新陳代謝を支える中小企業

新陳代謝を支える中小企業

コロナ禍の猛威が勢いを増し、ついに緊急事態宣言が再発令されてしまった。個人としては自分と他人の身を守るため、人との接触、3密を避け、手洗いうがいと適度な運動を心がけて乗り越えるしかない。

とは言え、経済活動も動かしていかなければならず、リモートワーク中に最低限できることとして、最近は昼食を個人の飲食店の弁当に変えた。彼らは中小零細企業であり、資本的にも余裕はない。せめてもの助けになればと思ってのことで、付け焼き刃かもしれないが、それも積もれば山となる。生命線を絶たないことが重要だ。

 

この行動変容は新しい発見をもたらした。近所に多くの飲食店があることを認知したことに加え、弁当を買って食べることでいろいろな味を知って幅が広がった。また、購入する際に少し会話を交わすことで人同士のつながりを得た。これまで気づかなかったこと、味わってこなかったことを一気に体験している。

特に、同じメニューであっても店によって味が異なる面白さを実感し、この多様性の妙は財産であるとの発見は大きかった。味が違うのは当たり前の話だが、チェーン店が幅を利かせ、自らもそれに頼ることが多いなかで、個人店舗の重要性、彼らが日本のユニークな食文化の担い手であることを再発見することができた。

 

日本は全企業数のなかで中小企業が99%を占める。近年は中小企業が国際競争力強化の妨げになっていて、ある程度、統合して規模を大きくしたり、淘汰していった方が良いという論調が目立つ。

一部同意するが、一方で中小企業が新たな技術やサービスを生み、新陳代謝の担い手となっていることも忘れてはいけない。大企業ばかりになって、中小企業が生まれない、新たな考え方が出てこない社会の将来は衰退が目に見えている。多様性、マスカスタマイズを支えるのは中小企業だ。日本は挑戦する中小企業を数多く輩出する国でありたい。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。