高島ロボットマーケティング、1日~レンタルOK、協働ロボットレンタルサ...

高島ロボットマーケティング、1日~レンタルOK、協働ロボットレンタルサービス

安く、早く、手軽に借りる

深刻な人手不足と採用難に直面している地方の中小企業にとってロボットに対する期待は大きい。しかし本体が高額な上、作業できるようにシステム化するには専門技術とさらなる費用が必要となり、なかなか導入が進んでいない。一部でレンタルサービスもあるが、購入前提のテストレンタルのような意味合いが強く、レンタルDVDやレンタカーのような手軽で安い形にはほど遠い。

それに対し高島ロボットマーケティング(東京都千代田区、中才悦夫代表取締役社長)は、地方の中小企業でも、手軽に安く、条件を満たせば1日からでも協働ロボットを借りることができるレンタルサービスを開始。あるようでなかった、ロボットレンタルサービスとして注目を集めている。

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中才悦夫 代表取締役社長

 

地方の中小企業の人手不足を解決したい

同社は建材や産業資材の大手商社、東証一部上場の高島株式会社の新規事業として2018年から協働ロボットのレンタル事業をスタート。地方の中小規模の工場をターゲットとし、彼らの人手不足を解消することを目的として開始した。

中才氏は「地方の中小企業は高齢化が進む一方、新たな人材採用が難しく、人手不足で困っている企業がたくさんある。高島は104年の歴史があり、顧客には工場を持つ産業系のお客様も多い。ロボットは成長が見込まれ、市場規模も大きい。特に協働ロボットは伸びると言われ、成長性も十分にある。ロボットレンタルは、高島の事業と親和性が高く、シナジーが出せると思ってスタートした」という。

 

最短1日~OK レンタルのためのレンタル

サービスは「協働ロボットのレンタル」。最短1日の短期間から、低コストで、簡単に借りることができるのが最大の特長。これまで現場にロボットを導入しようとしたら、ロボットを買うか、すでにあるレンタルサービスを使うかの2択しかなかった。同社のレンタルサービスは、それまでとはまったく異なるコンセプトで、より幅広い人々に使ってもらえるようになっている。

ロボットを購入して使う場合、産業用ロボットを仕事ができる状態にするためにロボットシステムインテグレーターにロボットシステムを組んでもらう必要がある。それだと価格は最低でも1000万円~。協働ロボットの場合、シンプルなシステム構成で、ティーチングも自らの手で簡単にできると言ってもロボット本体が高く、最低で数百万円~かかる。中小企業にとっては大きな出費となり、導入へのハードルは高めだ。

すでにあるロボットレンタルサービスの場合、その多くは導入の事前検討のためのレンタルであることがほとんど。ロボットを自社で使ってみたいがいきなり購入するのは不安であり、実際に使えるかどうかを試したいというニーズに対して行っている。その場合、レンタル期間は最低でも3カ月程度からで、必要な時に、必要な期間だけ使えるというレンタルとは程遠い。

 

それに対し同社のサービスは、あくまで「レンタルのためのレンタルサービス」。レンタル期間は最短で1日~OK。費用も1カ月で10万円台~と安め。DVDレンタルやレンタカーのように気軽に、安く使えるようになっている。

「当社はレンタルを大前提としたビジネスモデルで、いかに1台のロボットの貸し出し回転率を上げるかが勝負。販売のためのレンタル事業とはここが異なり、だからレンタル期間は短期間でもOKとしている」(中才氏)

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申込みはWEBから手軽に。サポート体制も万全

申し込みから実際に使うまでの仕組みについて、WEBを最大限に活用しシンプルで手軽に利用が可能。WEBや電話を通じて問い合わせを行ったら、専任の担当者と相談してサイトで会員登録。同社側で取引不可の審査を行い、承認され支払いが済んだら、あとは手元にロボットが届くのを待つだけ。一回会員登録を済ませたら、2回目以降はWEBで申し込むだけで使うことができる。

中才氏は「気軽に使ってもらい、回転率を高めるためには、申し込みから利用までのフローも大切だ。既存のレンタルサービスは、その都度の契約で、毎回契約書を取り交わす必要があるケースが多く、手間がかかる。当社の場合、会員登録と同時に取引不可審査を行うので、いったん会員になったらそれ以降はすぐに提供できる」という。

また中小企業ではロボットを初めて使うというケースが多く、レンタルとは言えど使うのが不安という声は多い。そのため同社はシステムインテグレータと協力して技術的なサポート体制を構築。同社が申し込みから相談の窓口となり、実際の技術サポートや相談は必要に応じて外部SIとも連携するので安心して使うことができる。

