生産管理の第一次管理とは
生産管理とは、生産における目標の管理(第一次管理)と、生産要素を最適な状態に保つための管理(第二次管理)の2つに大きく分類することができます。
今回は、この中でも特に第一次管理について説明していきます。
読んでいくうちに、この工程の大切さがご理解いただけることでしょう。
第一次管理は、「品質(Quality)」「価格(Cost)」「納期(Delivery/Time)」を管理する
第一次管理は、「品質(Quality)」「価格(Cost)」「納期(Delivery/Time)」いわゆる「QCD」を管理する工程です。
「QCD」を管理することで、生産目標に直接対応します。
品質管理
製造業で最も大事なのは、製品の品質の安定化です。
組み立て加工業なら、常に一定の品質水準をクリアした製品が製造されなくてはいけません。
クライアントやマーケットの要望に見合った品質を確保するために、製品の質に関する管理を行うのが品質管理です。
品質管理と混同されやすい言葉に、「品質検査」があります。
品質管理が、製品の質を担保・向上するために、生産方式の見直しや材料、設備機械、従業員の配置までの全工程を検討するのに対し、品質検査はあくまで、一定の基準に沿って、製造された製品の合格・不合格、良否を判定します。
また、品質管理は「不良品の減少」「ミスや不良品発生の再発防止」など、生産の障害となる事象の除去を目指すのに対し、品質検査はあくまで製品の出来・不出来をチェックすることにとどまります。
このように、一般的に混同されやすい「品質管理」と「品質検査」は、その定義やアプローチ、目指す目標まで明らかに異なるものです。
原価管理
原価とは、製品の材料費から加工費、それにかかる人件費など全て含めて、製品1つあたりを完成させるためにかかる費用のことをいいます。
企業活動では、必ず原価は売り上げよりも低くなくてはいけません。
そうしないと、利益が出せなくなります。
そのため、製造業ではまず、標準原価(目標の原価)を設定します。
そして、実際に製品を生産するのにかかった費用(実際原価)と標準原価を比較して分析します。
もし、実際原価が標準原価を下回っていれば、そのプロジェクトの原価管理はうまくていっているということです。
原価管理の目標は、実際原価が常に標準原価を下回っているように管理することです。
納期管理
納期管理では、決められた品質の製品を決められたコストで決められた分量を決められた納期までに生産できるよう、労働力や原料、設備等を管理します。
生産計画の決定までには、「手順計画(工程設計)」「工数計画」「日程計画」「人員・設備計画」「材料・外注計画」といった要素があります。
また、多くの組み立て加工業のように大量生産を行う工場では、生産計画に基づいて生産統制を行う必要があります。
「速度(納期)管理」「現品管理」「余力管理」「資料管理」といった作業も重要になってきます。
組み立て加工業には、「複数工場にまたがった生産計画の見える化」「製造現場の実績収集」などの課題がある
組み立て加工業の生産管理に特有の課題として、「複数工場にまたがった生産計画の見える化」「製造現場の実績収集」などがあります。
また、海外に生産拠点を構えている企業であれば、海外工場の統制や業務の標準化などもニーズとして挙がってくるでしょう。
近年、ある程度の規模の工場であれば、生産管理パッケージを用いて生産管理システムを構築しているのが一般的になっていますが、これからパッケージを導入する場合、またパッケージの入れ替えを検討している場合は、こうした点が満たせているかもチェックポイントになります。
現代の企業経営システムは、根幹となるERPを中心に、経営トップの意思決定支援システム、工場の各ライン・各設備の稼働データを収集するPLC、そして、それをERPに繋ぐMES、また情報系と呼ばれるグループウェアなど、様々なシステムが稼働し複雑にデータ連携をしています。
工場の生産管理システムのみを切り分けて検討するのではなく、これら全てを俯瞰的に見た上で生産管理システムを位置付けていくことが大切になります。
生産管理は、製品の製造にかかわるすべての部門を統合する「指揮者」の役割を担う
ここまで、製造業の生産管理のうちの「第一次管理」についてまとめました。
第一次管理は、製造業の信頼性の決め手となる「品質(Quality)」「価格(Cost)」「納期(Delivery/Time)」をつかさどるものです。
「QCD」を実現する上では、製品の品質を向上させる設計開発・生産技術部門が技術の向上を図り、品質をチェックする品質管理部門、さらには原材料や機械の調達を行う調達部門などが等しく発言権と責任を持つことが大切になります。
品質(Quality)、価格(Cost)、納期(Delivery/Time)の3つがバランスよく円滑に実現することで、製品への信頼性が生まれます。
生産における目標の管理は、それらを統合する指揮者のような役割を務める大切な工程といえるでしょう。
出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング