日本の現場力を過信しない、常に先の未来を見通すべき

日本の現場力を過信しない、常に先の未来を見通すべき

テニスの全米オープンで大坂なおみ選手が優勝という快挙を成し遂げ、錦織圭選手もベスト4という好成績をおさめた。

テニスに限らず、日本人は小柄で体格的なハンデによって世界のトップで戦うのは難しいと言われていた競技でも、最近は活躍が目立つ。これは一体なぜなのだろうか?

 

▼ひとつは食事を含めた生活の変化によって、昔よりも身長が伸びて体格が良くなったという面はある。今から100年前の1918年、日本人の17歳時点での平均身長は、男性で約160センチ、女性で149センチだった。それが2015年には男性170センチ、女性157センチまで伸びている。

もう一つの理由として教育や指導が変わったというのも大きいだろう。海外から優れた指導者を招き、世界レベルの指導を取り入れることによって全体を底上げする。

サッカーならメキシコ五輪で銅メダルを獲得したチームの土台を作ったデットマール・クラマーに始まり、外国人監督が日本代表と日本サッカーの強化に大きく貢献した。ラグビーなら前回のW杯を率いたエディー・ジョーンズが有名だ。

前述の大坂なおみ選手も錦織圭選手も外国人コーチに師事している。世界レベルを知る人に教わることで能力が開花することは十分あり得ることであり、教育や指導で人は大きく変わる。

 

▼振り返って製造業の教育について。日本人は手先が器用で勤勉、さらには改善意識が高い民族であり、日本の現場が強いのはこうした国民性によるものという意見がある。

しかしこれは日本人だけが持つDNAでも何でもなく、日本の文化や教育というシステムと環境が作り上げたものに過ぎない。他国でも教育をきちんとすれば強い現場力を手に入れることはできる。日本人しかできないというのは私達の幻想だ。

これまでの日本の製造業の発展は、ものづくりを大切にしてきた教育の賜物。次の時代、日本の製造業がどうやって競争に勝っていくか、強みを発揮していくか、儲けていくか。真剣に考えないといけない。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。