製造業のQCDにおける工数と工程設計の基本

製造業のQCDにおける工数と工程設計の基本

製造業の中でも、日本のものづくりの華ともいえる自動車産業。

完成車メーカーだけでなく、部品メーカーもティア1、ティア2、ティア3……と無数にあり、裾野の広い産業です。

昨今は自動運転技術や安全性の向上、GPSを使った通信ネットワークなど、自動車にもデジタル技術が取り入れられ、ますます複雑さを増しています。

 

複雑化する工程の中で重要になるのが、工数と工数設計の管理です。

今回は、自動車産業を例として、QCD(品質〔Quality〕、コスト〔Cost〕、納期〔Delivery〕)に基づいた工数と工数設計の管理の基本についてお伝えします。

工数設計はコストと利益の関係を明らかにするための重要作業

工数設計とは、簡単に言えばモノの作り方を設計することです。

主に、大量生産を行う製造業で取り入れられてきたやり方です。

モノを作るのに必要な手順、材料、設備、時間、人員数を割り出し、工数設計書にまとめます。

 

作業を細分化し、一定の拘束条件で作業を構成し、作業量を積み上げていくことで、アウトプットの数値として工数が求められます。

工数とは、作業量を表す概念、数量のことで、時間×人数で求められます。

工数に決められた係数をかけることで、その作業にかかる労務費を求めることができます。

 

工数設計を行うことで、その製品への投資額や原価、利益率が見える化されます。

コストと利益の関係を明らかにするための、極めて大切な作業です。

工数設計と工数が生まれたのは19世紀以降

現在の工数設計における標準工数の設定に似た手法は、19世紀のアメリカでフレデリック・W・テイラーによって提唱されました。

製品ごとの原価をあらかじめ決定するという、現代の製造業で幅広く取り入れられている手法です。

20世紀に入り、アメリカの自動車メーカー・フォードは、自動車の組み立て生産にベルトコンベアを使ったライン生産方式を取り入れました。

 

フォード生産システムとも呼ばれるこの手法の登場で、自動車の生産は飛躍的に効率化し、大量生産が可能になりました。

「工数」という概念を取り入れたのは、フォード社の創立者ヘンリー・フォードだといわれています。

日本語で「工数」という概念が理解されるようになったのは、明治時代です。

 

明治の実業家・渋沢栄一の指示の下、工業化を進めるためにイギリス留学をしていた山辺丈夫ら留学経験者が持ち帰った知識をもとに、「工数」のほか、「生産」「技術」「作業」「検査」「経営」といった言葉が生み出されました。

戦時中は船舶製造業界の隆盛のもとでフォード式の生産システムが取り入れられるようになり、製造業の効率化が進められ、戦後の高度経済成長期へと続きます。

工数はコストに直結していく

工数には2種類があり、図面指示のみを抽出し、ある一定のルールで時間に変換したものを理論工数といいます。

これに工程上必要な作業時間、投資の制約から生じる不能率時間、労使協定で決められた休憩時間などを加えた工数を標準工数といいます。

工数の管理がなぜ大事なのかというと、ほとんどの場合、工数はコストに直結していくからです。

 

工数に基づき算出される作業費(人件費)が原価の多くを占め、旅費、光熱費、間接的人件費など、作業費以外のコストの多くも作業費と相関関係を持ちます。

製造業でプロジェクトを管理する場合の観点となるのは、QCDです。

つまり、工数が増えるとそれだけQCDの各要素のなかでトレードオフの関係が生まれます。

 

例えば、品質を実現するために工数を増やした場合、コストと納期が圧迫されます。

納期やコストを優先して工数を設定すると、品質がおろそかになるかもしれません。

製造業にとってQCDは柱となるべきものです。

 

各企業では、品質管理部門・生産技術部門・製造部門を置き、各部門はQCDの達成に向けた責任を果たしています。

自動車産業のように多くの関連産業がかかわる製品の場合、一カ所での納期遅れやコスト、品質管理の不全などが、サプライチェーン全体に大きく響いてきます。

そのため、見積もり段階での工数把握が大切になってくるのです。

モノが売れない時代のQCD

自動車業界でQCDが重視されるようになったのは、1970年代以降です。

高度経済成長期~バブル期にかけて、自動車を筆頭にモノがどんどん売れた時代には、企業は生産しても生産しても在庫が追い付かないといううれしい悲鳴を上げていました。

品質のよいものを適切なコストで製造するだけでなく、適切な在庫を適切に納めるために納期管理の徹底も叫ばれるようになりました。

 

一方で、現代はどうでしょうか。

バブルのころとは対照的に、日本の国内市場は縮小し、経済は停滞してモノを作っても売れない時代です。

企業はコストを削減し、少しでも利益を上げるためにますますQCD、とくにコストとデリバリーの部分を重視するようになるでしょう。

まとめ

以上、QCDに基づいた工数と工数設計の管理の基本について説明しました。

工数と工数設計はQCDの実現に密接に結び付く重要な考え方だということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング


20年以上のサポート経験から培ったスキル・ノウハウを基に、富士通マーケティングの先進の製造業サポート推進チームが、日本の製造業の動向や現状の課題を紹介していきます。 基本のQCDや環境、安全など、毎週、旬なトピックスを展開します。