CAEの結果を盲目的に信じる《机上エンジニア》の増加
近年のシミュレーション技術の進化は目を見張るものがあります。
10年ほど前まで専門の機関に依頼しないとできなかったことが、30万円も出せば一昔前のスーパーコンピューターに匹敵する性能のPCを購入でき、そのプラットフォームを活用する複雑なソフトも次々に登場しています。
これらのソフトを活用した CAE が今後も必要になるということについて疑いの余地はありません。
CAE活用の弊害
ただし弊害の一つとして、
「CAEに頼りすぎる机上エンジニアが増える」
というものがあります。
現場・現物を確認せずにCAEの結果が全てということで、PC画面上でのみ仕事を完結させる技術者が増えているのです。
この理由の一つは、
「CAEに対して親しみのある若い世代の増加」
です。
今の40代以下は、ほとんどの方が簡単にPCを使用することができます。
当然ながら若い世代ほどこれらの技術に慣れ親しんだ母数が多くなっている印象です。
50代以上の方の中には、「パソコンでいっていることは鵜呑みにできない。実物を確認しよう」
と考える方がまだ多くいらっしゃいますが20代の若手技術者を中心に、
「CAEは現実を把握できている」と盲目的に信じる方が多いという印象です。
そしてもう一つの理由。
それは、
「現場で実物を確認・検証するという作業を面倒と思う若い世代の増加」
というものがあります。
実物を見たとしても観察が雑、中には実物を確認するということを「面倒」と思う若い技術者が多いというのが率直な印象です。
この詳細な理由はわかりませんが、推測の一つとして今考えているのは、
「若手技術者を中心に増える効率重視の思想」というものです。
一見無駄だと思う積み重ねよりも、デジタルとしてスパッと結果が出ることを好む若手技術者が多い傾向があります。
この若い世代の増加により、「CAEを行うというPCを駆動させる動作」が
「評価をやり切った」という業務完結の充実感に直結してしまうようです。
評価を行ったことは事実ですが、「CAEの結果を実物と比較検証する」という最重要ステップが欠落してしまっているのです。
これはものづくりをベースとした製造業においては極めて危険な業務フローといえます。
結果と実物の比較検証をしない若手技術者の対策
この対策として是非実践していただきたいのが、
「数ヶ月単位でものづくりの現場を経験させる」
というものです。
数週間ではいけません。
できれば2、3カ月以上は欲しいところです。
そしてここでさらに重要なのは、
「ものづくりの現場を経験させる前にCAEの技術は磨いておく」
ということです。
CAEの技術も未熟な1年目の社員を送り込んでもあまり意味がありません。
CAEの技術の基礎も理解し、CAEをベースとした業務をこなせるようになる3、4年目がベストです。
このような視野が少し広がった社員に数ヶ月間のものづくり現場を経験させることが、後のCAEを活用した本当のものづくり技術を理解することにつながってきます。
加えて最も重要なのは、
「現場に人脈ができる」
ということにより、後にCAEの結果と照らし合わせながら現場の生の声を聴くことができるようになるのです。
是非実践してみてください。