【IoT等活用事例】切削加⼯業がクラウド⾒積サービスで新会社を設⽴(⽉井精密)
事例のポイント
- 切削加⼯業がITを活⽤した新事業(クラウド⾒積サービス)を展開
- ⻑年の経験と⼿間を要する⾒積が、誰でも素早く簡単にできる
企業概要
⽉井精密(東京都⼋王⼦市)は、⼩惑星探査機「はやぶさ」に使⽤されるコンピュータボックスを製造する等、技術⼒に強みをもつ精密機械部品の加⼯メーカ。CAD CAMソフトやNC⼯作機械等の情報技術を活⽤した製品加⼯を⾏う。
2015年12⽉、切削業向けウェブクラウド版⾒積ネットワークサービス「Terminal Q」の開発・運営を⾏う株式会社NVTを設⽴。
解決を目指した課題
適切な⾒積作成には、相場感や時期ごとの価格変動、⾒積り依頼をした顧客層等、社内外の状況を経験的に熟知している必要があるため、⻑年の現場経験と経営的な知⾒のある経営者等が対応する必要がある。しかし、1⽇に複数の⾒積依頼が舞い込むと、他の業務ができないという課題があった。
また、同社では、先代から事業承継した2年間は、⼯作機械の操作と同様、⾒積についても暗黙知の承継が困難であり、値頃感が分からず、どんぶり勘定になりがちであった。
課題への対応
きっかけ・経緯
このような⾒積作業に関する課題を解決するために、同社では、⾒積作成のノウハウをデジタル化することで省⼒化し、さらに従業員の誰もが⾒積を作成できる仕組みを作ろうと考えた。
当初は、紹介してもらったIT企業にプロトタイプシステムの開発を依頼したが、費⽤が⼤きくかさみ、上⼿く開発することができなかった。そこで、⾯識のあった⻘⼭学院⼤学の⻑⾕川助教に相談し、ものづくり・商業・サービス新展開⽀援補助⾦も活⽤して、⻑⾕川研究室と連携してシステムの開発を⾏うことになった。
また、システム開発当初は、⾃社内の⾒積作成のみでの利⽤を考えていたシステムであった。しかし、クラウドを利⽤した仕組みであったことから、⾃社だけではなく他社でも使⽤できるシステムであった。そのため、2015年12⽉に新会社(株式会社NVT)を設⽴し、同システムをクラウドサービスとして、同様の課題を有する他の切削加⼯業向けに提供するに⾄った。
▲「Terminal Q」での見積作成画面
具体的な解決手段
同社では、⾒積作成のノウハウをデジタル化(⾒積に必要なすべての要素を係数として設定)することで、⾒積作成を誰もが容易に素早く⾏えるシステム「Terminal Q」を開発した。⾒積作成者が図⾯記載のデータを⼊⼒するだけで、⾃動的に⾒積額を計算する仕組みである。
また同システムは、顧客からの⾒積依頼、担当者による⾒積作成、経営者等による⾒積承認、データの保存等のすべての作業をシステム内で完結する仕組みとして構築した。
▲「TerminalQ」のサービスと利⽤ステップ
メリット・効果
「Terminal Q」を活⽤することにより、経営者等による⾒積作成の負荷が約8割も減少する例もあり、経営者以外の担当者でも、経営者と同程度の品質の⾒積作成が可能になっている。
また、従来は⾒積依頼票等を紙で管理し、FAX等で顧客とやり取りする等、⾒積業務は煩雑なものであったが、⾒積業務全体がシステム内で完結するようになり、効率化が図られた。
さらに、過去の⾒積データが同システムに蓄積されるため、発注者の⾒積り依頼の傾向等を管理・分析でき、⾃社の経営分析や新規顧客創出等の⼀助とすることができると期待している。
出典:経済産業省関東経済産業局「中小ものづくり企業IoT等活用事例集2017」