2017年「ものづくり白書」発行 日本「付加価値の創出・最大化と現場力...

2017年「ものづくり白書」発行 日本「付加価値の創出・最大化と現場力の維持向上 」に課題

 政府は、「2017年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術の振興施策)」を発表した。日本の製造業の課題は「付加価値の創出・最大化」と「人材不足が顕在化する中での現場力の維持・向上」とし、これらの解決にはIoTなどのデジタルツールの積極活用が鍵を握ると示唆。その先行事例としてデジタルツールの利活用事例を約90件掲載している。

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日本の製造業の現状と課題

 白書では、日本の製造業の現状について、業績は足踏み状態で悪くなく、先行き不透明感はあるが、今後3年間については明るい見通し。設備投資については今年度並みで推移する見通し。人材の確保は大きな課題。特に現場力の維持・強化を図る上でも、技能人材が必要だが、確保が難しくなっている。対策として、現状は定年延長等でベテラン人材の活用がなされているが、今後はITやロボットなどに移っていく。

 製造現場でのデータ収集について、データを収集している企業は昨年から26%増加。具体的な用途活用まではいたっていないが、関心は高まっている。それを主導しているのは現場であり、生産現場の合理化などボトムアップが中心。経営戦略的観点から行われていない可能性が高く、ビジネスモデル変革など新たな付加価値の創出にはつながらないことが懸念点。日本の製造業の課題は低収益性にあり、その解決につながらない恐れも。

 しかしながら、付加価値の創出・最大化にはデータとIoTの利活用は有効である。収益性の高い企業はこれに積極的で現場力を向上につなげている。さらに、IoT活用や顧客起点からの組織見直し、外部資源の活用にも積極的な状況がある。

第4次産業革命に向けた取り組みと先進事例

 第4次産業革命にどう対応していくか?白書では産業タイプを、エンドユーザーとの距離と製造工程(物性)を軸に、「最終製品」「部品・部材」「素材」「設備」の4つに分類。それぞれの事例を紹介している。

 最終製品では三浦工業のボイラーの故障予知サービス、マツダの車体設計におけるモデルベース開発の事例、部品・部材では金型メーカーが金型にセンサを取り付けて予知保全や技能伝承につなげた事例や金型の共同受注サービスなど。

素材では鉄筋にセンサを取り付けて構造物の保守に使う事例や、導電繊維を使った伝統繊維産業の例、設備関係ではジェイテクトのスマート工場化の事例を取り上げている。

製造業の変革の方向性

 これまでの製造業が技術中心の製品開発だった反省を受け、これから価値を創出し最大化するため、考え方の転換が必要となる。顧客ニーズを重視し、コンセプトから最適な製品やサービスを生み出すための「デザイン思考」と、全体俯瞰と構成要素のつながりを意識する「システム思考」を備えた高度人材の育成が急務。

 また、日々変化する顧客ニーズに応えるためには俊敏な(アジャイル)な経営が重要となる。その手段として外部パートナーの積極活用が有効だが、現状はそれができているのは、まだ3割程度。M&Aやベンチャー企業との協業などが大切になっている。その事例として栗田工業のM&Aや、産業用ロボット向けソフトウェア開発のリンクウィズ、ウェアラブルデバイス開発のゼノマなど斬新な技術を持つベンチャー企業が紹介されている。

 一方で、強い現場力の維持・向上は引き続き課題であり、作業をITやロボットにまかせて付加価値の高い仕事に人材を転換した例や現場改善の加速した企業を紹介。熟練技術をマニュアル化とデータベース化によって継承を実現したケースも取り上げている。

経産省HPから誰でもダウンロード可能

 ものづくり白書は、「ものづくり基盤技術振興基本法」の第8条に基づいて、政府がものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策に関して毎年発行している報告書。経済産業省と厚生労働省、文部科学省の3省共同で作成作業を行った。白書は2部で構成。第1部は「ものづくり基盤技術の現状と課題」とし、日本の製造業の現状を分析し、第2部は「平成28年度においてものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策」とし、昨年度に行った施策を報告している。すべて同省ホームページで公開しており、誰でもダウンロードして読むことができる。

参考:経産省、2017年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。