製薬会社で注目される製造現場の安全

製薬会社で注目される製造現場の安全

医薬品は、疾病の予防や治療に役立つ反面、思わぬ副作用を引き起こす可能性があります。

とくに、難病の患者さんを始め、病に苦しむ人々に革新的な医薬品を届けるべく、日進月歩で研究開発を進める製薬会社では、患者さんに安心して医薬品を使用してもらうために安全性を追求しています。

安全性監視体制を万全にすることで、医薬品のより適正な使用を推進し、患者さんや医療機関からの信頼を得ているのです。

医薬品の製造・販売に関する厳しい管理基準

GMP(Good Manufacturing Practiceの略。医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理に関する基準)

GVP(Good Vigilance Practiceの略。医薬品、医薬部外品、化粧品および医療機器の製造販売後安全管理の基準)

GPSP(Good Post-marketing Study Practiceの略。医薬品の製造販売後の調査および試験の実施の基準)

 

GQP(Good Quality Practiceの略。医薬品、医薬部外品、化粧品および医療機器の品質管理の基準)

GLP(Good Laboratory Practiceの略。医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準)

GCP(Good Clinical Practiceの略。医薬品の臨床試験の実施の基準)などの厳しい管理基準の遵守が義務づけられています。

患者さんが安全に適切に新薬を使用するために調査が大切

抗がん剤やバイオ医薬品などの革新的新薬の開発では、厚生労働省から使用承認を取得した後、多くの場合「全例調査」を実施します。

「全例調査」では、薬剤を使用する医療機関とすべての患者さんを登録し、調剤薬局や卸売企業に対して事前説明を行います。

さらに医療機関の専門性や副作用が発生した場合の対応、患者さんの使用状況など、薬に関するさまざまな情報を収集していきます。

 

こうすることで、安全性をモニタリングし、新薬の適正な使用の推進を広範囲に徹底させることができます。

安全性の調査は製薬会社に義務付けられているわけではなくても、調査に準じた安全性監視計画を行っています。

調査には多くのリソースを費やしますが、患者さんが安全に適切に医薬品を使えるようにするためには欠かせないものなのです。

ファーマコビジランス(薬剤監視)とは

ファーマコビジランス(薬剤監視)とは、「医薬品の監視活動」となります。

監視するのは主に、市販されたあとの医薬品となります。

医薬品は市場に出るまでに、膨大な基礎研究や動物による実験、治験と呼ばれる臨床実験を経ています。

 

それだけきちんとしたデータの積み重ねがあれば、副作用などの問題が発生しないように思えますが、さまざまな条件によって市販前と市販後の薬の状況は異なります。

例えば、1000人に1人だけ発生する副作用があった場合、市販前の治験で500人に対して投与していても、その症状は発症しないかもしれません。

また、妊婦や高齢者など治験の対象ではない人々に投与することで、思わぬ副作用が発生することも考えられます。

 

治験では、薬の用法や飲み方、回数などをきちんと管理した上で投与しますが、一般的な人が使用を開始すると、そういった用法を守らずに使用することも考えられます。

こうして、治験では想定されていなかった副作用などを監視するために、ファーマコビジランスが重要なのです。

ファーマコビジランスの活動は多岐にわたり、まず開発部門と協力し、臨床試験の段階から薬剤の安全性を評価します。

 

次いで、医療現場に薬を販売するMRと協力して市販後における副作用情報を収集・検討します。

また、安全な使用を促すために添付の文書などを見直すこともあります。

マーケティング部門と連携し、患者さんや医療機関などに向けたパンフレットを作成することもあります。

 

ファーマコビジランス活動は国内だけでなく、海外でも承認・販売されている薬の場合は、海外の子会社や当局と協力することもあります。

安全性の担保には製造現場での努力が大切

労働者側として、安全性を担保するためには、研究開発や治験、安全性を確保するための調査活動などのほかに、GQP(Good Quality Practice:医薬品の品質基準)に適合した生産管理体制の構築するための製造現場での努力が欠かせません。

そのためには、適切な製造設備の選定・設置・改善、作業者保護具の着用等などが必要になります。

製造する製品の性質上、製造現場で第一に掲げられるのが衛生面での安全性の確保です。

 

防虫対策・厳重な二次更衣など衛生管理の意識を整える必要があります。

そのため、製薬会社の社内では、工場の生産体制をチェックするための部署や委員会が定期的に現場を巡回し、社内に落ち度が無いか監視しています。

指摘した事項が直されていない場合は、製造禁止になることすらもあるといいます。

 

次いで、労働者側として、従業員による作業ミスやヒヤリハットを防止するための作業手順の作成・遵守、さらに労働環境の向上が求められます。

製薬メーカーが医療現場や患者さんに求められる医薬品を確実に提供し続けるためには、製品の品質および有効性や安全性、発売後の対応まで含め、研究・開発、生産、営業など社内の部門が互いに連携し、協働していくことが大切になります。

労働者側ではとくに安全性について、第一に注視していく必要があるといえるでしょう。

 

出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング


20年以上のサポート経験から培ったスキル・ノウハウを基に、富士通マーケティングの先進の製造業サポート推進チームが、日本の製造業の動向や現状の課題を紹介していきます。 基本のQCDや環境、安全など、毎週、旬なトピックスを展開します。