すでに本州と九州はカバーし、「早い段階でサポート体制を全国規模に広げていきたい」としている。

 

大手企業やベンチャー企業が利用を先行

地方の中小企業向けに始めたサービスではあったが、現在の主要顧客は、新しいサービスを積極的に試してみようという大企業と成長著しいベンチャー企業。大企業の場合、一時的に労働力を借りられる合理性を評価して使うことが多く、ベンチャー企業の場合、時間短縮や作業効率を上げるためにロボットを活用するケースが多いという。また、短期間のレンタルを活かし、展示会やイベント時のみ使いたいという問い合わせも増えている。

例えば、次世代型の電動車椅子を開発しているWHILLでは、特別な耐久試験の時だけロボットをレンタルし、これまでエンジニアが行っていた数千回、数万回の単純な繰り返し作業をロボット化。これによって最小のコストでエンジニアのリソースを開発に費やせるようになった。

またエスイーフォーでは、遠隔操作技術の開発にロボットレンタルを活用。VR上の仮想空間を通じ、月や火星のような通信遅延が発生する環境でも動作可能なロボットの遠隔操作技術の開発のためにロボットを使っているという。

「人の代替は工場だけに限らず、ロボットをうまく活用しようという人は色々な業界や分野に広がっている。特にベンチャー企業やスタートアップでは、ロボットの用途開発を行い、そのサービス化を狙っている開発者が多い。現在はそうした嗅覚が鋭く、積極的な人々が当社を活用してくれている。しかし地方の中小企業の工場が人手不足で困っているのは確か。サービスをより洗練させ、もっと広げていきたい」(中才氏)

 

アプリケーションパッケージを開発中

現在はロボットと必要な周辺機器をレンタルし、現場で自ら使ってくださいというスタイル。使う技術がある人、積極的に使おうとする人にとっては良いが、そういう人材がいない企業にとってはロボット活用のハードルはまだ高め。今後それを下げて、地方の中小企業でももっと手軽に使えるようにするため、アプリケーションごとにロボットと周辺機器、ソフトウェアをまとめてパッケージ化したものをレンタルするサービスを開発中。加工機へのワークの投入・取り出し作業のマシンテンディングをはじめ、複数の種類を予定している。

「お客様が欲しいのはロボットではなく、アプリケーションや自動化とその結果。それに向けたものとして、ロボットが分からなくても使うことができるアプリケーションパッケージを開発し、提供を予定している。自分でティーチングをすればSIにかかる費用がいらず、より低コストで使うことができる」

 

より多くの企業がロボットを手軽に活用できる世界へ

中才氏の前職はFA・金型部品や製造現場で使う工具、消耗品のカタログ・WEB通販大手のミスミ。それまで難しいと言われていたコンベアの通販を成功させるなどの実績を残してきた。今回もその経験を活かし、ロボットの販売プロセスをシンプルにし、より多くの企業がロボットを活用できる世界を目指す。

これまでロボットは顧客の要望に対してシステムインテグレータがすべてカスタムでシステムを作って提供してきた。だから価格が高く、納期も長めで、資金力など余裕がある大企業がロボット活用の中心となってきた。しかし今後必要なのは、特に情報や流通、人材等で不利な地方にある中小企業でも使える汎用的なサービスだ。

同社はそれを「誰でも簡単に操作でき、現場への設置も容易な協働ロボット」と「1日から借りられるレンタルサービス」で具現化し、さらにある程度まで標準化し、半完成品の状態まで作り込んだ「アプリケーションパッケージ」によって一層ハードルを下げようとしている。まさに、カスタム部品が当たり前だったメカ部品をカタログ化・標準化し、その上、それをWEBだけで発注できるようにしたミスミが辿ってきた道を、ロボットで再現しようとしている。

 

中才氏は「多品種少量生産の時代になり、企業が専用の自動機を持ちにくい時代になっている。だからといって人を雇うのも大変で、特に中小企業は難しさに直面している。これからは短期で人を雇うのではなく、必要な時にだけ協働ロボットを使うことで忙しさの波を吸収する。当社のレンタルサービスが、労働力が欲しい企業と労働力をつなぐハブとなっていきたい。

さらに今後について「せっかく頑張って仕事をとってきても人を雇えずに休日返上で働く姿や、人が雇えずに潰れてしまった企業など、地方の中小企業が人手が足りなくて困っている生々しい姿をいくつも見てきた。企業がなくなると、その地域も過疎化し、良いことはない。それを救いたいというのがこのサービスの出発点だ。労働力不足を協働ロボットのレンタルで救える部分はあるだろう。もっとサービスを充実し、広めて、地方産業の活性化につなげていきたい」と話している。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。