産業用ロボット進化論 用途拡大と新プレイヤーが加速を後押し

産業用ロボット進化論 用途拡大と新プレイヤーが加速を後押し

いま地球上に生きる生物の形は、それが最終形態ではない。長い歴史のなかで、あらゆる生物が、生きる環境によって姿形を変えて生き残ってきた。乾燥した砂漠に住む生物と、高温多湿に住む生物は、見た目や特性がまったく異なるのもそのせいだ。環境の変化は、生態系に変化をもたらす。これは本質である。

ソフトウェア開発やITソリューションなどを手がける豆蔵は、東京農工大の遠山茂樹教授と共同で、既存の産業用ロボットメーカー以外の企業でも、高精度の産業用ロボットを短期間で設計開発できる設計手法を確立した。産業用ロボットは、ロボット工学の知識やこれまで積み上げてきたノウハウや知見が重要で、新規事業者が新たに作り上げるのは難しいとされてきたが、それに一石を投じる技術を手に入れた。来年度の事業計画のなかには、産業用ロボットの試作品製造がすでに組み込まれているという。

産業用ロボットは、もともと工場内の3K作業から人を解放し、自動化して生産性を上げる目的ではじまった。これまでその環境をベースに作られてきたため、いまや限界設計に達し、各社が似たような形に落ち着き、差別化が難しくなっている。しかし近年は、人と並んで作業をする協働ロボットが登場し、その使用環境が変わりつつある。つまり、産業用ロボットの形が変わってもおかしくない時代がやってきている。ライフロボティクスのCOROはその典型例だ。先の豆蔵は、開発した設計手法を使い、新たなロボットメーカーの支援を目指しているという。ロボットの普及は、同時にロボットの生きる環境が変わる。新しい形のロボット、新たなロボットメーカーの参入が楽しみだ。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。