規制が新たなアイデアの源泉になる場合もある

規制が新たなアイデアの源泉になる場合もある

フランス政府が2040年までにガソリン車とディーゼル車の国内販売を禁止する決定をした。地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」に向けた計画のひとつで、国内にはプジョー、ルノーなど世界的な自動車メーカーもあるが、このタイミングでフランスは自ら退路を断ち、新たな道を選んだ。賛否両論あるようだが、これで電気自動車以外に選択肢はなくなった。今後、開発リソース、設備投資のすべてが電気自動車に注がれることになり、技術開発のスピードが上がり、環境整備も急速に進むことは確実だ。

▼そう言えば日本でも同じようなことがあった。1997年に京都議定書が採択され、翌98年には省エネ法が改正され、自動車や家電製品を対象にトップランナー制度ができた。トップランナー制度は、エネルギー効率の基準を、商品化されている製品のうちエネルギー消費効率が最も優れているもの(トップランナー)以上にするというもので、クリアできなかった場合、メーカーに対して罰則規定もある。当時もひと悶着あったが、これによって日本メーカーの環境技術に対する競争が活発化し、技術開発が進んだ。

▼基本的には、自由競争を妨げないためにも規制はできるだけ少ない方が良い。しかしながら、将来の発展に向け、移行を促すために恣意的に規制を設けることも大切である。自由とは諸刃の剣。多様性が生まれる反面、ぬるま湯で現状維持を良しとする風土にもなりやすい。たとえ対処が難しかったとしても、恣意的な規制はドラスティックに厳しくやる方が効果的なこともある。厳しさ故に思考が変わり、新しい考え方や大胆な発想が生み出される。岩盤規制に穴を開けることも必要だが、産業の未来を支援するための縛りがあっても良い。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。