技術者の《英語教育》
グローバル化という言葉が化石化しつつある現代では、当たり前になっている海外とのやり取り。
アジアの虎、中国が世界経済を牽引、あらたな市場として注目される東南アジア、オリンピック開催に沸く南米。
それぞれ中国語やブラジル語、スペイン語、タイ語、フィリピン語など、さまざまな言語がありますが、共通言語というとどうしても英語になるというのは今も昔もあまり変わりありません。
技術の根源である一流誌の学術論文は今でも英語で書かれることが普通です。
つまり入り込んでいくときには現地語ですが、初期の段階ではやはり英語が重要な共通語となります。
今日のコラムでは、技術者の英語教育という点について、私の経験も踏まえながら述べていきたいと思います。
技術者の主軸はあくまで技術
技術者の方と海外企業や研究機関とのやり取りを前にして、
「英語は重要である」
という考えからそちらのウェイトを大きくしてしまうケースがあります。
しかしながら忘れていただきたくないのは、
「技術者、研究者の主軸はあくまで“技術”である」
ということです。
目の前の仕事を放っておいて、英語の勉強にいそしむのはあまり好ましい姿とはいえません。
語学についてはその道の専門家がいるわけで、最後はその方々に頼むというのも一考の余地があるわけです。
優先順位の付け方を間違え、英語の鍛錬に時間を使いすぎないようご注意ください。
技術の現場では、英語が流暢に話せる一般人より、片言の言葉でも技術がわかる人間のほうがずっと価値があります。
初期の英語勉強では文法が最も大切
何分・何時間聴くだけで英語が口から出てくる、というような商品があるようですが、間違いなくいえることは、
「語学で最も重要なのは文法である」
ということです。
日本人は比較的文法が得意な方であると言われているようですが、それでも実践で使える技術英語の基礎という意味での文法については、やや心もとないと思うケースが多いです。
具体的にお勧めの勉強方法は何でしょうか。
私が個人的に文法の勉強で最も勉強になり、今でも「実際の会話での話すと聞く」「メールや論文」「公的文書の作成」「海外雑誌やインターネット経由での読み」に活用できているのは以下のTOEFLの文法参考書です。
『はじめてのTOEFLー必ず出題される基礎文法集中攻略』(長本吉斉、明日香出版社)
TOEICですが、文法に特化した新しい本が出ているようです。
『改訂版 TOEIC TEST文法急所総攻撃 (アスカカルチャー)』(長本吉斉、明日香出版社)
上記の本の著者である長本吉斉先生は、私が学生の頃、ドイツへのインターンシップ派遣プログラム選抜への対策として学校通っていた時、英文法を伸ばしていただいた恩師でもあります。
このころに習ったことは今の最前線の仕事でも、「話す」「聴く」「読む」「書く」全てに対して活用できています。
時制の一致、冠詞の活用、主語の見分け方。これらは海外企業とやり取りするときに全て必要な文法知識です。
TOEFLはもともと大学への留学を前提としたテスト内容のためか、TOEICよりも文法問題は非常に実践力鍛錬の効果がありました。
もちろんテストで高得点を取ることが目的というわけではありませんが、文法の勉強のきっかけとして上記のような書籍を使ってみるのが一案です。
通訳を使わない実戦経験を若いうちに積ませる
残念ながら歳をある程度重ねてから語学力を高めるのは至難の業です。
できれば30歳過ぎころまでに海外でのやり取りの最前線に若手から中堅の技術者を置き、経験値を積ませるということが重要です。
そしてこの時にはできる限り通訳を使わないでください。通訳を使いすぎると打ち合わせ時間が長くなる、意思疎通にずれが生じる、何より自分で何とかするという業務完結能力が育たない、といった問題が生じます。
上達には時間がかかる
間違いなく言えることです。
簡単に上達できるのであれば、日本中英語を「話す」「書く」「読む」といった人たちであふれかえるはずです。
簡単にできないのです。簡単にできないので、技術者・研究者のような専門性を主軸にしながら、英語というツールを使えるというその人に価値が出てくるのです。
焦らず、毎日少しずつでも語学の勉強にいそしむことこそ近道といえます。
私もNHKラジオ講座をよく聴いていました。
そしてこの十分なたくわえをしたのち、実践経験を積み重ね、本当の意味での語学力と業務スタイルを確立していくのです。
いかがでしたでしょうか。
今日は技術者の英語について述べてみました。
ご参考になれば幸いです。