[中国ロボット市場インタビュー]安川電機、現地に根付き事業好調

[中国ロボット市場インタビュー]安川電機、現地に根付き事業好調

安川電機の中国市場での動きが順調だ。中国のGDP成長率が6.5%にとどまり、成長の鈍化が懸念されるなか、同社は計画をクリアし好調をキープしている。

11月初旬に上海で行われた上海国際工業展の会場で、安川電機(中国)経営企画本部の松丸裕史事業企画部長に話を聞いた。

安川松丸様DSCN0238

——日本に比べるととても大きな展示会だ。
上海国際工業展は、ロボットや制御機器をはじめ、いろいろな展示会が集まって構成されている。当社は今年ロボット展に出展している。

ロボット展は年々出展社が増え、規模も大きくなっている。展示スペースは昨年の約2倍だ。日系メーカーのブースも1200平方メートルや800平方メートルと巨大化している。

 

——中国でのブース構成や展示製品は日本とは違うのか?
日本と同じことはやらないことを心がけている。中国の展示会では面白さや楽しさによって多くの人を呼ぶことが大事。中国の人に興味を持ってもらえるデモ機を現地のスタッフが作っている。

例えば、今年のメインステージのデモは、ロボットによる龍の舞を行った。大きな音と光、ステージで動く龍とロボットで目を引くことによって、来場者はスマホで動画を撮り、それをSNSに上げて拡散してくれる。こうしたブランディングも大切だ。

安川電機

——他にはどんな展示デモを行っているのか?
今回はブース来場者に受付でボールペンを配っているが、それだけでは面白くないので、ロボットでそのボールペンに名入れをするデモを行っている。

来場者が紙に自分の名前を書き、係員がそれをコンピュータに読み込ませると、すぐにロボットが動き出してレーザーマーキングで手書きの文字をボールペンに印字する。オリジナルのノベルティとして喜ばれ、さらにロボットのアプリケーションも理解してもらえて一石二鳥だ。

名入れロボットの隣にはボールペンの組み立てロボットを設置し、来場者配布用のボールペンをその場で作っている。細くて小さな部品の組み合わせを見せることによって正確な位置決め、トルク制御などをアピールしている。

また、クレーンを模したUFOキャッチャーも人気だ。お客さんがクレーンを操作して箱に入った景品を掴めたら、その景品をプレゼントしている。中国のクレーンには当社のインバータが数多く使われている。それをイメージした。

中国の人は体験型のデモが大好きだ。モノがもらえることに大変喜び、昨年の体験型のデモ展示も多くの人が並んでくれた。

DSCN0339安川ペン DSCN0346安川クレーン

——今年の中国市場の景気はどうですか?
GDPが6.5%に止まり、全体的に市場は伸びていないが、当社に限って言えば計画をクリアし順調だ。特に中国製造2025で国を挙げて力を入れているハイテク産業向けが良い。

いま中国では1600CC以下の自動車が減税対象になっていて、そのクラスの自動車がとても売れている。自動車メーカーは増産の勢いで、それに応じてロボットの受注も多い。

また中小企業にもロボット化が広がっている。ロボットを導入すると補助金が出ることもあり、ハンドリングと、自動車向け以外の溶接や塗装用が盛んだ。ロボット導入が中小企業のステータスになっていることもあり、「見栄を張らいたい」という中国ならでは需要もある。

中国市場では、当社とABB、KUKA、ファナックでシェアの75%を占めている。残りの25%を新松やEFFORTなどの中国メーカーが争っている。

 

——サーボモーターはいかがですか?
ロボット向けに性能の良いモーターに対する需要が多く、順調だ。

中国製造2025では液晶や半導体市場が注力業界になっている。今後それらの製造装置向けに大きな需要が見込まれ、3軸や4軸の装置に対してサーボモーターを使ってもらえると思う。

また彫刻機や中級の工作機械ではボールネジを使っているところが多く、そのあたりも狙っていきたい。

 

——中国でビジネスをしていて感じる日本との違いなど
中国では社長の鶴の一声ですべてが決まり、トップダウンで話が早い。30代40代の創業者が多く、若くて決断力を感じる。

逆に日本は稟議を回す手間などで遅さを感じる。ただ中国人はスピードが早いが雑な部分がある。すべてを彼らに任せることもできないので、そこは日本とうまくバランスをとっていくことが肝要だ。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。