電機組み立て加工業におけるQCDの順番と業務の視点
品質重視のQCD
ものづくりの視点にQCDというフレームワークがあります。
Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期のそれぞれの頭文字を取ったものです。
この3要素それぞれにおいて、製造業の現場では、目標を設定して、目標達成のための行動プランも設計されます。
3要素のなかでも特に品質が重視され、コスト面や納期面よりも顧客の信頼を勝ち取るためには品質面が顧客の求めるレベルに達しているのがまず優先されるべき事項となっています。
製造業におけるQCDの現在の状況
製造業においては、中国や東南アジアなどに拠点を設ける企業もあり、国内外問わず、競合他社との激しい価格競争にさらされており、かつ、めぐるしい商品サイクルの変化に適応するために納期厳守で短期間でのスピード納品が求められています。
前述のように顧客の求める質のレベルは最優先事項となっており、そのような状況の中、さらにコスト面と納期面で厳しい条件で求められています。
しかしながら、QCDの3要素はトレードオフの関係にあり、納期優先は品質の低下やコスト増、品質向上の追求はコスト増や納期期間増に繋がる可能性があり、質を担保しつつ、パワーバランスをどう保つかが重要となっています。
QCDには顧客視点でのニーズ把握が必要
QCDを考えるうえで、品質を再優先すべきであることはさきに述べた通りですが、では、品質のみを高めるべく邁進すればいいのでしょうか。
答えはNoです。品質だけに特化するのではなく、顧客が求めている水準を把握したうえで、QCDのバランスを定めること肝要です。
例えば、牛丼チェーンの吉野家では主力商品である牛丼の品質を顧客が満足する品質をうまく把握しています。
昼食や軽食として満足のいく牛丼を低コストかつスピーディーに提供することで顧客のニーズを掴んでいます。
もし吉野家が品質向上のために高コストのブランド牛を用いたり、提供時間を気にせず調理方法にこだわったりしていたら今の繁栄はなかったでしょう。
顧客が品質重視なのか、コスト重視なのか、納期重視なのかをしっかりと見極め、顧客ニーズに沿ったQCDバランスを実現することが重要となります。
進化し続けるQCD
もともとはQCDは製造業において発展してきた考え方ですが、最近では製造業以外の業界でも業務効率化のためにこの考え方が取り入れられてきています。
当の製造業においても、昨今、諸外国を含めた企業間競争が激化する中、従来のQCDのみでは他企業との差別化、付加価値を提供するのが難しくなってきているため、従来のQCD3要素に更に他の要素をプラスした考え方が誕生しつつあります。
QCDSM
QCDに安全:Safety、モラル:Moraleを追加したフレームワークです。
生産現場の安全性を高め、そこで働く作業員の安全を保証することは企業の責務です。
生産現場では素材を加工、組み立ての過程で高温を発する機械や裁断作業や圧搾作業を行う機械などが多くあり、一歩間違えると、大事故につながる可能性が常につきまといます。
したがって事故の可能性がある機材等の扱い方や点検方法・メンテナンス方法を現場の人間がしっかりと認知、理解しておくことが大切です。
認知、理解を高めるためにも重要事項をできる限り簡単な言葉で説明したり、大きな文字や目を引く色を使って、作業現場の目につきやすい場所に張り紙したりしておくなど、工夫をこらすことが大切です。
また、事故を未然に防ぐという観点から、モラルを高める努力も欠かすことができません。
例えば、生産現場で火気厳禁の薬品を取り扱っているような場合、注意しないといけないのは、ライターやマッチの作業現場の持ち込みです。
万が一の事態を引き起こさないためにも、そもそも火を使うような所持品を作業現場へ持ち込ませないようにしなければなりません。
また、定められた場所以外では喫煙させないようにルール作りや環境整備をしておくことも必要になるでしょう。
QCDE
QCDに環境(Environment)を追加したフレームワークです。昨今では環境への配慮を経営の基本方針とする企業が増えています。
中には、環境への配慮を最も重要な課題として捉え、「EQCD」とする企業もあります。
環境への配慮を表明する企業が増えているのは、人間や環境に悪影響を与える原材料の使用や、空気や水質を汚染する製造工程は、企業の社会的責任の観点から許容されるものではないという考えが一般的になりつつあるからです。
二酸化炭素の排出を始めとして、環境への配慮は今後ますます企業に求められる要素となると考えられます。
その他にも重要要素である品質向上させるために製品(Product)にアプローチをかけるQCDP、デザイン(Design)にアプローチをかけたQCDD、サービス(Service)にアプローチをかけるQCDSといった手法もありますQCDは手法の一つであり、いずれにせよ日々変わるビジネス環境の中で現状を見つめながら、ブラッシュアップして、自社にあったものに進化させて行くことが求められています。
出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング