ICTで日本の稲作を守れ!金沢工大の学生論文が国際会議で採択
若者の情熱×ICT技術が、農業とICTビジネスに新たな風を吹き込む。
金沢工業大学 工学部情報工学科4年生・川上悠太さん(袖研究室/指導教員:袖美樹子准教授らが執筆した、IoTを活用した水田の水位管理と農業従事者の負担軽減手法に関する論文が、制御分野では世界最大の学会である「国際自動制御連盟(IFCA)」の国際カンファレンス「AGRICONTROL 2016に採択された。
稲作では水の水位管理はとても重要な工程で、毎日の見回りが必要とされる。農家にとって大きな負担になり、自動制御が望まれている。川上さんらは、フィールドの水位モニタリング機器と通知システム、クラウドを使った管理アプリケーションを開発し、タブレット等でどこでも水位情報の確認等ができるようにした。
学部生で採択。情報工学科4年生の論文が
IFCA(国際自動制御連盟)の国際カンファレンスで採択。
水田の水位を管理、農業従事者の負担を低減させる手法を提案金沢工業大学 工学部情報工学科4年生・川上悠太さん(袖研究室/指導教員:袖美樹子准教授 専門-グラフ理論、数理計画、半導体デバイス設計)らが執筆した論文が、国際カンファレンス「AGRICONTROL 2016: The 5th IFAC Conference on Sensing, Control and Automation for Agriculture」に採択されました。
この論文は、ICT技術を用いた水田の新しい水位管理システムについてまとめており、人が行っていた水田の見回りや水位調整を自動化する方法について提案するものです。川上さんを中心とする研究室のメンバーは、水田の水位を管理する水位管理システムの制作を実際に行い、今年6月に水田に設置、運用実験を行っています。今回採択された論文は、この運用実験の結果をまとめたものとなります。
研究開発を行った水位管理システムは、水田の水位をセンサで監視し、水位が下がった場合に通知を行うシステムとなっています。研究室のメンバーは水位センサなどを組み込んだモニタリング機器を開発するだけでなく、得られたデータをインターネット上で確認できるクラウド・アプリケーションの開発までを行いました。このシステムを用いることで、農業従事者は、タブレット端末などを用い、どこにいても水位の情報を確認したり、水位低下の通知を受け取ったりすることができます。
また、技術的な課題として、これまで研究室のメンバーが用いてきた近距離無線通信規格「ZigBee」を用いたネットワークでは、大規模農業法人が利用するには、広大な敷地をカバーすることが困難でした。そこで、新たに周波数拡散方式を採用したIot向け通信方式の採用を検討しました。これにより広大な敷地を持つ農業法人でも活用可能となります。市販の一般的な部品を用い、コストの安い無線通信方式を採用することで、開発・運用の大幅なコスト削減に成功しました。
今回の論文の成果は、高齢化が進む稲作業界、稲作の盛んな北陸地方で地方創生に貢献できるものであり、将来的に、安全、安心でおいしい米の生産、国際競争力の強化による農業の収益力向上に貢献することが期待されます。
【開発・研究の背景】
日本における水田の管理は、目視による稲の生育把握、経験や勘などに頼って行われており、科学的な分析に基づいた管理がほとんど行われていません。今回の開発・研究は、ICT技術によりデータを取得し、水田の状況を把握しようとする新しい試みとなります。水田の水位の調整は、稲作管理において重要な要素のひとつです。例えば、稲を植え終えた直後など、まだ根や茎が弱い時期には、稲を守るために水位を高く調整しておく必要があります。また、夜寒くなることが予測される場合など気温の変化が明確なとき、水田の水位を高くし、稲の暖かさを保持させることも必要となります。また、農作業において毎日の見回りは最も手間のかかる部分であり、水位の自動制御が望まれています。研究室のメンバーは、農業従事者の負担低減を目的に、現在、野々市市、白山市の水田に10基ほどの機器を設置し、水位管理の効果を実証実験中です。
袖研究室が行うこの運用実験は、石川県から平成28年度農業収益力向上対策事業費として補助金を頂き、いしかわ農業総合支援機構と有限会社ばんば(石川県白山市)と共同で研究行っています。
引用:金沢工業大学、情報工学科4年生の論文がIFAC(国際自動制御連盟)の国際カンファレンスで採択。水田の水位を管理、農業従事者の負担を低減させる手法を提案