電機組み立て加工業における目標原価の役割
QCD目標を掲げることが製造業全体で大切なこととされています。
これらの目標を達成させるためには目標原価を設定することが重要です。
原価はどこまでも安くすることが可能ですが、品質を下げずに安定した顧客向けの供給数が保てるかどうかのバランスが大きく求められます。
また、目標原価を設定することにどのような役割があるのかを把握しながら、企業内で詳細に設定していくことを追求していきましょう。
1. 電機組み立て加工業の原価企画
電機組み立て加工業では、商品原価をきちんと設定することが必要です。
部品一つの価格、一つの製品を完成させるために必要な日数と労務費の他経費などを見極めることが大切です。
電機組み立て加工を行う工場でも、企画や設計のほか、生産の前準備、製造などの段階に分けて開発を行うことがセオリーといえます。
立案から具体化、設計を経て生産に移るというプロセスの中で、どのくらいお金がかかるか考えていかなければいけません。
設計段階で8〜9割程度の原価が確定していることが求められます。
もちろん立案・具体化・設計それぞれの段階である程度の原価計算を行い、確定させていくことも必要です。
その原価が現実とかけ離れていないか、製品化した際に実際に売れる商品となるのかも同時に見極めていく必要があります。
試算を行ううえで、原価通りに製品を製作することができるか、生産ラインに乗せた際に原価以上の経費をかけてしまうことがないのか、といった内容も確認していきます。
2. 目標利益を踏まえた原価設定をする
電機組み立て加工業において製品開発などを行う場合には、目標原価設定を行う必要があります。
企画をするだけではなく、「この原価を目標にして製品開発を行う」という設定を行うことが基礎となります。
一般的には、市場で決められている販売価格から、企業が決める目標利益を引き算した許容原価額を基に目標原価を決めていきます。
ただし、現状の技術力で導き出せる成行原価というものも存在しており、許容原価額と成行原価額に大きな開きが出ていたら、企画自体が成り立たなくなってしまいます。
また、目標利益を達成するために、どのくらいの数を出荷販売しなければいけないのかなども試算する必要があります。
目標原価の役割とは、会社の利益を導き出すものと覚えておくと良いでしょう。
ただし、競争相手がいない電気機器を製造販売している企業や、同一商品と差別化を図った商品を製造販売しているなどといった場合は、これらの公式に当てはまらない場合があります。
いずれの場合も企画の段階で、きちんと原価額や目標を導き出すことが求められます。
3. 利潤の追求とQCD目標のバランスを考える
「原価+利益=販売価格」という公式があり、企業は利潤を追求しなければいけません。
原価の目標を設定する際には販売価格や利益を考えて企画をすることが求められますが。
利潤を追求するあまりコストをかけずに生産を行うようになるほか、流通・納品のラインができていない、価格の割には品質が伴わないというような、QCDの理念から離れてしまうというミスマッチが生まれてしまいます。
また、利益を度外視し、品質最優先で販売した結果、企業として損失を出してしまったというような結果を引き起こすことも考えられます。
原価目標を定めるときは、利潤を考えることはもちろんのこと、組み立て加工の現場で掲げられるQCDに関することも念頭に入れていくことが必要となります。
品質が良く、コストパフォーマンスも良い、さらに供給のバランスが取れているという理想的な商品販売ができるかどうかも踏まえて製品企画を行います。
企業側の思惑と現場で掲げた理想とのバランスが崩れてしまえば、良い製品を販売することができません。
4. 原価に対する納品までの時間を考える
製品の企画段階から、製造ラインに乗せて流通させるまでどのくらいの時間がかかるのでしょうか。
企画を温め続け試行錯誤を繰り返した結果、満を持して発売に至ったという製品も少なからず存在しています。
問題は製造ラインに乗せてから、一つの製品ができ上がるまでにかかる時間です。
もちろん精密な電気機械ですので、いくつものプロセスを経て完成に至ることは分かります。
何人の人間が関わっているか、どのくらい電気代や水道代、グリスやハンダなどを使用しているかによっても関わってくる経費が変わります。
大きいのは労務費ですが、思った以上に水道代や、部品組み立てに必要なハンダ、潤滑油などといった必要経費がかさんでしまうことも考えられます。
この経費は製品完成までにかかった時間に比例し、時間がかかるほど経費が跳ね上がってしまいます。
販売によって得られた利益だけでは賄えない部分もありますので、こうした時間の短縮なども視野に入れていく必要があります。
生産工場のため業務をすべてアウトソーシングにすることや、部品加工の一部を下請けに依頼するといった考え方を持つことで経費削減を実現させることができるので、検討してみることも大切です。
出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング