AIロボットで現場を作業から解放し将来へ備える

AIロボットで現場を作業から解放し将来へ備える

貴社の現場ではロボットや機械設備を使いこなしていますか?

1.従来の産業用ロボットは稼働させるまでに手間がかかる

ロボットや自動搬送機などと組み合わさった生産設備では機械の動きが優先されます。

原則的に、作業者の動きは機械の動きに制約されることが多いです。

こうした人と機械の動きを分析する手法が連合作業分析です。

 

自動機を現場へ導入したとき、機械の動きに人が合さなければならないところが必ず出てきます。

人と機械との干渉は、災害を意味します。安全面には十分に配慮しなければなりません。

また、ロボットの動きを決めるティーチング作業は技能を要し、手間がかかる仕事です。効率性と共に安全性を維持する観点でティーチングはやられます。

 

ロボットを現場で効率良く、安全に稼働させようとすると意外と工数がかかります。

細かい動きの設定は、現場作業者のノウハウに頼っていませんか?

AIを活用した協働ロボットがこうした問題を解決してくれます。

2.AIを活用したRethink Robotics社のロボット

Rodney Brooker氏はロボットとAIに関わる研究の第一人者です。

ロボット掃除機ルンバ(Roomba)の開発者でiRobot社の創業メンバーです。

そのBrooker氏は2008年にRethink Robotics社を創業しています。

 

このRethink Robotics社は2013年に7軸双腕型ロボットを発売しました。

工場で部品の組み付け、加工機への搬送・取り出し、完成品の梱包などの作業が可能です。

可搬質量が2.3㎏のロボットです。

 

また、2015年にはより精密な作業ができる可搬質量4㎏の7軸単腕ロボットを発売しています。

回路基板の検査や0.1mmのクリアランス穴にピンを入れるなどの作業です。

Rethink Robotics社のロボットはAIを活用していて、次の特徴があります。

 

置き方が一定でなく

位置が変化する対象物でも確実に掴み、位置決めして、正しい位置へ置くことができる。

従来の一般的な産業用ロボットでは、プログラミングされた通りにしか対象物を掴み、運び、置くことしかできません。

それに対して、AIを活用することで、状況の変化や想定外の状況に対応して、自律的に動きを修正できるようになります。

 

導入後のプログラミングやティーチングに相当する作業の負荷が軽減される

人がやるのは、ロボットアームの手首や肘を動かしてロボットに作業内容を記憶させることだけ。

ロボットを開梱して、作業を教えて実際に稼働させるまでに、わずか1時間です。

 

ロボットは、学習を繰り返すことで

時間の経過とともに新たなスキルを獲得し、より役に立つロボットへ進化する。

学習機能があるので、人間と同様に、「技能」が向上するということです。

疲れを知らないロボットです。短時間で膨大な学習をこなします。その結果、短時間で熟練作業者になってくれます。

 

ロボットの性能はソフトウェアで決まるので、現場へ導入後も、ソフトウェアを変えれば継続的に進化する

Rethink Robotics社ではソフトウェアプラットフォームを進化させ続けています。

最新のソフトウェアプラットフォームを搭載したロボットは、発売当初と比べて動作速度と精度が2倍以上になっています。

(出典:『日経ものづくり』2016年2月号)

3.AIを活用したロボットを導入するメリット

  • 事前のプログラミンが不要であること
  • 連携させる設備との統合コストを低く抑えられること

これらにより、現場への導入コストを低減できます。

 

ロボット本体の価格は300〜350万円です。

本体価格は、他の産業ロボットと大きな差はないですが、導入コストに大きな差があります。

一般的な産業用ロボットでは、本体購入費用に加えて、その3〜5倍のプログラミングおよび統合コストがかかっています。

 

「産業用のロボットの導入にはトータルで10万ドル程度要するのが一般的だが、それを劇的に安くできる」

(出典:『日経ものづくり』2016年2月号)

とRethink Robotics社では説明しています。

 

さらに、安全性にもさまざまな工夫がなされています。

  • 人の存在を感知すると自動停止する力制限機能
  • 柔らかいプラスチック部品の採用

 

したがって、安全柵は不要となるのです。

作業者と並べて稼働させられます。

従来のロボットと比べて圧倒的に使いやすそうです。

 

  • 現場の変化に適応する学習機能がある
  • ロボットの設置場所に柔軟性がある
  • 導入コストを低く抑えられる

 

中小現場で目指す、付加価値の拡大に寄与することが期待できます。

多品種少量へ適応するため、AIロボットの活用を検討する価値は大いにあります。

 

中小現場こそ、今後は、ロボットを生かすことを考えるべきです。

少子化に対応するためです。AIロボットに単純作業をさせます。

現場を単純作業から解放し、知恵を使ってもらう機会を増やします。

 

マスカスタマイゼーションで高付加価値化を目指す時に必要なのは“知恵”です。

頭に汗をかいて、知恵を絞ってもらう機会を増やします。

前例のない工夫を現場で積み重ねていくことが求められるからです。

 

顧客のニーズは多様化しています。

市場の変化に敏感に対応できる柔軟性、機動性、小回り性の高い製造現場のみが生き残ります。

今後は、変化のサイクルが確実に短くなります。変化に適応するには、スタッフ部門ばかりでなく、現場での“作業”を減らすか“仕事”を増やすかがカギです。

 

どの種の作業なら新たなロボットに任せられるか。

今後必要とされる作業で、ロボットで対応可能なのはどの種の作業か。

ロボットの選定には的確な技術的判断が欠かせません。

 

長期的な視点に立って技術動向を見極めることが大切です。

現場でAIロボットを活用するやり方を、長期的に考える仕組みを作りませんか?

出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)