電機組み立て加工業でのQCD目標の設定
日本は電機機械組み立て加工などの分野において、世界屈指の技術を持っているといわれています。
国内向けの製品のみならず、海外への輸出なども行っている企業では、QCD目標をきちんと設定しなければ、受注量が落ちてしまい企業そのものの存続にも大きく影響します。
企業の規模に関わらず、丁寧な作業を行うことや安全なフローを構築する等を第一に考えなければいけないことですが、品質や納期、コストに関する計画等はどのように行っているのでしょうか。
電機機械の需要を知る
電機機械にはさまざまな商品があります。その中でも、このしばらくの経済状況等を見据えて、自社で製造販売している機械等の需要を知ることが大切となります。
現状どのくらいのニーズがあるのか、この商品に将来展望があるのか、新しいニーズを開拓できるのかなどを考えていかなければ、目標設定を考えることはできません。
販売しても特定のニーズしか見込めない商品を延々とつくり続けても過剰在庫になるだけですし、トレンドの兆しがある商品に増産体制を怠ってしまえば、販売戦略が大幅に狂ってしまう可能性も考えられます。
ここは賭けに近い要素も含まれていますが、さまざまな流れを読んで自社製品のマッチングなどを行っていくことを考えていきましょう。
もちろん、「賭けに近い要素」と前置きした以上、リスクを伴う場合もあります。こういったリスク回避のためのシミュレーションをしていくと、無駄のない生産体制は取れると考えられます。
これらを踏まえてQCD目標を設定していくのが一般的なセオリーです。
QCD目標の設定は
品質・コスト・納期共に、最上のプランをつくることが理想です。
企業によってはQCDを優先させなければ、会社の命綱が断たれるとまで考えているところもあるといわれています。
日本の工業品質は最高と言われており、特に緻密なリレーションやシーケンス技術を取り入れることができる電機組み立て加工業は、その最先端を担う企業です。
ただし、企業規模によってはコストが重視できない、品質を最優先させれば納期が伴わなくなる、高品質故かかったコストを価格に転嫁せざるを得ないというケースもあります。
高性能の生産用の機器を導入できず品質重視の管理ができないという企業も存在することでしょう。
企業の長所・短所などを洗い出し、先に挙げたニーズやトレンドなどを考えながら、目標を設定していくことが大切です。
その際には、組み立て加工に携わる従業員数と生産能力なども加味していかなければいけません。
長期的目標と、短期目標などを細やかに設定することや、適宜見直しを図っていくことで、一般社員レベルでも目標を立てた意図をくみ取りやすくなります。
複数の工場で生産品を特化させる
QCD目標を達成させるには、企業内の努力も求められます。
一部の企業では「組み立て生産を行い販売しているのは一つの電気機器のみ」としているところもあります。
こういった企業では、生産フローや部品調達のプロセスが一貫化しているため、目標や計画に沿った生産ができるのが特徴です。
大企業では、どのような取り組みを行っているのでしょうか。大手の場合は複数の工場を持っています。
その中でA工場ではA商品のみの組み立て、B工場ではC商品の一部組み立て、C工場ではC商品の完成というように住み分けを行っていることが殆どです。
このように生産品を特化させることで、生産性を高めることができます。また、従業員も工場での仕事を固定化することで、生産フローや部品調達の流れなども整ってきますので、品質や納期を重視した生産ができるようになります。
コスト面に関しては、技術の向上や素材改良、部品加工等の性能UPなどが求められ、達成しにくい点であると言わざるを得ませんが、多くの企業が経費を見直しコストダウンを成功させています。
アウトソーシングなどで効率は上がるのか
電機組み立て加工業では、一部工場をアウトソーシングしているケースがあります。
また部品ピッキングや倉庫での出荷作業に、派遣社員を投じているケースもあります。
このように一部事業を外部委託することで、クオリティなどの面は下がらないか不安視される部分があります。
一例として工場で加工に当たる従業員を子会社の社員として転籍させる方法を取り、アウトソーシング形態で働いてもらう事案があります。
勤務先は変わりますが、待遇は変わらないまま関連会社社員として仕事ができる安心感なども手伝い、生産性が向上したという報告がなされています。
また、シフト制で昼夜生産ラインをフルに活用させることもできますので、納期を確実に守る仕事ができます。
シフト制で多数の従業員や派遣社員が組み立て加工に携わる場合、ヒューマンエラーが生じやすい状態にあります。
企業努力によって、ヒューマンエラーを防ぎ品質を高めるための装置を開発し導入することや、研修を行うといった社員教育に力を入れる等のフォローが求められるでしょう。
出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング