キャッシュを生み出す工場運営の主役は「人」
1.もうかり続ける工場経営のために考えるべきこと
もうかる工場経営ができていないなぁ、新たな試みも重ねているけど成果にながらないなぁ、という経営者の方々は少なくないと思います。
なぜそうなってしまうのでしょうか?
工場運営は文字通り「工場」を「運営」することです。
「運営」の意味を、改めて辞書で調べてみると、
事業をするために、組織・機構などを動かして、その機能を発揮させること。
(出典:三省堂 新明解国語辞典第4版)
企業が存続・成長に向けて付加価値を生み続けられるよう、キャッシュや人財、それにノウハウと言った経営資源を獲得すること、あるいは、そのような機会を作り出すことが工場の使命です。
(工場がキャッシュを作り出す考え方は、『戦略的な工場運営で「5つの正攻法」を意識する』を参照してください)
そして、それを実現する手段として組織を、人を、動かします。この「動かす」という点に注目です。
工場運営や工場経営の本質は組織であり、人です。人が動いて、初めて組織が動きます。
工場の使命を果たすために、いかに上手く人に働きかけるか。この「人に働きかける行為」が工場運営や工場経営です。
工場運営や工場経営での実務は管理が中心です。
生産に関する分野、原価に関する分野、人財に関する分野等で管理を行います。つまり、生産管理、原価管理、人的資源管理です。
これらの分野の書籍には優れたものが多数あります。学べば、知識は身に付きます。
ただし、現場で活用する場合は、会社や現場の現状に合わせて、これらの体系化された知識や情報をアレンジすることが必要です。
加えて、管理手法を現場へ定着させるには地道で継続的な試行錯誤が不可欠です。
ですから、工場運営や工場経営が上手くいかない原因は、継続的な試行錯誤ができていないことにある……。
その結果、道半ばで頓挫……こうしたケースが多々見られます。
経営者は、新しいことに挑戦しようとする時には、なんらかの目的を持って新たな試みを現場へ導入しようとします。
一方で、新たな試みはめんどうなこと、と現場は考えがちです。新たな試みがなくても、日々の業務を廻すことができるからです。
「これまでも、普通に工場は稼働していたし、別にこんなことやらなくても……」と多くの現場作業者は考えます。
現場の作業者自身が、新たな試みを導入することに意義を感じなければ、そもそも、試行錯誤自体が始まりません。ゴールにたどり着くことはかなり難しくなります。
人は習慣の生き物と言われます。人に関する「慣性の法則」といったところでしょうか。
ゴールを目指すなら、新たな試みの意義を現場と共有する必要があります。現場に狙いや背景を理解させ、試行錯誤を促します。
新たな取り組みですから、現場の頑張りを経営者が評価、フィードバックする必要もあります。そのためには、新たな試みの成否を判断する基準を明示することも重要です。
また、現場リーダーには、経営者の考えを現場へ浸透させるために頑張ってもらう必要があります。
新たな試みは、自分たちの現場をどのような望ましい姿に変える機会なのか、現場リーダーに理解させることも欠かせないでしょう。
これらのことが前提となって、初めて、新たな試みの試行錯誤が促され、仕組みが定着へ向かいます。
2.工場運営や工場経営での主役は人であることを意識する
工場運営や工場経営の主役は人です。人の本質にも配慮することが工場運営や工場経営のカギです。
工場運営や工場経営が上手くいっていないのは、人の本質への配慮が足りないことに原因がある場合が多いです。
人の行動は、頭と心で……ではなくて、心と頭で決まります。心に感じて共感を覚えることで、行動が変わり、頭で考え意思決定して、行動を開始する、という流れ。
つまり、やる気が良い仕事をするための源泉です。理屈のみ伝えても良い仕事へは繋がりません。
経営者からの命令・指示のみに従った仕事では、心の動きが無視されています。当事者は「ヤラサレ感」で一杯です。
このように為された仕事の質は高くなるでしょうか?
工場運営や工場経営のカギは、現場作業者の動機づけです。やる気を引き出す点にあることを、ここで再度、強調しておきます。
生産管理や原価管理の手法やスキルを学ぶことは当然重要です。ただ、これらの知識を現場で生かすためには、やる気を引き出す知恵が前提になります。
3.現場のやる気を引き出すには
では、現場の人財、特に若手人財のやる気を引き出すためには、どう対応するのが効果的でしょうか?
ここに、2015年8月に電通総研から報告された、興味深い調査結果があります。若者の働くことに対する意識を調査したものです。やる気を引き出すヒントになります。
週に3日以上働いている18~29歳の男女3,000名を対象とした結果です。働く目的、モチベーションについて、2つの質問をしています。
(1)「現実」では、あなたが働いている目的・モチベーションの全てを、お知らせください。(複数回答)
(2)「理想」では、あなたが「働くならこの目的のために働いてみたい」と思えるものを、今のお仕事や働き方にとらわれずに、全てお知らせください。(複数回答)
上の表がその結果です。 (出典:2015年8月に電通総研報告書)
現実と理想を比較して興味深い違いに気が付きます。
現実では「生きがいを得るため」が8位だったのが、理想では3位に上昇しています。
さらに、
「自分の才能や能力を発揮するため」
「自分の才能や能力を高めるため」
が10位以内にランクアップしているのも認められます。
「理想」とは、言い換えると、本当は、そのような思いで働きたいけれど、「現実」では果たされていないこと、とも解釈できます。
当然、生活のためのお金は必要です。
ただ、それがある程度満たされたならば、お金以上の「何か」を求めている若手が多い、ということに気が付きます。
理想として、こうしたことを挙げている若手が多いということは、生きがいや、才能や能力を発揮する機会を与えられていない会社や職場が多いということです。
経営者が良かれとしている事が、若手人財にとって実は、そうではなかった、または、そもそも、経営者にそのような視点がこれまで、少々不足していた、ということに、今、気が付いたならば、それは、若手人財の現実と理想を埋めてあげる絶好のチャンスです。
このあたりにやる気を引き出すヒント、知恵を絞るポイントがあります。
まとめ
やる気を引き出す知恵があって初めて、生産管理や原価管理の知識が現場で生きる。