日本の製造業は現実を受け入れなければいけない

日本の製造業は現実を受け入れなければいけない

日本は極東の島国だ。四方を海に囲まれ、歴史的には文化の伝来は大陸に比べて遅かった。古代の稲作にはじまり、文字や仏教など、多くの技術が中国からわたってきた。

中世には南蛮貿易によってヨーロッパの文化がアフリカ、インド、東南アジアを経て日本に入ってきた。江戸時代末期には北から南から欧米列強の文化と技術がもたらされた。戦後は主にアメリカの文化が伝わった。

インターネットもない昔は技術や情報の伝達は物理的な手段しかなく、日本に伝わるのはいつも最後。その不利があった。

 

それでも日本はいままで外国の支配下に入って主権を失ったことはなく、ずっと独立を保っている稀有な国である。陸続きではない、列強国から地理的に遠かったという地政学上の利点もあるが、一方で、入ってきた文化や技術を受け入れ、独自性を加えて自らのものにしていく、いわゆる「使いこなす」ことに長けていたことも大きい。

他者を受け入れる受容性と、そこから工夫して問題を解決する意識によって、時間的なデメリットをカバーし、列強と比することができた。いまでいう「現場力」に近いものかもしれないが、日本人が持っていた意識が日本を救ったとも言える。

 

翻って、日本が世界経済で2番めの国になり、今度は発信する立場になってからはどうだろう? 内に籠もり、外からの情報を「経済大国ニッポン」というフィルターを通して見てはいなかっただろうか。これまでとは立場が変わった時、大切なものを失ってはいないだろうか。

異質なものでもまずは受け入れる、その後には使いこなして活用することができるのが日本の良さである。いい意味での寛容性だ。

技術や人材が流動的に動く今こそ日本の製造業におけるチャンスを生み出す。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。