2020年度 機械工業生産見通し、13.1%減の63兆円 リーマンに続く衝撃
半導体関連好調も自動車復活がカギ
2020年、日本の機械産業は新型コロナウイルスの感染拡大で大打撃を受けた。上期はサプライチェーンの分断や緊急事態宣言による工場の稼働率低下、需要の低迷で自動車や工作機械等を中心に大苦戦した。下期は回復の兆しが見えてきているが、上期のロスを取り戻すほどの勢いは出てきていない。
日本機械工業連合会によると、2020年度の機械工業生産は前年度比13.1%減の63兆2441億円になる見通し。リーマンショック翌年(61兆円)以上、東日本大震災翌年(65兆円)未満の数字となる。
■鋳鍛造品
自動車、産業機械など不調響く
鋳鍛造品は19.6%減の2兆1049億円の見通し。
粉末冶金製品は14.1%減。鍛工品は自動車、産業機械、土木建設機械向け等の減少を見込んで21.8%減。銑鉄鋳物は、電気機械、輸送機械向け等のいずれも減少を見込み、18.7%減。可鍛鋳鉄・精密鋳造品は、5.6%減。非鉄金属鋳物は、22.9%減。ダイカストは、20.0%減少の見通しとなっている。
■精密機械
11.4%減の1兆2864億円
精密機械は、11.4%減の1兆2864億円となる見通し。
計測機器は全体で7.9%減。計量機器が国内外共に減少を見込んで11.7%減。光学・精密測定機は受注の停滞による減少を見込み26.5%減。分析機器は一般検査需要の減少による機器需要の減少を見込み2.0%減、測量機器は輸出が厳しく14.4%減となっている。
光学機械は全体で19.8%減少の見通し。写真機が11.2%減、望遠鏡・顕微鏡は生物顕微鏡、工業用顕微鏡、実体顕微鏡、教育用顕微鏡のいずれも減少が見込まれ、16.3%減。
■電子部品・デバイス
デジタル化でニーズ高まる
電子部品・デバイスは、2.2%減の6兆2004億円となる見通し。
データトラフィックの急増によるデータセンターの拡張や増強へのニーズの高まり、小型・薄型・省エネルギーに貢献する高信頼性電子部品や半導体に対するニーズの増加や、5Gやローカル5G対応の進展による新たな需要喚起も期待できるものの、先行きの不透明感があり、電子部品は0.5%増加、電子デバイスは4.2%減少となる見込み。
■一般機械
半導体&FPDが増加
一般機械は、10.6%減の13兆5580億円の見通し。
半導体製造装置とFPD製造装置は、軒並み減少のなかで唯一の増加。データトラフィックの急増によってデータセンターや5G等、IT機器向けの需要増によって6.7%増加の見込みとなっている。
自動化設備等で使われる空圧機器とロボットは健闘。空圧機器は中国向けが回復して増加の見込み。ロボットは中国向けや半導体関連向けは回復しているものの、国内外共に投資の先送りや自動車向けの低調が続くと5.3%減となる。
また人手不足の深刻化や、中食、ECといった時流にのった食料品加工機械と包装機器・荷造機械もマイナス幅を最小限にとどめている。食料品加工機械は、乳製品加工、飲料加工等業界向け等が微増、製パン・製菓、醸造用業界向け等で減少となり、全体で4.5%減。包装機械・荷造機械は、国内が物流業界向け等の設備投資に期待できるが、上期に輸出が減少して2.6%減となる見通し。
ボイラー・タービンは伸びずに13.0%減。ポンプ・送風機・圧縮機は、官公庁向けと中国向け需要が下支えしたが民需のマイナスが響き15.0%減。動力伝導装置は、変速機が変速機と歯車は減少、スチールチェーンは下期に中国向けの回復が期待できるが、伝動用、搬送用、自動車用等いずれも減少を見込み、全体で19.6%減。冷凍機・同応用装置は、エアコンの反動減や輸出の減少を見込み、全体で9.3%減。
土木建設機械は、国内は公共投資の下支えがあるが民需が厳しく減少、輸出は欧米、アジア向けのいずれも厳しく、15.1%減。農業用機械器具は、国内が消費税増税前の駆け込み需要の反動による減少が続き、輸出は欧州向けで減少を見込み、全体で10.0%減。
合成樹脂加工機械は、輸出が中国向けで回復基調にあるものの、上期は大幅減、受注も厳しさが続いており、30.0%減。金属工作機械は、国内外共に自動化、省力化のニーズは高いものの、上期に大幅に落ち込み、需要は底打ちしたものの、多くの需要先で設備投資の様子見が続くと見込み、33.4%減。第二次金属加工機械は、機械プレス、液圧プレス等がいずれも大幅な減少を見込み、27.5%減。
