電機組み立て加工業におけるQCDの考え方と意識
電機組み立て加工業とQCD
電機組み立て加工業とは製造業の一分野で、原材料と部品の加工との組合せによって各種機械や電機・電子機器を製造する業態を指します。
身近な例でいえば、家電や自動車の製造が電機組み立て加工業にあたります。
製造業においてはQCDを意識した生産管理が重要となりますが、製造業の一分野である電機組み立て加工業においてもQCDが重要であることは変わりありません。
QCDとは何か
QCDとは、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の頭文字から取った略語で、製造業において最も重要な3要素とされています。
元々製造業において使われてきた指標でしたが、最近では製造業だけでなく、サービス業や農業などでも大幅に取り入れられるようになっています。
電機組み立て加工業を含む、製造業を営む企業では、品質管理部門、生産技術部門、製造部門、という3つの責任部門を設けて、QCDの向上を図るのが一般的となっています。
これらの部門は最終的に製品が仕上がった際の状態をチェックして、品質、納期、コストに対しての責任を持ちます。
例えば、品質管理部門の責任者が承認しなければ、その製品を出荷することはできません。
このように厳格に管理しなければならないほど、QCDというものは、企業にとって重要なものであるともいえます。
QCDの考え方
QCDを管理する上では、品質、コスト、納期の3つ全てにおいて、顧客が要求する水準を満たすようにコントロールする必要があります。
1つでも要求される水準を下回ると、顧客の満足を大きく損ねてしまうことになるからです。
さらに、3つの中でも特に、品質が最も重要だと考えられています。というのも、品質が要求される水準に達していなければ、コストが低くても、納期に間に合っても意味が無いためです。
品質を第一に考える姿勢を「Quality First(クオリティファースト)」といいます。
Quality Firstを掲げている企業は多く、有名企業では、日立グループが、品質第一(Quality First)を最優先し「最高品質の製品、サービスをお客さまに提供する」ことを統一スローガンとして、製品の企画から出荷・サービスに至るまでグループ全体で品質保証活動に取り組んでいます。
QCDの相互関係
QCDの3要素は、トレードオフの関係にあります。つまり、どれか一つの要素を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという関係にあります。
例えば、品質を上げようとすると、原材料の材質を上げたり、作業者数を増やしたりする必要があるため、その分追加のコストがかかります。
加えて、作業工数が大きくなることにより、場合によっては納期に間に合わなくなることも考えられます。
また、コストを削減しようとすると、原材料の材質を下げたり、人件費や設備を減らして少ない作業員や機械で作業を行ったりする必要が出てくるため、品質が下がってしまいます。
納期を早期化しようとすると、急いで作業することにより不良品の割合が増加し、品質が下がってしまいます。
不良品の割合を上昇させずに生産しようとすると、集中して作業を行わなければならないため、コストがかさみます。
コストのかけ具合によっては、品質が下がる可能性も考えられます。
このように品質、コスト、納期は「あちらを立てれば、こちらが立たぬ」という関係になっています。
QCDのバランス
品質、コスト、納期のそれぞれにもとめられる水準は業界、商品、サービスによりさまざまです。
それぞれの要素をどの水準まで高めるか、あるいはどの水準で抑えておくかというバランスの取り方は、優先順位を決め、それらをどの程度優先するのかまで計画しておく必要があるということです。
その際に重要となる視点が、顧客が求めていることは何か、顧客のために提供すべきものは何かという視点です。
「うまい、やすい、はやい」でおなじみの吉野家では、主力商品である牛丼の品質を顧客が満足する水準の品質(味)に抑えることで、コスト(提供価格)をおさえて、納期(提供スピード)を早くし、顧客のニーズを掴んでいます。
一方、高級料理の代表格であるフランス料理は、高品質の商品(美味しい料理)を高品質の空間(良い雰囲気)などを提供しているので、コスト(提供価格)も納期(提供時間)も吉野家とは比較にならないぐらいかかります。
結果、高品質、高コスト、長納期といったバランスになりますが、だからといってフランス料理の顧客満足度が低いわけではありません。
顧客が品質重視なのか、コスト重視なのか、納期重視なのかを、しっかりと見極めたQCDバランスを実現することが重要となります。
製造業においては品質、コスト、納期の3要素を意識した経営が重要です。
しかしながら、一方で、品質、コスト、納期の3要素はトレードオフの関係にあるため、全てを同時に高めることは困難です。
したがって顧客ニーズを踏まえたうえで、品質、コスト、納期それぞれに優先順位を決めてQCDの向上を図ることが重要となります。
出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング