賢い生産管理システム選びのポイント
企業規模や業種・業態の切り口だけで生産管理システムを選定していませんか?
一般的に、工業は製造方法から捉えて、加工・組立業(Fabrication & Assembly Industry)と装置業(Process Industry)の2つに分類されます。
ここでは、加工・組立業における生産管理システム選定のポイントについて整理していきます。
製造企業における生産管理システムは、企業規模や業種によってさまざまな形をとりますが、実際には生産のやり方(生産方式)に対する考え方によって決まることのほうが多く、理論よりもそれまでの慣習や企業体質自体が企業の生産文化となっているのが現状です。
あわせて近年、グローバル対応や顧客ニーズの多様化、短納期化などの要求が強まるにつれ、設計や販売の変化に対して柔軟にかつ迅速に対応できる生産管理システムが必要となっています。
昨今の製造企業の大命題は、次の3つに整理することができます。
1. 合理化や効率化を踏まえた業務のスピードアップ化
2. コストダウンの継続化とコストマネジメント
3. 人材育成とノウハウ継承(技術の専門家と管理の標準化
あるべき姿への方向性は、「QCDの統制管理」を通じて、利益の確保と拡大を目指すことです。
これらの命題を実現し、生産活動を支援するためにはICTの側面から「ツールとしての生産管理システム」が必要不可欠です。
システム選定において、確実にチェックするべき3つのポイント
Point 1. 自社の生産形態や管理方式、規模や戦略に合ったシステムかどうか
Point 2. 段階的導入が可能なシステムかどうか
Point 3. 「5M」の視点で管理できるシステムかどうか
Point 1. 自社の生産形態や管理方式、規模や戦略に合ったシステムかどうか
自社の生産形態や管理方式、規模や戦略に合ったシステムを導入することが重要です。
そのなかで、生産の観点における「生産の連続性」と「受注の時期」の関係から、自社に必要な管理方式を導き出すことができ、適切な生産管理システムを選ぶことが可能になります。
上記の視点のほかに、以下の3つの観点の生産方式を加味することで、更に適切な選定が可能になります。
製品の種類と生産量:少品種多量生産/中品種中量生産/多品種少量生産
受注の引当と生産の関連:製品引当生産/部品中心生産/個別受注生産
生産の期間:月次バッチ生産/バッチ生産/都度生産
Point 2. 段階的導入が可能なシステムかどうか
過去には、ERPシステムをビックバンで導入する手法(主要な業務システムを同時並行で一気に導入)を成功させることで、投資に対する効果を導き出すこともありました。
しかし、ここでは段階的導入をお奨めします。
なぜなら、ビックバン導入よりも短期的に投資対効果を感じながらシステム化を進めることができるというメリットとともに、変化の激しい時代において、経済・政治情勢や法制度変更等によって変わる経営戦略や生産戦略を確実にシステムに反映させることが可能になるからです。
ただし、段階的な導入においても、あくまでシステム導入は手段であって、本質的な目的は「生産業務を可視化することによって、その情報を業務効率化やコスト削減、人材育成、利益向上に活かすこと」にあるため、部門を横断したプロジェクト体制を確立し、中期的な全社システム化スケジュールと明確な効果指標の策定、及び社内での合意に基づいて導入を推進することがポイントになります。
Point 3. 「5M」の視点で管理できるシステムかどうか
製造業のQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)を管理するためには、生産における「5M」=「人(Man)、機械(Machine)、もの(Material)、作業方法(Method)、金(Money)」の視点で管理できるシステムが必要不可欠です。
「Quality」の管理項目:品質基準の遵守状況、部材単位での不良発生率、発生要因等の管理など。
「Cost」の管理項目:業務ごとのコスト目標と人件費、機械稼働率、歩留まり、仕入コストなどさまざまなコスト要素の管理など。
「Delivery」の管理項目:工程ごとの完成予定日、納入計画・進捗管理に加え、営業の受注予測管理など。
また、システムからアウトプットされる管理指標を実際の生産業務に活用するためには、各指標をベースとした計画、実行、確認、改善のPDCAサイクルを継続的に回していくことがポイントです。
さらには管理指標を人材育成のためのデータにも活用していく意識が必要です。
出典:『賢い生産管理システム選びのポイント』株式会社富士通マーケティング