産業車両協会 志岐 彰会長 2017年頭所感

産業車両協会 志岐 彰会長 2017年頭所感

皆様 明けましておめでとうございます。
平成29年の年頭にあたり、新年のご挨拶を申し上げます。

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我が国経済の状況は、7~9月期までGDPが3四半期連続でプラス成長となり、企業の生産活動も持ち直しが持続、鉱工業生産指数も10月まで小幅ながら3ヵ月連続の上昇となっております。

 

一方、私ども産業車両業界は、昨年1~10月までの国内生産額は約2,700億円、前年同期比で4.2%の減少となっております。

主力機種のフォークリフト出荷台数で見ますと、1~11月までの累計で、国内向け販売は1.9%減少となっておりますが、昨年に排出ガス規制強化への対応で駆け込み需要があった反動による減少という要素もあり、8月以降は増加に転じておりますので、平成28年度としては前年並みを確保できると見ております。

しかし輸出については、現地生産が拡大していることもあり約10%の減少となっております。

 

また世界の産業車両市場ですが、9月までの累計で出荷台数が5.9%増の約84万台となっており、3年連続で最高を更新するペースで伸びております。

こうした情勢の下、本会は平成26年度に策定した「産業車両(フォークリフト)産業戦略」に基づき、世界中に産業車両における“日本ブランド”を確立し、世界のナンバー1であり続けるため、様々な事業を進めておりますが、主な取り組みのいくつかをご紹介させていただきます。

 

私どもは、この戦略において、“日本ブランド”を物流の効率化、安全向上、環境負荷の低減に貢献する、信頼性の高い製品、サービスによって生み出すものであると考えております。

まず、物流の効率化という視点では、経済産業省から平成28年度IoTを有効活用した全体最適なサプライチェーンシステム構築調査事業の委託を受け、早稲田大学、日本ロジスティクスシステム協会の協力を得て進めているところです。

政府では、「日本再興戦略2016」の柱の一つとして、“人口減少に伴う供給制約や人手不足を克服する「生産性革命」”を掲げ、IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボット・センサーの技術的ブレークスルーを活用する「第4次産業革命」によって、「生産性革命」を主導するとしており、すでに製造現場におけるスマート工場、建設現場におけるi-Construction、スマート農業といった具体的な施策が進められております。

 

私どもといたしましては、社会・産業の基盤を支える血流たる「物流」においても、労働力不足が顕在化しており、IoTやロボット等を有効に活用した全体最適なサプライチェーンシステムの構築による効率化・高度化による生産性向上についてお客様から強く求められておりますことから、この調査事業におきまして、まずは物流施設の入荷、入庫業務を中心に、IoTや自動化技術の活用により、荷役作業や情報伝達を効率化、高度化させるための方策をとりまとめ、提言してまいりたいと考えております。

また、こうした提言を平成29年度以降の実証事業や標準化促進事業にもつなげていければと考えておりますので、引き続き経済産業省をはじめとする関係省庁の皆様のご支援を得て、産官学の体制で進めていければと考えております。

 

次に安全向上という視点では、昨年度に厚生労働省のフォークリフト事故データを分析しましたが、今年度は事故の要因別に、どうすれば事故を防ぐことができるのか、あるいは残念ながら事故が発生した場合でも、いかにその被害を小さくできるのか等について、センサやカメラ技術を活用して、産業車両メーカーであるからこそ実現可能な方策のとりまとめを進めておりますので、ぜひご期待下さい。

次に環境負荷の低減に関しましては、昨年秋に燃料電池式のフォークリフトがついに市場投入されました。

また長時間の稼動を可能とする新型の電気式フォークリフトの普及も進めてまいります。国内のみならず、世界の市場でもこうした環境負荷低減に役立つ日本ブランド製品を普及してまいります。

 

先ほど申し上げた物流の高度化への貢献という点では、フォークリフトと並ぶ産業車両の主力製品である無人搬送車が、自動運転への取り組みが進みつつある自動車にはるかに先行して、すでに約50年の歴史を刻みながら、幅広い業界で活用いただいております。

私どもは現在ISOにおける無人搬送車の安全に関する国際規格の制定審議に参画し、多様な用途や使用環境に対応できる安全規格の策定に協力しており、併せて国内規格JISにおいても国際整合化を進めてまいる予定です。

無人搬送車の用語に関するJIS規格改正について、平成29年度は搬送ロボットや移動式ロボット等との関係において、その位置づけを明確にした上で、安全規格の国際整合化に取り組んでまいりたいと考えております。

 

こうした様々な取り組みにも関わる会員企業の素晴らしい製品やサービスを披露する場として、昨年9月に東京ビッグサイトで開催された国際物流総合展2016は、過去最高の来場者を得て、成功裡に終了いたしました。

今回は日本、欧州、アメリカそして中国の産業車両関係団体との協力の下、毎年持ち回りで開催しておりますアライアンス業界首脳会議を、日本がホストとなって、この国際物流総合展の会期に合わせて東京で開催いたしましたので、世界各国の皆様にも私ども業界の新たな動きについてご覧いただくことができました。

私どもが訴求する“日本ブランド”が目指すものを体感いただけたら大変うれしく思います。

 

以上、私ども協会の活動の一環をご紹介させていただきました。

 

最後になりますが、私どもは今後も産業車両業界の発展と世界におけるプレゼンスの向上に努めてまいりますので、会員の皆様のより一層のご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

そして経済産業省、国土交通省、環境省、厚生労働省をはじめとする関係御当局におかれましても、協会の活動に関しまして、よりいっそうのご指導ご支援を賜わりますよう、心よりお願い申し上げます。

本年が皆様にとって繁栄の年となりますよう心より祈念して、年頭のご挨拶とさせて頂きます。

 

一般社団法人日本産業車両協会 会長 志岐 彰

出典:日本産業車両協会、志岐会長 平成29年年頭挨拶


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。