繊維機械は23.5%減。ミシンは31.7%減。木材加工機械は30.5%減。印刷・製本・紙工機械は、国内は物流向けが堅調だが、国内外共に設備投資の落ち込みや、需要の先送りにより21.8%減となる見通し。
■情報通信機械
5G、テレワーク需要に期待
情報通信機械は、9.6%減の2兆7844億円となる見通し。
民生用電子機器は、薄型テレビ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、カーナビゲーションシステムが大幅に減少し、全体では25.8%減。
通信機器は全体で8.4%減。有線通信機器のうち有線端末機器が個人やビジネス関連向けで減少を見込むが、5G通信の商用化やテレワークの普及等によるネットワークトラフィックの増加により搬送装置が好調。ネットワーク接続機器は海外製品との競争激化による単価下落等により減少、有線部品は多機能携帯電話の生産減による減少を見込み、一方、無線通信機器は多機能携帯電話の減少が見込まれている。
電子計算機および関連装置は、記憶装置、モニタが減少、プリンタは増加、パソコンはテレワーク等のリモート化によるモバイルノート型の需要があるものの、旧OSサポート終了に伴う買替需要増の反動減により微減を見込み、全体で4.4%減少の見通しとなっている。
ロボットのキーパーツとなるサーボモータ
■電気機械
サーボモータが好調
電気機械は3.2%減の7兆3926億円の見通し。
回転電気機械・静止電気機械器具・開閉制御装置は全体で1.8%増。
回転電気機械のうち交流電動機は国内設備投資向けの回復を見込み増加、サーボモータも半導体や電子部品関連向けで増加を見込む。静止電気機械器具のうち電力変換装置は、太陽光発電向けパワーコンディショナが輸出向けを中心に回復を見込み、サーボアンプは半導体や電子部品関連向けの回復で増加を予測している。
開閉制御装置のうち閉鎖形配電装置は引き続き首都圏再開発で増加。低圧開閉器・制御機器のうちプログラマブルコントローラが中国を中心とするアジア向けで減少、電磁開閉器や電磁リレーは国内向けで回復を見込み、監視制御装置は国内製造業向けが減少を見込んでいる。
民生用電気機械は、大容量、高機能、高付加価値製品を主体に比較的堅調なものの、高水準な生産が続いてきたことから、本年度は減少を見込んで2.7%減となる。
電球は、建設や設備改修向けの減少や、引き続き生産拠点の海外シフトや光源一体形LED照明器具の普及の影響を受け、28.5%減。電気計測器は、電気計器、電気測定器、工業用計測制御機器、放射線計測機器、環境計測器のいずれも減少し、全体で7.0%減少の見通しとなっている。
■輸送機械
自動車が大ブレーキ
輸送機械は18.7%減の27兆2781億円となる見通し。
自動車は、上期が国内外共に大幅減、下期は中国向けの輸出、安全装備の拡充や環境対策、買替需要等による回復を見込むものの、自動車全体では17.7%減。
自動車部品は、自動車生産台数が上期の減少により部品も大幅に減少し、下期は回復を見込むものの、20.1%減。
産業車両は、国内が物流施設等での効率化による需要増が期待できるものの、主力のフォークリフトトラックの回復が遅れ、輸出も厳しく、全体では13.0%減。
鋼船は、受注残の減少により、操業を落としており、14.2%減。
航空機は、航空輸送需要減が続き、官需が多くを占める機体は微減、発動機は増加するものの、民需が多くを占める機体部品および発動機部品、装備品のうちの民需が大幅に減少し、全体では31.9%減少の見通しとなる。
■金属製品
半導体向けでバルブ・継手増
情報通信機械は、9.6%減の2兆7844億円となる見通し。
民生用電子機器は、薄型テレビ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、カーナビゲーションシステムが大幅に減少し、全体では25.8%減。
通信機器は全体で8.4%減。有線通信機器のうち有線端末機器が個人やビジネス関連向けで減少を見込むが、5G通信の商用化やテレワークの普及等によるネットワークトラフィックの増加により搬送装置が好調。ネットワーク接続機器は海外製品との競争激化による単価下落等により減少、有線部品は多機能携帯電話の生産減による減少を見込み、一方、無線通信機器は多機能携帯電話の減少が見込まれている。
電子計算機および関連装置は、記憶装置、モニタが減少、プリンタは増加、パソコンはテレワーク等のリモート化によるモバイルノート型の需要があるものの、旧OSサポート終了に伴う買替需要増の反動減により微減を見込み、全体で4.4%減少の見通しとなっている。