電機組み立て加工業で発展するQCD
電機組み立て加工業におけるQCD
QCDとは、品質:Quality、コスト:Cost、納期:Deliveryの頭文字から取ったフレームワークで、電機組み立て加工業を含む製造業を考える上では切っても切り離せない重要なものです。
QCDを考える上では、品質、コスト、納期の3つは、顧客が要求する水準を満たすように管理されるべき重要な要素ですが、重要度には優先順位があります。
QCDの文字順に、品質、コスト、納期の順に重要度が高いです。つまり、まずは品質が優れていて、その上でコスト競争力があり、最後に納期がきっちり守られるべきであるということです。
品質が最も重要であるのは、品質が求められる水準に届いていなければ、たとえコストが低いとしても、納期に間に合ってもそもそも不要であるためです。
顧客視点で考えれば、何かを買う場合、高品質の商品を安く時間をかけずに手に入れられることは非常に重要な要素です。
そのため、企業活動においてはQCDを向上させることが重要です。
電機組み立て加工業におけるQCDの変遷
1950年代〜1960年代
高度経済成長期の始まりにあたるこの時期では、技術力の低さから当初品質は低い状態でした。
しかし技術力の向上、および品質を重視する風潮が高まり、高品質体質へ変化していきました。
コスト面では、車、家電は当初こそ価格が高く一般消費者には手が出にくい商品でしたが、高度成長により需要が増加し、大量生産によるにコストダウンが図られ、広く普及が進みました。
納期については、受注生産から見込み生産へ変化し、日用品等のニーズの見込みが比較的容易なものは早く提供することが可能になりましたが、需要の少ない高価な商品は提供が遅くとも仕方ないという風潮が残っていました。
1970年代〜1980年代
バブル期にあたるこの時期は盛んに高品質が叫ばれ、自動車、電機業界を筆頭に高品質商品が多く生産されました。
また、コスト面では、物を作れば売れる時代であったため、低コスト化への意識はうすい時代でした。
納期では見込み生産が主流となりました。
1990年代〜現在
バブル崩壊後の時期にあたるこの時期では、品質面では高品質が当たり前のこととして要求される時代となりました。
コスト面ではバブル崩壊へ伴い、より良いものをより安く提供するニーズが高まりました。
100円均一が人気になったのもこうした時代背景があると考えられます。納期面では、バブル崩壊後の消費の落込みを受けて、在庫を多く抱えないよう受注生産が主流となりました。
発展するQCD
QCDは元々製造業において使われてきた指標でしたが、最近では製造業だけでなく、サービス業や農業などでも大幅に取り入れられるようになっています。
郵便局の集配業務、中部国際空港の建設などにトヨタ生産方式が適用され、大きな効果をあげたのは記憶に新しいでしょう。
しかし、昨今では更に競争が激化し、基本中の基本であるQCDだけでの差別化は難しくなってきています。
そこで最近では、下記の通りQCDに追加要素を加えたフレームワークが発生しています。
例えばQCDSMはQCDに安全(Safety)、モラル(Morale)が加わったものです。
生産現場においては職場の安全を維持するが非常に重要です。生産現場では高温を発する機械や鋭利な刃物を用いて裁断作業を行う機械などが多くあり、取り扱いを間違えると、大きな事故につながりかねません。
したがって取り扱い方法を定めるだけなく、重要なポイントを簡潔かつ目立つように表示する等の工夫が欠かせません。
また、事故を起こさないという観点からも、モラルを高めることが大切です。
例えば、生産現場で火気厳禁の薬品を取り扱っている場合、ライターやマッチなどの火を使うアイテムを生産現場へ持ち込ませないようにするとともに、定められた場所以外では喫煙させないようにルール作りや環境整備をしておくことが重要です。
QCDSMに加えてQCDEも広く利用されています。QCDに環境(Environment)が加わったものです。
QCDSMに環境(Environment)を加え、QCDSMEと表現することもあります。
環境を企業存続のための経営基本要素とする企業が増えています。中には、「E」を最重要課題と捉え、「EQCD」とする企業もあります。
例えばキヤノンでは、企業理念「共生」に基づき、環境保証活動を最優先することを宣言しており、このことは「キヤノングループ環境憲章」に明記されています。
環境配慮を重要視する企業が増えている背景には、モノづくりにおいて、動植物および自然環境に直接的に悪影響を及ぼす原材料の使用や、環境汚染につながるような製造手法は、企業の社会的責任の観点から許されるべきではないという考えが企業および消費者に広まってきたことがあります。
特に地球温暖化が取り沙汰されている昨今では二酸化炭素の排出量を規制する動きがあり、排出量が多い企業ほど追加的な税金を徴収する等の検討がなされています。
つまり、環境に配慮しているかどうかが、企業の競争力に直結するという訳です。
環境への配慮は今後ますます社会の要求が強くなり、企業は一段の環境配慮を求められるようになると考えられます。
出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング