最も悪質な嘘

最も悪質な嘘

笑いと嘘。高い知能と豊かな感情を備えた人間だからこそ行うことができる独自の行動だ。嘘はなるべく少ない方が良いが、一部では円滑なコミュニケーションのための潤滑油になる場合もある。あながち嘘はすべて悪とは言い切れない。ついていい嘘、ダメな嘘があるのはそのためだ。

▼ビジネスは戦場。特に製造業はバチバチの激戦区。容赦ない駆け引きが日常的に行われており、さまざまな嘘と本音が飛び交っている。とは言え、結局はお客ありきの商売。嘘は信頼を失うリスクが大きく、使い方を間違うと大きなしっぺ返しが待っている。なかでも改ざんや偽装はやってはいけない部類の嘘で最も嫌われるもの。納入先に迷惑がかかり、その先のユーザーにも不安を与える。笑っているのは自分だけ。嘘が判明した際のバッシングや風当たりが強いのはその悪質性のためだ。

▼近年トレーサビリティやコンプライアンスが強化され、品質管理とそれを証明するものが、検査結果だけでなく、その製造プロセスも重視されるようになってきた。グローバルでは昔から当たり前のことだったが、日本もその傾向が強まっている。日本製品は品質の高さが競争力の源泉だ。そこを貶めるような嘘は許されない。嘘という小手先の手段で利益を取るのと、企業の本当の力で利益を得るのと、どちらが企業の存続のためになるかは明白だ。企業経営者が重視すべきところを見誤ってはいけない。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。