[新社長インタビュー] ファイバーレーザーの世界トップメーカー IPGフォトニクス 村松優氏
自動車メーカー次々採用 世界が注目する高出力レーザー
レーザーが発明されてまだ50年あまり。中でもファイバーレーザーは実用化されて日が浅い技術だが、自動車メーカーが率先して採用するなど、大注目のレーザー技術。ファイバーレーザーの世界トップメーカーのIPGフォトニクス。2018年2月に就任した村松優社長に話を聞いた。
——ファイバーレーザーについて
ファイバーレーザーは、CO2(炭酸ガス)レーザーやYAGレーザーよりも効率が良く、少ない電力と小型の装置でハイパワーを出すことができる。グローバルの金属加工におけるレーザー加工市場が2018年に26億ドル、21年に29億ドルと年々拡大するなか、ファイバーレーザーのシェアは50%を超えてきた。
高出力で加工スピードが上がり、これまでできなかった加工も可能になる。特に溶接や切断、マーキングなど加工向けに世界で急速に広がっている。
——日本の普及状況について
日本はCO2レーザーが多く使われているが、ファイバーレーザーも自動車メーカーを中心に広がっている。例えばある車体メーカーのボデーの溶接工程では、従来は抵抗溶接で2箇所止めていたところを、さらにファイバーレーザーで2点間を溶接し、材料や設計はそのままで剛性が飛躍的に向上した。この結果を受けてティア1やティア2にも採用が広がっている。
またカッティング用途でも、日本の工作機械、板金加工機メーカーの装置に当社のレーザー発振器が採用されている。
今までは2~6kW程度の出力が主流だったが、当社製品は8~15kWまで出せる。厚物を切れるほか、切断スピードも格段に上がり、作業効率を改善できる。
——御社について
当社は、ファイバーレーザー研究の第一人者で、現CEOであるガポンツェフが1990年にロシアで設立し、現在はアメリカに本社を構えている。レーザー発振器などを中心に展開し、世界500社以上のお客さまに対し、2万1000台以上の製品を提供してきた。
ガポンツェフは創業にあたり「私の夢は、コンピューターと同じように、レーザーが大量生産における工具のように使ってもらえることです」としており、レーザーを広く普及させることが全社のミッションとなっている。
——特徴、強みについて
当社は高出力のファイバーレーザーのイメージが強いが、実際には赤外線、フェムト、グリーン、ピコなど各種レーザーに加え、ローパワーからハイパワーまで幅広いポートフォリオを持っている。ここまでそろえているメーカーは他にはない。
また、レーザーダイオードからファイバー、電源系にいたるまで、レーザー発振器に関する技術と製品はすべて自社設計・製造の垂直統合型。自社でやれば価格や生産量をコントロールでき、ユーザーの要望や市場のニーズに対し、確実に素早く対応できる。
ユニークなところでは、レーザーヘッドやチラーも自社で設計製造してポートフォリオに加えている。最高の出力を実現するためのヘッド、最高の冷やし方ができるチラーを実現したいと考えるのは当然のこと。量産向けレーザーに関してできるところまで自社で作る。そういうこだわりを持っている。
——日本市場の位置付けは?
日本は国別売り上げで世界トップ5に入る。日本に本社があり、世界展開している企業も多く、とても重要な地域だ。
自動車や自動車部品には採用され、このほか多くの金属加工業があり、造船や建築、橋梁、トラックや大型車両、航空機など大型の金属加工を必要とする業界も数多い。また溶接機や溶接ロボット、工作機械や加工機械メーカーなど、当社の製品を組み込んで使う企業もたくさんある。潜在的な顧客は多い。
——日本市場に向けた戦略は?
目標は5年で現在の3倍まで売り上げを拡大したい。いくらグローバルで実績があり、技術が優れているといっても当社は外資系メーカー。日本企業以上の品質とサービスを提供して信頼を得る必要がある。そのため日本法人では、出荷前の全数検査の義務付けと、24時間365日のサービス体制を整えている。全社員66人の約半分が技術・サービス担当となりお客さまをフォローしている。来年には成長戦略に合わせ、全数検査を含むサービス体制のさらなる拡充と、お客さまと共同でレーザーアプリケーションを開発する設備の拡充を目的に、中部支店の拡張を予定している。
いまレーザー市場は拡大傾向。当社は幅広いポートフォリオを持っているにも関わらず、IPGの認知度は高出力ファイバーレーザー以外ではまだまだ。そのためにもお客さまの課題や要望を解決し、信頼してもらえる関係性の構築が必要。アプリケーションラボはそのための施設でもあり、うまく活用していきたい。
最終的には、レーザーに関する課題であれば必ず当社に寄せられる、「レーザーならIPGフォトニクス」というブランドを確立したい。
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