5Gで民主化する無線通信
この数年「民主化」という言葉が流行している。と言っても政治や国家体制の話ではなく、テクノロジーの分野でだ。その典型的なものがAIとロボットだ。
例えばAIは、これまではAI研究者や技術者などAIにたけた人でなければAIを作れない、使えないものだったが、最近ではデータを投入するだけで自分なりのAIができたり、ソフトウエアにもともとAIが組み込まれている製品が市場に出回っている。
ロボットについても、協働ロボットが登場したことによって導入や活用のハードルが一気に下がった。実際に使いこなして効果を上げられるかどうかは別として、誰でも手に入れて使える環境ができたのは確かだ。
最新の民主化と言えば「5G」もそうだ。高速・大容量・低遅延・多端末同時接続を特徴とし、IoTに適していて、まさにデジタル時代にピッタリの無線通信だと言われているが、それはイコール民主化ではない。民主化というのは「ローカル5G」の話だ。
これまでの通信は、基本的にはNTTドコモ等の通信事業者が全国で展開する均一なものだったが、ローカル5Gは地域の企業や自治体等が免許を取得してエリアを限定して基地局を設置して電波を出すことができる。
通信品質や性能も事業者の好きに設定でき、例えば超高精細映像を送りたい場合は高速大容量に寄せた通信にでき、IoT等であれば同時接続性を高めたりなど。極論すれば、免許さえ取得すれば誰でも自分の好きな電波を調整して出せるようになる。巨額の投資や免許制など一定の制限はあるが、大きな一歩なのは間違いない。
民主化の良いところは、広くオープンになることでユーザーも開発者も増え、その技術の可能性が広がること。ひいては市場とビジネス拡大となって返ってくる。
民主化前の独占的に扱っていた人たちからすれば、開放されたことで表面上の既得権益は失うのは確かだが、逆に先行者メリットと技術的蓄積は残る。それを生かして、拡大する市場の波に乗り、ビジネスを大きくするチャンスにもなる。
5Gは最近の民主化における一番大きくてインパクトのあるものだが、目を凝らすと、今は色んな分野で小さな民主化がたくさん生まれている。民主化は、既存企業にとっても新規に取り組む企業にとってもチャンス。特定の人しかできない領域こそチャンスの塊である。