納期遵守とリードタイム管理は似ていて違う

納期遵守とリードタイム管理は似ていて違う

納期遵守とリードタイム管理は同じであると考えていませんか?

1.モノづくり力の強みを何で測るか?

製造部門の強み、競争力は何に現れるでしょうか?

 

モノづくり力と人材力に現れます。

弊社のコンサルティングでもこの2つに焦点を当てています。

 

弊社が掲げるテーマは「生産性向上」と「人材育成」です。

これらは製造部門の競争力を高める車の両輪です。

両者そろって初めて組織が力強く前へ進みます。

 

一方の車輪しか回らない車を思い浮かべて下さい。

同じ場所でぐるぐる回っています。

現場改革、意識改革、構造改革をやり切るには、両輪を回す必要があるのです。

 

さて、モノづくり力でのテーマは「生産性向上」です。

このテーマを進める上で大切なのは評価基準、モノづくり力を測るものです。

 

弊社では2つと考えています。

生産性とリードタイムです。

 

「生産性向上」がテーマですから、生産性を上げるのは当然と言えば当然ですが、リードタイムもはずせません。

納期とも表現されます。

中小の現場の強みを磨こうと考えるならば、このリードタイムにも焦点を当てたいのです。

 

ご存じのように生産性は次式で表現されます。

output÷input

具体的には、設備1台当たりの生産量、一人当たり付加価値額、歩留まり、材料原単位(原単位は生産性の逆数)などです。

 

こうした生産性が、多くの現場で活用されている一方で、リードタイムを管理しているところは少ないと感じています。

2.納期遵守とリードタイム管理では観点が違う

納期遵守はどこの現場も一生懸命にやっていることでしょう。

納期遵守は顧客との信頼関係の土台であり、商売基本中の基本です。

 

顧客は要望した納期の延長線上で、さらなる取引を計画しているわけですから、納期を守れないということは、その先で計画している顧客の商売の機会を奪うことに他ならないからです。

したがって、信頼関係維持のために納期遵守は絶対であり、納期遵守の重要性は、今更、言うまでもないことでしょう。

 

ただ、ここで改めて考えたいのは、この納期遵守とリードタイム管理は別物だということです。

観点が異なります。

 

納期遵守は納期を”守る”ことに焦点を当てます。

ですから、守るためには手段を選びません。

 

納期管理が不十分で工程遅れへの対応が後手となり納期遅延の恐れがあるとします。

どうししますか?

 

納期を守るためには、他の仕事を止めてでも、総動員して納期遅れを回避しようとするでしょう。

他の業務の効率が落ちようと落ちまいと、まず、目の前の仕事の納期です。

 

そうして、納期を遵守できれば、ヤレヤレ、顧客に迷惑を掛けずに納品できた、となります。

現場全体の生産性が悪化したって、まずは納期というのが納期遵守の観点です。

 

いわゆる“力わざ”です。

問題が発生してから対策を講じる傾向があります。

 

こうした、対応ができること自体、中小の現場の強みであるとも言えますが、仕事のやり方が仕組み化されているとは言えません。

人に依存したやり方であり、こうしたやり方に若手は不満を感じます。

力わざの仕事のやり方で求められるのは、声が大きいこと、現場で幅を利かせられる経験があること、職位が高いこと……。

 

つまり、若手にはないことばかりだからです。

若手の工夫ややる気を引き出すのにはつながりません。

 

一方、リードタイム管理は違います。

リードタイム管理ではリードタイム、つまり納期を“短縮”することに焦点を当てます。

 

リードタイムを定義して、リードタイムの構成を明らかにするところからです。

そしてリードタイムの現状を把握しつつ、目標を設定してその短縮に挑戦します。

 

リードタイムの構成を知れば、若手も自分がどこで貢献できるか自ら判断できるのです。

自ら決定権を持って自律性を感じることが現場からやる気を引き出すポイントのひとつでした。

 

ですから、リードタイム管理を通じて、リードタイム短縮に取り組みたいのです。

アマゾンプライムのように、短納期のサービスでは付加価値額の上積みも可能ではないでしょうか?

3.顧客視点のリードタイムと作業者視点のリードタイム

リードタイム管理では、現場の実態に沿ったリードタイムの定義が重要となります。

リードタイム(納期)を2つの視点から評価します。

 

注文リードタイム

生産リードタイム

 

顧客視点では注文リードタイム、作業者視点では生産リードタイムです。

 

受注のタイミングによって生産形態は、特注生産、規格品受注生産、見込生産の3つに分類されます。

それぞれの生産形態における注文リードタイムの定義を考えてみて下さい。

 

3つの形態では、それぞれ違うことに気が付くことでしょう。

また、注文リードタイムに生産リードタイムが含まれる形態とそうでない形態があります。

 

一方、生産リードタイムは概ね、生産形態に係わらず定義は下記です。

 

生産リードタイム=作業開始待ち時間+正味加工時間+ロットサイズL/T+工程間待ちL/T

 

生産リードタイムは作業指示が出たときがスタートです。

まず、作業指示が出てから実際の作業が開始されるまでの待ち時間があります。

 

そして、最初の工程では、正味加工時間と加工ロットのサイズで決定される待ち時間が発生します。

大ロットのロット生産では、ロットサイズL/Tが長くなります。

 

その後、次工程へロットを進めますが、次工程と同期していなければ、工程間待ちの時間があります。

こうした各工程の所要時間や待ち時間の累積が生産リードタイムです。

 

リードタイムの定義を明確にしておき、各工程での実績を作業日報で継続的に集計する仕組みを構築すればリードタイム管理ができます。

そして、リードタイムの定義が示され、実績が見える化されていれば、各工程でやるべきことが見えてきます。

リードタイム短縮を計画的に進める環境が整備されるのです。

 

納期遵守では、問題が発生し、後手後手となって、力づくでやることも求められます。

人に依存した仕事のやり方では、もう、長続きしません。

 

リードタイム管理でのリードタイム短縮では、先手を打って、生産の流れをスムーズにするのが仕事です。

現場の若手はどちらの仕事をやりたがるでしょうか?

 

リードタイムを短縮する仕組みをつくりませんか?

 

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製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)