技術者の《評価》を構成する3大要素
若手技術者を《評価》するにあたり、どのようなところに主眼をおいていますでしょうか。
実はこれを即答することは難しい場合が多いです。
理由として、「人の評価には技術者が得意な定量評価が困難である」というのが一因として挙げられます。
何も考えずに間接部門のみの考え方で定量評価しようとすると、
残業時間の多さ → 業務負荷が高い → 評価する
ということが多いようですが、これは「長時間勤務による人件費の膨張」「長時間勤務の恒常化」といった問題につながっていき、長い目で見た時、組織の地盤沈下と経営悪化へと進むことになります。
そこで定量評価を考える前に、まず何を重要視して人を評価すべきかと考えてみることが重要です。
技術者育成研究所は、技術者を評価するにあたり以下の3つの要素を提案しています。
1.技術力
2.利益貢献度
3.社内雰囲気改善貢献度
それぞれについて説明します。
1.技術力
ほぼすべての技術系の企業が指標として取り入れている評価項目です。
ただし、技術力や専門性という評価は社内ではとても難しいのが一般的です。
なぜならば、担当者の技術力や専門性を評価するには、客観性が評価者側になくてはいけないからです。
専門性は被評価者と評価者が完全に合致している必要はありません。
それよりも、どのような知見、知恵、知識が企業の利益を生み出す付加価値創出に貢献できるのか、ということを「客観的」にみられる視点が重要となります。
そして、社内のしがらみがないことも重要です。
そういう意味では、技術力の評価というのは社外の人間によって行われるのが良いと考えます。
技術コンサルタントに技術力評価を依頼するというのも一つの考えなのかもしれません。
2.利益貢献度
これはある程度定量化することが可能です。
その技術者の関わった製品がどのくらい売れて、それがどのくらいの利益を生み出しているのか、という評価が可能だからです。
これは、社内でもある程度定量評価として応用している企業もいるようです。
ところがここで注意点があります。
この定量的評価のやりやすさから、利益貢献度が過度に評価されるケースです。
「低コスト化」「コスト削減」
このような単語で表現できる仕事は定量化が容易なうえに、組織存続の源泉である利益に直結するものであるため、優先順位も高く、評価指標として重要視されることが多いです。
しかし、低コスト化、コスト削減というのは、基本的に既に存在している技術や工程に対して行うもの。
これだけを行っていては技術はじり貧となり、長い目で見た時の組織存続が厳しくなっていきます。
そして、先を考えて創造的な仕事ができる人からその組織を去ることになります。
利益貢献度が大切であるということは自明ですが、これを極端に評価する雰囲気を作り出さないよう注意が必要です。
3.社内雰囲気改善貢献度
もっとも難しく、そして評価されにくい項目かもしれません。
- 大変な雑用を進んで行ってくれている
- メンバーの悩みの聞き役を担っている
このような人材というのは組織運営の上で、実は非常に重要な役回りを果たしています。
仕事では貢献できていないかもしれません。
でも、この人がいるだけでモチベーションが上がるという、駆け込み寺の先生のような人も居るはずです。
定量的評価は難しいと思いますが、是非評価すべき項目として入れていただきたい内容です。
それぞれをどのように定量評価するのか、ということは各社各様なので一概には言えませんが、無理に定量評価することにこだわるのではなく、定性的にでも技術者の一人一人を可能な限り多方面から評価する、という考えが重要です。