【インタビュー】リンクス村上社長、「IIoT導入」で成果

【インタビュー】リンクス村上社長、「IIoT導入」で成果

自動車 製薬 飲食料品、3業界に特化

製造現場のデータ活用やITとOTの融合には土台となる情報基盤が必要とされ、そのツールとして「SCADA」が注目を集めている。SCADA自体は昔からプロセス産業の情報基盤として使われてきたが、近年は組み立て製造業や三品産業(飲食料品、医薬品、化粧品)などでも採用が広がっている。

世界90カ国以上で導入が広がっているCOPA-DATA社のSCADA「ZENON(ゼノン)」を取り扱い、IIoT(産業向けIoT)の構築に力を注ぐリンクスの村上慶社長に話を聞いた。

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リンクス 村上 慶社長

「SCADA」業界ごとに最適活用

90カ国以上に広がり

–製造業のデジタル化、IoTについてどう見ていますか

リアルの製造現場をバーチャルの世界でそのまま再現し、その情報を自社のビジネスに活用しようというデジタルツインに向かっているのは間違いないが、実際は混沌として思い通りには進んでいない印象だ。そんな中でもキチンとIIoT(産業向けIoT)を導入して、成果を上げている企業がある。そうした企業をもっと増やしていく必要がある。

 

–混沌としている理由とその解決策は?

ひとつは横方向のツールチェーンの充実だ。3DCADやシミュレータといったツールチェーンにより、バーチャルの世界でモノづくりを完結させ、それをリアルに反映するというのは理想であるものの、工場シミュレーション、加工シミュレーションなどなど、様々なツールチェーンが求められ、それらの完成までは今後も多くの時間を要する。

もう一つが縦方向の接続。OTと言われる製造現場の仕組みと、MES(製造実行システム)やERPなどIT領域の連携がスムーズになっていないのがまだまだ現実である。

多くの大手製造業ではMESが導入され、作業計画はコンピュータで作成されている。しかし、その後の作業指示書はドキュメントとして紙で出力され、現場の作業者がそれを元に機械を稼動させ、作業を行っているところがほとんどであろう。データ入力や作業日報も手書きが多く残っている。ITとOTの間に人が介在することで、縦方向のデータの流れが途切れてしまっている。

OTの情報基盤となり、ITとの橋渡しをするのがSCADAだ。欧米やアジアではSCADAは一般的なツールとして導入されているが、日本では普及していない。そこが大きな問題だ。

 

–日本でSCADAが普及しない、欧米で導入が進む理由は?

人はミスをするもので抜け漏れやミスは必ず発生する。いつも作業指示の通りに作業をし、データの入力作業をキチンとするとは限らない。日本人は真面目で仕事をキチンとし、ミスがあっても気づいてカバーする。昔から現場にそういう風土があったので大きな問題にならなかった。

しかし欧米やアジアの現場は違う。長年、人による多くのトラブルに悩まされてきた。そのためデジタル技術を活用して人に依存することを極力減らし、データによる現場の見える化を徹底することで品質の問題を防ぐやり方が標準になっている。その基盤となっているのがSCADAだ。

 

–SCADAは現場のデータ蓄積と見える化ツールの印象が強い

SCADAは集中管理用の表示器(見える化ツール)を起源としているのは確かだが、その中でもzenonはこの10年間でIndustrial IoTソフトウエアプラットフォームへと進化を果たした。データ収集機能、データベース、表示器に加えて、解析機能や作業履歴管理といった付加的な機能を加えることで、IIoTを構築する上で最適なソフトウエアプラットフォームとして位置付けられるようになった。

業界によってSCADAの活用法は異なる。例えば自動車業界は、ラインを止めず効率的に製造し、日々の改善を通じて生産性を磨いていくことが重要となる。SCADAは生産性を高める活動を補助・支援するツールとして活用されている。

ある日本の大手自動車メーカーの生産技術部門では、SCADAに蓄積した現場データから、一週間に生産現場で発生したアラートのトップ10を抽出し、そのデータを元にどこを改善すべきかを決めている。SCADAがPDCAの改善サイクルを早く回すことに役立っている。

欧州の自動車メーカーでは、生産ラインの管理にSCADAとアンドン、数十台のタブレット端末を用意し、不具合情報をすぐに検知して対応できる仕組みを導入している。トラブルが起きると作業員は近くにあるタブレットで不具合と機械の状態、修理方法と必要な工具・部品などの情報を入手し、すぐに修理ができる。初動を早く、動線を減らし、ラインの停止時間の短縮に使われている。

 

一方、製薬業界では近年、米国のFDA(米国医薬品食品局)の基準が厳しくなり、その対策としてSCADAが活用されている。

これまで医薬品工場では自動化・電子化が進んでおらず、作業や検査の履歴は手書きの書類でも信憑性があるものとして扱われた。しかし現実には容易に改ざんされる恐れがあり、FDAは装置の設定値や作業指示等を一元管理し、作業者やPLCに持たせないデータインテグリティ(データが完全で一貫性があり、正確であること)や、製造プロセスのデータによって製品の品質を担保・証明するパラメトリックリリースを重視し、電子記録化を強く求めるようになっている。それに対し、SCADAは生産ラインや人、装置の作業履歴とデータを時系列データと一緒にすべて蓄積でき、FDA等の規制に対応できる現場の情報基盤として活用が進んでいる。

また飲食料品業界での活用法も製薬業界に似ている。多くの工場では人がレシピにのっとって材料を投入し、機械の設定も人が行っている。品質を担保し管理するためには、生産プロセスのデータを集め、正式なレシピのもと、基準を満たして運用されているかをチェックしなければいけない。そうしたケースでSCADAが使われている。

また世界に生産拠点がある企業の場合、日本以外のどの国で作っても同じ味にする必要がある。レシピマネジメントにも有効だ。

他業界への実装も視野

次はクラウドに注力

–データベース、BIツールなどSCADAに似たソフトウェア、システムは多数ある。SCADAの利点は?

データベースやBIツール、データ解析、HMIやフィールド機器などIIoTに必要な要素は、それぞれに単品で製品として出ている。それらを買い集めて自社用のシステムを構築するのも一つの手だが、それらをシームレスにつないで1つのシステムに仕上げるのはとても難しく、開発工数もかかる。機能追加や更新に追加の手間や費用がかかり、結果としてコストパフォーマンスが良くない。

SCADAの場合、IIoTに必要な標準機能はすべて揃っている。そのまま自社に導入すれば使うことができる。また当社の場合、自動車、製薬、飲食料品産業に絞り、それぞれのお客様と業界が求める機能を開発して追加している。それぞれの業界に特化したSCADAとしてIIoTの基盤を構築でき、都度の機能追加などにも対応できるのが強みだ。

 

–今後について

2017年からzenonの取り扱いを開始し、自動車と製薬、飲食料品業界にターゲットを絞り、大手企業に採用されるなど今のところ成果が出ている。これら3業界はIIoTのメリットを出しやすいこともあり、この2年間は集中的に取り組んだが、今後ももちろんこの3業界に注力するものの、並行してより広い業界に対してもIIoTを実装していきたいと考える。

また、これまでのzenonはオンプレが中心。オンプレでは製造現場のデータのすべてを、欠けることなく、セキュアに収集できるようになっている。次はクラウドに力を入れ、フィールドにある大量のデータをセキュアで欠損なく完璧に上げる仕組みづくり、産業用のクラウドに取り組んでいく。

参考:リンクス


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。