用ネットワークは、CC-Linkをはじめ複数のネットワークがバラバラに存在していた。それぞれに機器も配線も異なり接続性が悪く、ムダが多かった。
それに対しTSNは、TSN上でいくつものネットワークを同時に動かすことができ、リアルタイム性、相互運用性、優先制御、時刻同期、高セキュリティを実現できる。
CLPAの川副真生事務局長は「コネクテッドインダストリーズやインダストリー4.0などスマート工場の実現に向けてITとOTをつなぐ要望が高まっている。そのためには対応製品を開発しやすい手法が大事であり、そのためにも産業ネットワーク側が変わらなければならないところに来ている。
CC-Link IE TSNはバージョンアップではない。製造のイノベーション、スマートファクトリーの実現に向けて一歩踏み出したいとの思いから、新しい規格としてTSNへの対応を世界に先駆けた」としている。
4つの特徴
CC-Link IE TSNの特徴は大きく4つ。
1つ目は「FAとITの融合」。CC-Link IE TSNは複数の異なるFAネットワークを統合でき、TCP/IPや他のネットワークと同一幹線上で混在できる。システム構成の自由度が増し、配線コストも削減可能。混在していても、制御通信のリアルタイム性を保証している。
2つ目は「高速・高精度な制御」。時分割方式を採用し、ネットワーク内で同期している時刻で入出力を双方向に同時送信することで通信周期を大幅に短縮。また通信を制御して速い制御と遅い制御を組み合わせても高速性を維持できる。
3つ目は「システムの早期立上げと運用、保守における工数削減」。従来は各ネットワークで専用の診断ツールが必要だったが、CC-Link IE TSNではSNMPに対応した汎用の診断ツールが使用可能。多彩な診断方法に対応することで診断範囲が拡大し、正確な診断情報を得られるようになる。
また、伝送時にタイムスタンプをデータに付与できるのも特徴。時系列でトラブルを追い、エラー原因の特定が容易になる。
4つ目は「多様な開発手法による対応製品の拡充」。専用ASIC、FPGAで実装した高性能機器から汎用Ethernetチップにソフトウェアプロトコル・スタックで実装した低コスト品まで、さまざまなタイプの製品開発に対応可能。伝送速度も1Gbpsだけでなく100Mbpsにも対応する。
国内外53社が製品開発を検討
現時点でCC-Link IE TSN対応製品の開発を検討しているメーカーは53社。FAコントローラやネットワーク機器、配線接続機器、センサや空圧機器、ロボットなど末端のコンポーネンツ、半導体まで幅広い。
三菱電機、IDEC、パナソニックデバイスSUNX、ワゴ、フエニックス・コンタクト、モレックス、HMS、ヒルシャー、バルーフ、コグネックス、SMC、ルネサスエレクトロニクスなどそうそうたるメンバーがそろっている。
対応製品が出てくるのは、早いところで2019年春。各社出揃うのは2019年冬と見られており、「11月27日から開催のIIFESに間に合わせたい」という声が多い。
世界に先駆け挑戦
今後は他の産業用ネットワークもTSN対応を正式に打ち出すと見られており、他の産業用ネットワークとの相互運用性や接続性の強化、国際規格や業界規格、国家規格への提案を進めていきたいとしている。
川副事務局長は「日本はこれまで規格が固まってから動いてきた。しかし今回は違う。TSNはまだ議論の最中ではあるが、進めることを決断した。TSNをFAとITの融合を実現するため、世界に広めるという覚悟を持ってやっていく」と話す。
さらに「これまでは1つのネットワークでやるメリットを訴求してきたが、ITとの連携、スマート工場になると1つでやるのは無理がある。さまざまなネットワークと融合できるようになるのは世界初の提案。既存のネットワークとTSNをどう結合していくかという提案をしていく」と話している。